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内田悦生 教授(理工学術院退職教員寄贈本文庫)


内田 悦生 教授

【ご寄贈図書】
『石が語るアンコール遺跡: 岩石学からみた世界遺産』 早稲田大学出版部 2011年出版

【内田悦生先生からいただいたご寄贈図書にまつわる文章】
1994年当時、早稲田大学建築学科の教授であった中川武先生が、日本国政府アンコール遺跡救済チームの団長となり、各分野の専門家の協力を仰いでおられました。遺跡の修復には、建築学、考古学、美術学、地盤工学、生物学、測量学などの専門家が必要であり、さらに、アンコール遺跡が石造建造物であることから岩石学の専門家も求められていました。当時、理工学部で岩石を専門とする教員は私しかおらず、ある先生を通じて団員になることの打診がありました。遺跡の石材に関する調査・研究の経験はありませんでしたが、あの有名なアンコール・ワットをはじめとするアンコール遺跡の石材を研究することに魅力を感じ、団員となることを引き受けました。

当初はアンコール遺跡の石材研究が数年程度で終わるだろうと思っていましたが、私が当時唯一所有していた非破壊測定装置である携帯型帯磁率計が予想以上に興味深い結果を生み出し、アンコール遺跡の石材研究における一つのブレークスルーとなりました。さらに、2000年頃には、それまで考えられなかった携帯型蛍光X線分析装置が開発され、その場で岩石などの化学組成を測定できるようになり、携帯型帯磁率計と合わせて強力な測定手段を手に入れることができました。それに加え、フランスおよび日本の建築学の専門家と共同で調査を行うことにより、遺跡の建造順序や建造時期を推定することが可能となりました。

アンコール遺跡はカンボジア人が築いたクメール遺跡(9世紀~15世紀)の一つであり、調査対象はカンボジアのみならず、タイやラオスのクメール遺跡にも広がり、30年が過ぎました。「寄贈本」の『石が語るアンコール遺跡 - 岩石学からみた世界遺産』は、調査開始から約16年が経過した頃、それまでの成果をまとめた本です。内容はほとんどが英語の専門雑誌に公表されていますが、学生が英語論文をなかなか読まないことから、これまでに発表した英語論文の内容を早稲田大学の学術研究所出版助成金を利用して日本語で書き上げたものです。2011年に発行された本ですが、その内容は今でも色あせていません。可能であれば、それ以降の調査・研究結果も含め、啓蒙書として発行できればと考えております。

【プロフィール】
1955年2月生まれ(香川県)
1977年:早稲田大学理工学部資源工学科卒業
1979年:東京大学大学院理学系研究科地質学専攻修士課程修了
1982年:東京大学大学院理学系研究科地質学専攻博士課程修了
1982年:日本学術振興会奨励研究員
1982-1984年:ベルギー政府給費留学生 ルーバン・カトリック大学
1985年:早稲田大学理工学研究所奨励研究員
1986年:早稲田大学理工学部助手
1990年:早稲田大学理工学部専任講師
1991年:早稲田大学理工学部助教授
1996-2025年:早稲田大学理工学部教授 (改組により2004年9月より理工学術院)

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