- 日研について
- 研究科長あいさつ
From the Dean
研究科長より
早稲田大学大学院日本語教育研究科・研究科長
福島 青史(ふくしま せいじ)教授

早稲田大学大学院日本語教育研究科(通称:日研(にっけん))は、2001年4月に日本で唯一の日本語教育を主専攻とする独立研究科として設立されました。2026年度、日研は設立25周年を迎えました。これまでに1095名の修士号、97名の博士号取得者(2026年9月21日現在)を送り出し、その多くが国内外の教育・研究機関、民間企業、行政、国際協力など、さまざまな領域で活躍しています。
日本語教育を取り巻く社会は、この25年間に大きく変わりました。日本に暮らす外国人は増加を続け、2025年末には400万人を超えました。外国人の受け入れ制度が整備されるとともに、2019年の日本語教育推進法、2024年の登録日本語教員制度など、日本語教育を支える法制度も整いつつあります。しかし、日本での生活が長期化し、世代を重ねる中で、日本語教育が向き合う課題も広がっています。学校や就労の場での日本語教育だけでなく、外国人の高齢化に伴う医療・福祉、家族や世代をつなぐ言語の問題、さらには異常気象や自然災害が頻発するなかで、共に地域に生きる人々として、生活と生命を守るためのコミュニケーションも重要な課題です。
同時に、生成AIの急速な発達は、日本語教育だけでなく、私たちの「知」のあり方そのものを変えようとしています。情報を収集・整理し、アイデアを考え、文章を書く過程にAIが加わることで、私たちはAIを自らの知の延長として利用できるようになりました。しかし、AIは世界について語ることはできても、私たちに代わって世界を生きることはできません。他者と出会い、時には理解できなかったり衝突したりしながら経験を重ね、そこから新しい知識や価値をつくっていく。こうした経験に根ざした知の形成において、ことばとコミュニケーションの役割はむしろこれまで以上に大きくなるでしょう。
日本語教育学は、「日本語をどのように教えるか」を研究するだけの学問ではありません。人がことばを学び、使い、他者と出会うことを通して、相互理解と相互尊重を深め、どのような社会をつくることができるのかを考える学問です。設立25周年を迎えた日研は、これからも研究と実践を通して、日本語教育学の知見を社会づくりに生かす人材を育て、新しい日本語教育の可能性を拓いていきたいと考えています。
(2026年9月)