Graduate School of Letters, Arts and Sciences早稲田大学 大学院文学研究科

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学問の縁のありがたさ(日本語日本文学コース:江草弥由起さん)

江草弥由起(ノートルダム清心女子大学文学部 講師)

 

私が日本語日本文学(中世)コースを志望した理由(研究者を志した理由)

私が研究者を志したのは修士課程の頃であったかと思います。卒業論文を書く中で研究することの面白さに気づき、修士論文を書く中で研究の終わりのない楽しさに気づいてしまったことが、私を博士後期課程への進学に突き進めました。元々はノートルダム清心女子大学に在籍していたのですが、博士後期課程に進学するにあたり早稲田大学大学院を選んだのは、故赤羽淑先生(ノートルダム清心女子大学名誉教授)の「定家をするなら、兼築さんのところに行きなさい」との御言葉によるものです。兼築先生が毎年ノートルダム清心女子大学でなさっている集中講義をすでに受講し、存じ上げていたこともあって、迷うことなく師事することを決意致しました。後に、赤羽先生は早稲田で博士号を取得なさっており、兼築先生を集中講義にお呼びできていたのは早稲田での縁ゆえと知りまして、早稲田への進学は正に先達らの学問の縁による導きであったと心底感謝いたしました。

日本語日本文学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流

研究の面白さと奥深さを気づかせてくれたのはノートルダム清心女子大学であり、研究の厳しさと学問に寄与することができる喜びを教えてくれたのは早稲田大学でありました。私の所属する兼築信行先生のゼミは、内部進学者だけでなく学外からの進学者も多く在籍しており、先生のお人柄もあってかすんなりゼミに溶け込むことができました。女子大にはない喧嘩腰の議論も新鮮で、日々異文化に触れるような驚きがありました。また、副担任制度がちょうど導入された時期であったため陣野英則先生の授業にも参加することができ、研究対象を異にする様々な先生や院生らと交流の機会を得られたことも大変ありがたいものでした。

研究にかけた思い

私の研究の初発は藤原定家編『物語二百番歌合』にあります。本作への関心から、和歌に物語を取り入れる方法や、それが何を求め為されたものであったのかを深く考え明らかにしていきたいと思うようになりました。題詠とは異なる詠みぶりをしている物語歌を題詠和歌に取り入れたり、物語世界を自詠歌に摂取し表現し変えたりする行為が意味することは和歌表現を模索し発展させようとする歌人らの好奇心・美意識にあると、研究を始めたばかりの頃は考えていました。しかし、早稲田で多くのことを学んで行くなかで、歌人がその時代に息づいていた血の通った人であるという当たり前のことを改めて理解し、歌人らがどう生き何を願い求め考えたのかを知りたいと思うようになりました。

とはいえ、知りたい考えたい研究したいという思いがあっても、なかなか状況が許さない時もあります。どんな時でも研究を諦めようと思ったことは一度もありませんが、亀の歩みであることの不甲斐なさを感じない時はありませんでした。ですが、どんな時でも見守りご指導くださる先生がいて下さったことが、私が研究を続けて来られた最たる要因です。兼築先生は「研究者に必要なのは、運(うん)、鈍(どん)、根(こん)」と常々おっしゃいます。私の「運」は学問の先達に恵まれたことにあります。博士論文に取り組んでいる最中に岡山に戻らねばならなかった時、ちょうどノートルダム清心女子大学にお勤めであった早稲田ご出身の新美哲彦先生(現早稲田大学教授)が面倒を見て下さり、当時同校にお勤めであった小野泰央先生や木下華子先生もとても親身にご指導下さいました。そのご恩を胸に、自身の研究はもちろんのこと、研究を志す学生の育成にも励んで行く所存です。

修了後、博士後期課程での生活を振り返って

博士後期課程に進学したことで、大きく自分の世界が広がりました。例えば、昨今はオンラインで学会参加ができますが、私が院生であったころはそうではなく、学会の例会会場が都心に集中しておりました。学会の場で広がる学問のコミュニティに触れる機会を得、またそこで先生や先輩方にご指導いただける機会を多く得る中で、絶えず研究し続ける人生がどういうものなのかを考えることができました。博士後期課程での日々が研究者を志すということを現実味のあることにしてくれたように思われます。

プロフィール

岡山県出身。ノートルダム清心女子大学文学部日本語日本文学科卒業後、早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文学コースに進学。在学中は中世和歌の物語摂取をテーマに研究。博士(文学)早稲田大学。博士論文の題目は「和歌における『狭衣物語』摂取の研究―藤原定家を軸に―」。修了後は塾講師・大学非常勤講師を経て、現在はノートルダム清心女子大学にて中世文学の研究、指導に努めている。

(2022年3月作成)

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