公開講演会「ヨーロッパとドイツにおけるイスタンブール条約の実施状況」
主 催:早稲田大学比較法研究所
共 催:早稲田大学法学部
日 時:2022年10月31日(月)10時40分~12時10分
場 所:早稲田キャンパス3号館 203(CTLT Classroom3)
参加者:34名(うち学生28名)

イナ・ホルツナーゲル長官
2022年10月31日、ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州司法省のイナ・ホルツナーゲル長官は、早稲田大学において、欧州評議会の「女性に対する暴力と家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会条約」(通称:イスタンブール条約)の状況について、公開講演を行いました。
今回の講演会において、イナ・ホルツナーゲル長官は、
1.イスタンブール条約の法的性質
2.条約の内容と監視制度
3.国内法による実施
4.実施上のドイツ刑法・家族法の具体的具体的な解釈問題
この4つの部分に分けて説明および議論を行いました。
イナ・ホルツナーゲル長官は、まず、欧州評議会の概要を説明し、欧州評議会のもとで作られたイスタンブール条約の採択および批准状況について紹介しました。
また、イナ・ホルツナーゲル長官は、条約の内容と監視制度の部分において、イスタンブール条約の防止・保護・訴追・政策協調という4つの柱を紹介し、かつ、条約の基本的な定義である「女性に対する暴力」、「ジェンダーに基づく暴力」の具体例を挙げて説明をしました。その後、監視制度として設けられた女性に対する暴力および家庭内暴力対策に関する専門家委員会(GREVIO)の状況およびドイツにおける監視の事例を紹介しました。

参加した学生は熱心に聞いていました
次に、イナ・ホルツナーゲル長官は、国内法による実施の部分において、イスタンブール条約のドイツにおける実施方法としての1、立法による実施、2、既存の立法の解釈による実施について紹介しました。
最後に、イナ・ホルツナーゲル長官は、実施上のドイツ刑法・家族法の具体的な解釈問題について、法解釈による実施の3つの具体例を取り上げ、1、DVにどう立ち向かうか、2、離婚に際しての子の待遇、3、女性殺人とは、について具体的に議論しました。
質疑応答において、ドイツの実務上、DVの被害者が助けをより求めやすくするためにどんな方法があるか、メキシコの女性標的殺人の立法を例として、ドイツではどんな効果的な法的手段があるか、ドイツ刑法177条の量刑改正の理由、メキシコ刑法典525条の逆差別問題、欧州議会の組織構造、および欧州評議会・イスタンブール条約のアジアでの可能性について、幅広く議論がされました。
- 古谷法学学術院教授と
- 中村法学学術院教授がコメント
(文:魯潔・比較法研究所助手)