人間科学学術院長・人間科学部長 扇原 淳
早稲田大学所沢キャンパスは、早稲田大学創立100周年事業の一環として1987年に開設され、同時に本学で第9番目の学部として誕生したのが人間科学部です。
人間科学部では、個別の学問体系や科学・技術の発展にもかかわらず、それらが必ずしも人間の幸福に寄与してこなかったという反省に立ち、「人間がより心豊かに、より健康的に、より幸せに生きる」ことを志向し、人間にかかわる多様な問題の理解と解決のために、幅広い学問を用いて総合的に取り組んでいます。
現在、人間科学部を構成する3つの学科—「環境」「健康・福祉」「情報」—は、現代社会が抱える重要な課題を象徴するキーワードです。各学科では、多様で複合的なアプローチを学べる場を提供しつつ、人間科学部全体として学科の垣根を越えた自由な問題設定や問題解決方法の提供を可能とする、先進的で革新的なカリキュラムを検討し続けています。
教室内外で展開される対話型、問題発見・解決型、探求型の科目やゼミでの卒業研究を通じて、学生は複雑な現象を様々な視点から捉える能力を育みます。専門性を深めつつも、既存の枠組みを超えた「俯瞰するチカラ」を身につけることができます。その過程で、狭い専門性や自身の経験だけでは複雑な現象を把握するには不十分であるという気づきを得るでしょう。
さらに、学生は自らの興味関心や問題意識と、実験や調査、地域社会でみられる現象と、それらに関連する様々な理論や方法論を模索し、相互に関係付けることで自己変容を実感することができます。こうした「自分」「現象」「理論」をつなげて考える習慣と、多様な価値観や協働性を身につける機会を提供することが、学際性を標榜する人間科学部の大きな強みです。
人間科学部は、従来の学問体系や学習スタイルにとらわれない柔軟で学融合的なアプローチを通じて、現代社会の課題解決に対して責任を持って挑戦する真に優れた人材を育成します。学生の皆さんには、ぜひこの環境を最大限に活用し、自らの成長によって、あらゆる世界で貢献する人材となることを期待します。
(2024年9月27日)