公演詳細
期間
2024/11/27(水)~2024/12/2(月)
劇場
作・演出
宮澤大和『コオロギ食べれる?』、『BODIES』、『すべての、ひとりである人の』
飯尾朋花『カショブン』
小澤南穂子『竜巻』
中島梓織『play myself by myself』
出演
石塚晴日、熊野美幸、佐藤鈴奈(以上ぺぺぺの会)、
飯尾朋花、小澤南穂子、中島梓織(以上いいへんじ)
料金
ABC公演通し券+ABC公演映像配信:5500円
1公演一般+ABC公演配信映像:4500円
1公演一般:3800円
1公演U30:3500円
1公演早稲田割:2000円(早稲田通学・通勤・在住)
ABC公演映像配信:2000円
予約
事前精算(ABC公演映像配信の方はこちら)
タイムテーブル
2024年11-12月 | ||
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11/27(水) | 公開ゲネプロA | 19:30 A |
11/28(木) | 公開ゲネプロB | 19:30 B |
11/29(金) | 公開ゲネプロC | 19:30 C |
11/30(土) | 14:00 A | 18:00 B |
12/1(日) | 13:00 C | 17:00 A |
12/2(月・祝) | 13:00 B | 17:00 C |
スタッフ
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照明プラン:緒方稔記(黒猿)
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照明オペレーション:中村仁(黒猿)
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音響プラン:大嵜逸生(くによし組)
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音響オペレーション:琇
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演出助手:坂本奈央(終のすみか)
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映像撮影・編集:ロブ・モレノ
- 宣伝美術:たかはしともや(Moratrium Pants)、羽田朱音
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制作企画:石塚晴日
- 制作経理:佐藤鈴奈
お問い合わせ
稽古場レポート
自分を他者にひらくこと
執筆_関口真生(早稲田小劇場どらま館制作部・劇団くるめるシアター)
「LifeとWork」はぺぺぺの会といいへんじの協働企画であるが、稽古は各々行っているとのことで今回はいいへんじの稽古場を見学させていただいた。この日は撮影、録音がメインの会であったため創作のプロセスの発信をするには情報が不足する部分もあるが、撮影の合間の会話の端々で感じた雰囲気などを踏まえて僅かながら紹介したい。
まず、本企画は先に「LifeとWork」をテーマとした一人芝居を創作することが決まっていた。どんな作品を創作するかをいいへんじの3人(中島さん、小澤さん、飯尾さん)で話し合ったところ、自然と自己内省をテーマにする方向性に向かったという。全員が同じ方向性に定まったのは、「私たち(3人)は似たもの同士だから」だという。
『play myself by myself』作・演出・出演 中島梓織
使用する動画の撮影の様子
この日は、それぞれが用いる音声や動画の収録が行われていた。撮影の時間の緊張感と、撮影終了後の「いいじゃん」と言い合うラフな空気が交互に飛び交っていた。主に中島さんの『play myself by myself』の動画収録を見学させていただいたが、本作品の中に「ダメ出し」のシーンがあり、そのシーンを初めて見たとき一瞬本当に稽古のダメ出しをしているのかと思った。「ダメ出し」の内容は優しい言い回しの正論だが、正論すぎて時に心を蝕むものもあった。もちろんフィクションとはいえ、経験談を元にしているのかなと考えるとちょっと苦しくなった。
ところで、一人芝居は大勢の芝居よりも簡単だろうか。答えはNOである。
いいへんじの一人芝居では、作・演出・出演のすべてを各自が一人で担っている。週に1~2回ほど集まって困りごとを相談したり感想を交換したりするが、創作の大半は孤独な作業であると聞き、自分のことを客観的に見てくれる人がいないのは自分だったら不安に襲われると思った。しかし作品のテーマが自分自身のデリケートな部分に深く触れる内容である場合、その重みを他者に委ねることができず、自分で背負わなければならない側面もあるだろう。
それでも最終的には、その内省を舞台上で他者に公開する。個人の「LifeとWork」について考える過程のクローズさと演劇として一般公開するオープンさのギャップを不思議に思った。たとえ人に話すのがためらわれるような出来事でも、舞台というフィクションに包まれる前提があれば、全てを語りたくなるのかもしれない。この感覚は、一人芝居という形式が持つ特有の引力なのかもしれない。
『竜巻』作・演出・出演: 小澤南穂子
収録に立ち会う小澤さん。父親のアナウンス音声を本番で用いるという。
3人はそれぞれ事前に収録した音声や動画を活用し、本番の舞台上に不在の人物、すなわち過去の自分や、かつて自分に影響を与えた他者との対話を試みている。このことから、一人芝居といえどモノローグではなく対話(ダイアローグ)がメインだと推測できる。独白で自己完結するのではなく対話を用いて、しかも演劇というメディアで公開することで、自己内省を他者に開こうとする試みだと感じた。それが演じる者にとってどのようなケアをもたらすのか、あるいは立ち会った観客が何を思うのかは、本番が始まらないとわからない。
一人芝居は「ひとり」なのか?「LifeとWork」から考える
執筆_寺田伊織(早稲田小劇場どらま館制作部・劇団森)
「LifeとWork」稽古場にお邪魔した。
この日は、簡単にそれぞれの演目の見せ合いをしたあと、通しを行っていた。
今作は、出演者それぞれが自分自身の生活と仕事についてを一人芝居という形で表現している。
「一人芝居」を複数人が見せ合うという形式は、「ひとり」で作り上げるものなのだろうか。
通し前の稽古では、役者どうしが互いに演目を見るのがほとんど初めてだという話もあった。制作過程において、ほとんど作品内容に干渉しない形で作られているという。
その上でこの日演目を見せ合う際には、座組内で感想を言ってブラッシュアップする時間があった。しかし、感想はあくまで観客目線で、非常に簡潔なもの。ダメ出しというニュアンスは一切なく、「いいじゃん」という言葉から始まることが多かった。
この観客目線の姿勢は、学生演劇では見られにくいものだと感じた。学生演劇の場合は、お互いに自分たちのクリエイションが発展途上のものであるという意識が強く、アドバイスを求めがちだからだ。こういった観客目線の稽古が実現するのは、お互いのクリエイションに対する信頼ありきだと感じた。
このような稽古の姿勢について、いいへんじの中島梓織さんは、「普段の稽古とは少し違う」とも言っていた。お互いに同じ大変さを共有し、同じ立場に立って作る今回の公演だからこそ成り立つものでもあるそうだ。
私は、もちろん今回初めて劇の内容を目撃したが、同じく座組の皆さんも、初めて観るところが多かった。どこがダメだったか、よりも、面白いと思ったポイントを伝えることに大きな意義のある稽古は新鮮なものだった。
飯尾さんの演目を観る座組
小澤さんが自作した小道具を使って演目をする様子を観る座組
制作過程においても、ほとんどお互いに干渉しないというが、完全に「ひとり」というわけではなかった。
例えば、映像の芝居とリアルタイムの芝居を融合する中島さんの演目では、映像の一人芝居を撮影する際にプロンプを頼み、対話のイメージをしやすくしていたそうだ。
また、この日ぺぺぺの会の佐藤鈴奈さんの稽古では、肌の感触を確かめるためにいいへんじの小澤南穂子さん、飯尾朋花さんが協力して、演技に入る前の身体を作っていた。
肌の感触を確かめる佐藤さんと、協力する飯尾さん・小澤さん
このように、一人芝居を基本として随所に座組の協力を頼る部分があった。これは個人的に「自分自身の生活と仕事を描く作品」としてのあり方を体現している部分があると感じた。