Waseda Institute for Advanced Study (WIAS)早稲田大学 高等研究所

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Newsletter Vol. 22(2021年夏号)

研究者紹介

高等研究所では、2021年4月に9名の所員を新しく迎えました。

稲田 奏

現代の民主主義において選挙が重要な制度であることは言うまでもありませんが、実際には選挙で選ばれていない政治アクターが政治に大きな影響を及ぼしていることがあります。私の研究の目的は、このような非公選政治アクターが民主主義国家において影響力を行使する条件や、その影響力の由来を理論的に検討することです。具体的には、君主と市民運動団体という二つの非公選政治アクターに着目しています。

稲田 奏

海野 典子

7世紀以降、西アジア・中央アジア・東南アジアから中国に移住したムスリムの末裔とされる、現代中国の回族という少数民族の歴史や文化を研究しています。彼らの複雑な自己認識や非ムスリムとの関係、イスラーム世界との交流の軌跡を解明することによって、近代ユーラシアの民族・宗教問題に対する理解を深めたいと思っています。

海野 典子

コング, ギャリー

人間の認知機能は意外と限られています。短期記憶を保持できるのは四項目ほど、同時に注意できるのはそれ以下です。しかし、人間が日常生活で限界を感じることは通常ありません。限界を超えないように、情報の分散や融合などの対策によって対処しているからです。こうした対策はどのように立てられるか、どのような効果をもたらすか、他の人にも適用できるか、について研究しています。

コング, ギャリー

近藤 あき

輝度刺激の明るさ知覚や顔の魅力判断において、現在の知覚や判断が過去の履歴に近づくように変容する現象(履歴効果)について実験心理学的に明らかにしてきました。これらの知見をもとに、履歴効果の生起メカニズムを解明することによって、実社会場面において履歴効果により生じてしまう不公平な判断といった弊害を解消することを目指します。

近藤 あき

社本 陽太

私は、ミラー対称性予想の文脈で現れるStokes構造やHodge構造を研究しています。これらの構造は、複素幾何学における基本的な対象ですが、ミラー対称性予想と呼ばれる予想を通じて、新たな対象と関連することが明らかになってきています。私の研究の目標は、新たな関係を通じて、これらの構造に対する理解を深めることにあります。

社本 陽太

居 乂義

Summarizing IPCC Assessment Reports for policymakers relies considerably on the outcomes of different energy-economic and integrated assessment models. My current work aims to establish a platform soft-linking these models in Asia via the unification of industry technologies description. Such linking may reduce inter-model uncertainties, which is crucial for informing global and regional climate policy debate. All research topics involving energy transition or climate policy instruments fall within my research interests.

居 乂義

フィットレル, アーロン

日本古典文学、特に和歌の外国語への翻訳と海外における受容と変容、また西洋詩との比較研究を行っています。和歌表現や修辞法について実証的に検討し、先行翻訳での対処法を確認し、分析します。次に、西洋詩の表現と構造を分析することによって、和歌の当該現象に類似する現象、表現方法を探求し、共通概念の構築を試みます。また、このような共通概念に基づいて、新しい翻訳案を提示します。

フィットレル, アーロン

福永 津嵩

ヒトをはじめとする生物に含まれる遺伝子の多くは未だ機能未知であり、その機能推定は基礎生物学から創薬・医療といった応用分野まで幅広い影響力を持ちます。本研究では、確率モデルを基軸とした機械学習法に基づいて、高精度かつ実用的な機能未知遺伝子の機能推定ソフトウェアを開発することを研究目的とします。

福永 津嵩

藤田 智弘

宇宙の全物質の85%は「暗黒物質」と呼ばれる未知の物質であり、その正体は物理/天文学の最重要課題の1つです。私はAxionという暗黒物質候補に注目し、理論研究に加えて天文観測やレーザー実験を用いることでその発見を目指しています。他にも、ビッグバン以前の初期宇宙や、銀河の分布の物理等も研究しています。

藤田 智弘

活動紹介

1.国際シンポジウム「Solve Climate by 2030 in Waseda―2030年までに温暖化問題解決の道筋を!―」

「Solve Climate by 2030」は早稲田大学を含む58 大学(2021年5月現在)が加盟する国際コンソーシアム「環太平洋大学連盟(APRU)」と連携関係にあるOpen Society University Networkによる取り組みで、世界各国の専門家がそれぞれの知見を、未来を担う学生を対象にWebで講義し、温暖化問題解決に向けて共に考えていくという事業です。

本シンポジウム開催にあたっては、早稲田大学の先端社会科学研究所(IASSS)、環境経済・経営研究所(RIEEM)、高等研究所(WIAS)が共催者として協力しました。専門家として、当研究所の有村俊秀所長のほか、自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長、エシカル協会の末吉里花代表理事、東京都環境局地球環境エネルギー部の神山一次世代エネルギー推進課長を招へいして実施されました。

