Graduate School of Letters, Arts and Sciences早稲田大学 大学院文学研究科

その他

大学院生時代を振り返って(現代文芸コース:近藤未佳さん)

私は2017年3月に早稲田大学大学院文学研究科現代文芸コースを卒業後、独立行政法人国際交流基金へ就職しました。現代文芸コースは「本を書く・読む・編むことの『プロ』を目指す」と謳われているとおり、実際に言葉を生業とする在学生・卒業生が多くいますが、私の仕事は本や言葉に直接関わるものではありません。けれど、大学院での学びが現在に繋がっていることを実感しています。

現代文芸コース在学中は、翻訳された文学作品を取り上げ研究・発表をしたり、海外の小説を実際に翻訳するなど翻訳分野のゼミ活動を中心としつつ、他にも批評や語学、他学部の授業も受講していました。入学当初から、文学や映画などの文化に関わる組織で働くことに興味があり、ある日のゼミで国際交流基金の方がゲストスピーカーを務め、「翻訳出版助成」という日本の書籍を海外で翻訳出版する際の助成プログラムとその実績について紹介された際に国際交流基金の活動を知り、就職を志すようになりました。

国際交流基金を知らない方もいらっしゃると思いますが、国際交流基金は公的に国際文化交流を行う専門機関であり外務省の所轄する独立行政法人です。「国際文化交流」と一言で表現してもそのあり方は多様化しており、身近な場所でも日々さまざまなセクターを通じ交流は行われています。その中で国際交流基金は文化・言語・対話を三本の柱として、広報文化外交政策に基き、文化芸術交流や海外における日本語教育、日本研究・知的交流の推進といった事業を世界中で展開しています。私は、就職後に海外での日本映画祭運営など映画を通じた文化交流の業務を担当し、現在は外務省の大臣官房文化交流・海外広報課に出向して広報文化外交分野における政策評価などを担当しています。

国際文化交流の業務に取り組む日々の中で、その基盤は文化や言語が異なる人間同士の交流であり、異なる背景をもった相手を理解しようと歩み寄り耳を傾け言葉を交わし合うことだと感じています。国際交流基金における海外での映画祭運営、シンポジウムの企画、外務省における評価書の作成、外国政府との協定締結では、業務内容も持つべき視点も異なりますが、それぞれのカウンターパートと立場に応じて必要とされる言葉の用い方があり、真摯にそれを読み取り実践することで前進してゆく点で共通しています。大学院在籍中に単語をひとつずつ地道に読み解きながら翻訳したり解釈したりと、苦しみながらも実践を通じて真剣に言葉と向き合った経験は、現在の仕事に向き合う姿勢に大きく影響しています。さらに、ゼミでの国際交流基金との出会いがなければきっと現在の仕事に結びついていなかったように、大学院における様々な人、作品、本との出会いは、その後出版や文芸の世界には進んでなくとも、点と点が時間をかけて結ばれるように今の仕事での人間関係や知見に繋がっています。

大学院において実践を通して言葉と向き合う姿勢を学べたこと、そして貴重な機会と出会いをいつももたらして下さった先生方と環境に、とても感謝しています。これから大学院で学ばれる方々が、有意義な時間を過ごされるよう陰ながら願っています。

プロフィール

愛知県出身。早稲田大学文学部日本語日本文学コース卒業後、同大学院文学研究科現代文芸コースに進学。在学中は翻訳論やジェンダーについて研究し、修士論文ではスイスの作家ヴェレナ・シュテファンの小説『脱皮』をドイツ語から翻訳し、考察を行った。修了後は国際交流基金に就職、日本映画を海外に紹介するプロジェクトに参加した後、現在は外務省に出向中。

(2021年2月作成)

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/flas/glas/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる