比較法研究所共催イベント
【主 催】早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP)
【共 催】早稲田大学比較法研究所、早稲田大学法務研究科、英国ボーンマウス大学Centre for Intellectual Property, Policy & Management (CIPPM)、英国アバディーン大学
【日 時】2024年12月16日(月)13:30~17:30
【場 所】早稲田キャンパス早稲田大学国際会議場・第一会議室
【使用言語】英語・日本語
【講演者】森島繁生(早稲田大学教授)、齊藤邦史(慶應義塾大学教授)、張 睿暎(獨協大学教授)、蔡 万里(豊橋技術科学大学准教授)、石井夏生利(中央大学教授)、照井勝(弁護士)、中町有朋(株式会社アミューズ、)森崎めぐみ(日本芸能従事者協会)、梶元孝太郎(日本マイクロソフト、弁護士)、野崎雅人(グリー株式会社、弁護士)、黒川直毅(経済産業省、弁護士)
【世話人】上野 達弘(早稲田大学法学部教授、比較法研究所所長員)
参加者:40名(うち学生5名)
2024年12月16日(月)、早稲田大学にて「ディープフェイク・ラウンドテーブル」が開催されました。早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP)の共同所長であり、世話人の上野達弘教授の総合司会の下、同研究所の共同所長である鈴木將文教授による開会挨拶が行われ、本イベントが知的財産法制研究所の設立20周年を記念する催しであると説明されました。
第一部では、早稲田大学理工学術院の森島繁生教授により、ディープフェイク技術に関する報告が行われ、表情や経年変化予測などを短時間で反映できるAI技術の発展について説明されました。続いて、慶應義塾大学の齊藤邦史教授により刑事法などの日本の国内法による規制、獨協大学の張睿暎教授により韓国における近年の立法動向、豊橋技術科学大学の蔡万里准教授により中国における肖像権侵害に関する判例や法規制の動向が説明され、日・中・韓におけるディープフェイクに関する法的規制の動向が比較されました。その後中央大学の石井夏生利教授により、ヨーロッパやアメリカの動向も踏まえつつプライバシー権の観点から報告が行われました。
第二部の前半はアバディーン大学のRossana Ducato准教授が司会を務めました。まず青山綜合法律事務所の照井勝弁護士より、生成AI技術を用いた違法広告に関する訴訟をもとに、原告の過大な立証責任などの訴訟手続き上の問題点が報告されました。
次に株式会社アミューズの中町有朋氏より、ディープフェイクによる肖像権侵害などに対し日本の法整備が不十分である現況が説明されました。その後一般社団法人日本芸能従事者協会の森崎めぐみ代表理事により同意の無いAI複製などの問題が説明され、著作権法の立法目的を踏まえた法政策の必要性が指摘されました。
第二部の後半ではボーンマウス大学のDinusha Mendis教授が司会を務めました。まず日本マイクロソフト株式会社の梶元孝太郎弁護士により、暴力的・性的なAI生成をブロックするフィルターの運用や、AI生成物を示すラベルの表示を呼び掛ける同社の取り組みが紹介されました。次にGREE株式会社の野崎雅人弁護士により、メタバース上でユーザーが生成AIによりアバターなどを創作することを制限することの是非について報告されました。最後に経済産業省知的財産政策室の黒川直毅弁護士より、「知的財産推進計画2024」などにおける不正競争防止法に基づく生成AIの不正利用への規制に関する日本政府の検討状況について説明されました。
その後、ラウンドテーブル形式で全体討議が行われました。議題として日本の今後の法改正の方向性について挙げられ、登壇者からは不正競争防止法についてパブリシティ権を認める方向での改正や、刑事罰を課す場合の構成要件の明確化などを考慮する必要性が指摘されました。
最後に、知的財産法制研究所の共同所長であるクリストフ・ラーデマッハ教授により閉会挨拶が行われ、本イベントが日・中・韓をはじめとする各国の法規制の動向を理解し、今後の議論ならびに知的財産法制研究所が行う協働研究の基盤を提供するものであったと述べられ、盛況のうちに終了しました。
(文:小阪真也・比較法研究所助教)