当研究所の有村俊秀所長(政治経済学術院・教授)は、「カーボンプライシングで脱炭素」と題し講演しました。これまで”市場の外”にあった環境問題を”市場の内部”にするための取組として、カーボンプライシング(炭素価格)を紹介するとともに、その方法についても言及し、環境税や炭素税といった課税と、炭素に価格をつけて市場で取引する排出量取引の2つの方法があることを説明しました。特に排出量取引は、低費用で温室効果ガスを削減できる合理的な方法であり、世界各国で導入されているが、日本では国としては現在も導入されていないとの課題提起をしました。

当日の講演は日本語・英語でオンライン配信され、大学生、大学院生に加えて、多くの高校生にも参加いただき、国内外から150名超に視聴いただきました。

上記のほか、詳しい内容は早稲田大学の以下のウェブページで紹介されており、YouTubeでも視聴が可能です。

https://www.waseda.jp/top/news/72958

開催概要は以下のとおりです。

日 時 :2021年4月10日(土)14:00~15:30 (JST) オンライン開催

司 会 :赤尾健一(早稲田大学先端社会科学研究所・副所長/社会科学総合学術院・教授)

開会挨拶:弦間正彦(早稲田大学理事/社会科学総合学術院・教授)

講 演 :

  1. 自然エネルギー財団 事業局長 大林ミカ
    「脱炭素を進めるエネルギー転換」
  2. エシカル協会代表理事 末吉里花
    「気候変動対策としてのエシカル消費」
  3. 東京都環境局地球環境エネルギー部 次世代エネルギー推進課長 神山 一
    「脱炭素に向けた水素エネルギー普及のための東京都の取組」
  4. 早稲田大学高等研究所・所長 有村俊秀(政治経済学術院・教授)
    「カーボンプライシングで脱炭素」

閉会挨拶:鷲津明由(早稲田大学先端社会科学研究所・所長/社会科学総合学術院・教授)

2.所属3年目所員による成果報告会

高等研究所では、所属3年目を迎える所員がこれまで取り組んできた研究の成果を広く発信する機会として、成果報告会を毎年開催しています。

本年は7月20日(火)に以下の所員が、熱交換器システムの最適化、知識社会に対応した都市づくり、ゲーム理論の社会問題解決への応用、建築と美術の融合的視点による古代エジプトの人体プロポーションの分析など、それぞれが取り組むユニークな研究について成果を発表し、学内外の研究者から貴重なご意見やご助言をいただきました。コロナ禍で実験、海外でのフィールドワークや資料収集などの研究活動が制限される状況下にも関わらず、関連分野の研究者と連携を取りながら工夫を凝らして研究に取り組み、着実に研究成果を挙げていることが伺えるとの声も寄せられました。

自然科学分野

氏名 専門分野 発表テーマ
ジャンネッティ, ニコロ 機械工学
熱工学
Interdisciplinary Theory of Interfacial Multiphase Processes for Advanced Modelling and Control of Engineering Thermal Systems
山村 崇 都市計画
まちづくり
知識産業圏域を単位とした都市計画・まちづくり(ナレッジ・シティ)に関する研究
大川 博督 宇宙物理学
一般相対論
新しい非線形連立方程式の解法(W4法)を用いた非線形楕円型方程式の解析手法の確立

社会科学分野

氏名 専門分野 発表テーマ
LOTTAZ, Pascal 中立性研究
国際関係論
Neutrality in International Relations
SUNAM, Ramesh 人文地理学
国際人口移動
Precarity in intra-Asian labour migration in the time of COVID-19 Pandemic: Specific Insights from Japan
横手 康二 ゲーム理論
マーケットデザイン
非分割財の望ましい分配ルールの分析:ゲーム理論・離散数学からのアプローチ
LEE, Yeon Ju 比較政治学
比較政治経済学
Judging Inequality: A Sense of Injustice, Inequality Perceptions, and Politics

人文科学分野

氏名 専門分野 発表テーマ
秋山 徹 中央アジア近現代史 中央アジア現代国家の歴史社会的動態:ライフヒストリーとメディア分析を中心に
金 ヨンロン 日本近現代文学 「法と文学」理論を日本近現代文学に応用するための基礎研究:東京裁判を中心に
安岡 義文 建築史
地中海文明
地中海世界の美術と建築におけるデザイン理論の研究

インフォメーション

高等研究所では国際的に活躍する優れた研究者を海外から招聘し、本学研究者との学術的交流やセミナー等を通じて、 本学の研究活動の活性化に寄与しています。詳細情報についてはこちらをご覧ください。

訪問研究員

  • 2021年5月31日~2021年7月1日
    IMPEDOVO, Maria Antonietta
    Senior Lecturer、エクス=マルセイユ大学(フランス)

訪問学者


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早稲田大学高等研究所

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