北海道から全国へ 観光地経営を担う次世代リーダーを育成
「観光地経営エコシステム構築に向け新プログラム」を始動
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センターは、文部科学省「令和6年度補正予算リカレント教育エコシステム構築支援事業」のうち「産学官連携を通じたリカレント教育プラットフォーム構築支援」に採択されました。
本プログラムは、全国に先駆けて北海道を重点地域と位置付け、本年9月より始動します。
観光地経営の中核的役割を担う人材を育成するための基盤として、リスキリングを支援する教育プラットフォームを構築します。この仕組みにより、持続可能かつ収益性のある観光地経営を担う次世代リーダーの育成を図ります。
■背景:観光地経営人材の不足に起因する観光経営戦略の不在
日本では、観光地経営を担う人材を育成する高等教育機関が欧米と比較して圧倒的に少ないのが現状です。
このため、慢性的に観光地経営人材が不足しており、人材育成が喫緊の課題となっています。
観光業は、世界的に見ても最も成長が期待される産業の一つで、全世界における産業規模は1千兆円を超え、そのうち国際観光は300兆円と言われています。
一方で、世界経済フォーラムの観光競争力ランキングで日本は世界第3位と高く評価されているにもかかわらず、観光収入や訪問客数では伸び悩んでいるのが実情です。
特に北海道は豊かな観光資源(自然・温泉・食・ウィンタースポーツ等)を有しながらも、観光単価や地元への経済還元率ではスイスなどの欧州の観光先進地域に大きく劣っています。
例えば、スイスの一人当たりGDPは名目ベースの物価で日本の約3倍、購買力平価で1.6倍程度ですが、スイスの観光単価は1人あたり約14万円に達する一方、北海道は約2.4万円とスイスの6分の1程度にとどまります。
■本事業の目的:観光経営の仕組みを構築
本事業では、観光を「経営」の視点から再定義し、地域が自ら戦略を構築・実行できる体制づくりを支援します。
■事業概要:北海道における先行展開と全国ネットワークへの発展
本プログラムでは、北海道内の4地域を対象とし、地域に根ざした観光地経営の戦略立案と組織変革を担う幹部人材の育成を進めます。
事業の中核となるのは、北海道内の観光地経営に関与する多様なプレイヤーが結集する「産・学・官・金・言」※連携の教育プラットフォームです。
本プログラムの特徴は、以下の4点です。
- 産・官・学・金・言連携によるプラットフォームの形成※
北海道観光における中核的な「産・官・学・金・言」が教育プラットフォームのコアメンバーとなることで実効性のある共創体制を構築します。
- 実践的アクションラーニング型プログラム
一方向の講義形式ではなく、各地域の課題をテーマにした戦略策定演習や他地域との比較検討を通じた実践的な教育を行います。
- 対象地域の観光地経営エコシステム(生態系)構築を支援
持続的な観光地経営を実現するためには、宿泊事業者、飲食事業者、観光施設、行政、DMO(観光地域づくり法人)、観光協会、コンベンションビューロー、商工会議所、地域金融機関、地域住民など、様々な関係者(エコシステム)の連携と協力が不可欠です。本プログラムは各地域における「観光地域エコシステム」の底上げを支援します。 - 全国連携ネットワーク化構想
将来的には各地域の観光地経営プラットフォームをネットワークでつなぎ、知見・人材の交流とイノベーションの創発を促進します。
※中核的な教育プラットフォームメンバーとして以下の組織が参画
- 学:早稲田大学、北海道大学、などの観光・経営教育機関
- 産・言:北海道新聞社、DoshinEC社など地域情報・観光実務に強い企業
- 官:北海道運輸局
- 金:北洋銀行
この体制により、地域ニーズの把握、教育プログラムの企画・開発、現地展開までを一貫して推進する強力な運営体制を構築します。
◆事業責任者コメント
池上重輔(早稲田大学 商学学術院 大学院経営管理研究科教授)
「観光は、地域経済再生の柱であり、幅広い産業に波及する力を持ちます。本事業は、北海道を皮切りに、日本各地の観光地が稼げる・持続可能な発展を実現できるよう支援するものです。
受講者自身のスキル向上だけでなく、その組織の戦略転換、ひいては地域の発展を実現する構造的な改革を目指します。観光と経営の融合による、真の地方創生が始まります。」
以上