Waseda Institute for Advanced Study (WIAS)早稲田大学 高等研究所

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研究所の活動内容や所属研究員の研究成果等を定期的に情報発信しています。

最新号

研究者紹介

高等研究所では、2020年4月に10名、7月に1名の所員を新しく迎えました。

角井 康貢
生活習慣の多様化による出産の高齢化や不妊は、現代の大きな社会問題の1つです。女性の年齢が上がるにつれて、卵子の質が低下することが明らかとなってきているものの、生物学的な根本原因はわかっていません。そこで私は、染色体構造の観点から、加齢に伴う卵子劣化の分子実体を解明し、将来的な不妊治療への貢献を目指しています。

角井 康貢

加藤 真也
原子の運動を含めた量子状態を、レーザーを用いて制御する実験や、そういった実験に応用できるような光ファイバーを用いたデバイスの開発をしてきました。高等研究所でそれらの成果を統合したより発展的な量子光学の実験を目指します。

加藤 真也

武藤 慶
三次元骨格をもつ多置換脂環式化合物は創薬化学などで積極的に検討される重要骨格である。本研究では、このような分子の革新的合成法として、入手容易な二次元構造体ベンゼンなどの芳香族性を壊すことを鍵とする、脱芳香族的合成法の開発に挑戦する。

武藤 慶

相澤 俊明
これまで南アジア、東南アジアをはじめとする、低中所得国のミクロデータを分析し、健康状態と社会経済的要因の関連性や健康の不平等性の変遷を分析してきました。 健康格差を縮小させるための政策に関心があり, ミクロ計量経済学の手法を用いて政策評価を行っています。

相澤 俊明

安中 進
私は、主に歴史的なデータを用いて貧しい人々が直面する問題を実証的に分析してきました。先行研究では必ずしも十分な証拠がないまま語られてきた問題を新たな体系的データを用いて検証してきました。その結果、これまで見逃されてきた政治的要因を明らかにしました。今後も古今東西問わず、人々が直面する様々な社会問題を分析して、解決につなげたいと考えています。

安中 進

池田 文
政党と政党基盤の変容について研究しています。近年、日本や西欧諸国で弱体化が顕著な中道左派政党に焦点を当て、労働組合などの利益団体の組織票、そして無党派層の浮動票についての考察を通し、政党基盤がどのように変容してきたのか、そして、その変容が、政党や政党システムにどのように影響を与えているかについて分析しています。

池田 文

XU Alison
Dr. Alison Xu obtained a LLB and a LLM from China, and a PhD from University of Leeds. Her main research interests lie in the areas of private international law, and the interaction between law and new technologies. She is always driven by researching the legal aspects underpinned the dynamical cross-border activities. The current project focuses on exploring the role of private international law in securing a sustainable future.

XU, Alison

永島 優
教育や健康などの人的資本を、人々がどのような意思決定によって蓄積するのか、蓄積した人的資本がどのような帰結をもたらすのか、またそれに関わる政策にはどのような効果があるのか、ミクロ経済学と計量経済学の手法を用いて研究しています。フィールドはアフリカが多いですが、日本の関連諸課題も扱います。

永島 優

岡本 悠子
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、自閉スペクトラム症児・者の持つ運動・感覚特性や2者間コミュニケーションの難しさに関わる脳機能に関する研究を行ってきました。これらの知見を基に、集団の中での困りごとがどのように生じるのか研究を展開していきます。fMRIの異分野への応用にも関心があり、教育やスポーツを専門とする研究者との共同研究にも携わっています。

岡本 悠子

葛西 周
たとえ特定の音楽ジャンルや歌手、バンドを普段選り好んで聴いていても、私たちは映画やテレビの音楽、カフェのBGMや路上ライブ、地域のお祭りのお囃子など、常に多様な音楽に晒されています。そうしたある意味で散漫な音楽体験の場と、そのような場が音楽自体に及ぼす作用に関心を持ち、現在は特に温泉地の劇場文化について研究しています。

葛西 周

眞鍋 智裕
私は、16世紀から17世紀にかけて活躍した、インド不二一元論学派の学匠マドゥスーダナ・サラスヴァティーの宗教文献の解読を行っています。マドゥスーダナは初めて不二一元論学派に最高神への帰依であるバクティの体系を打ち立てたとされており、その具体的な過程の解明を目的とし、彼のバクティ思想を分析しています。

眞鍋 智裕

中惇准教授の研究紹介

中准教授のスピン流生成機構についての研究成果が「Nature Communications」(2019年9月20日掲載)に発表されました。最新の研究についてご紹介します。

「スピンを整流する有機の磁石」

中 惇 准教授

日本は化石燃料やレアメタルなどの資源に乏しく、これからの時代はますます省エネルギーが求められてきますが、希少な資源に頼らず、エネルギー損失がない、究極の省エネルギー機器が実現できれば、新しいエレクトロニクスの可能性を大いに広げることができます。そんな夢の実現に確実に一歩近づく研究成果がでました。

電流に代わって電子のスピンを利用し電子機器を動かすには

物質中の電子は電荷を持つと同時に、小さな磁石として「スピン」という性質を持っています。我々の社会を支える電子機器のほとんどは、電荷の流れである電流を用いて動作していますが、もしもこれをスピンの流れ(スピン流)に置き換えることができれば、電流を流したときに生じる発熱(ジュール熱)によるエネルギー損失がない究極の省エネルギー機器が実現できます。このためには、スピン流を電流と同じように深く理解し、自在に制御する必要があります。

スピン流の課題とは

スピン流を効率良く作り出す方法の一つに、2000年代初めに発見されたスピンホール効果があります。これはスピン軌道結合と呼ばれる重い原子ほど強くなる性質に由来するため、プラチナなどの希少で高価な重金属が必要となります。さらにスピン軌道結合は、高い効率でスピン流を生成できる反面、スピン流が物質中を伝わる距離を著しく縮めてしまうというジレンマがあります。このため、全く新しいスピン流の生成原理が強く求められています。

水素や炭素などのありふれた軽原子でスピン流を作り出す!

こうした問題に対して共同研究のチームでは、水素や炭素などのありふれた軽原子で構成される有機化合物を使って、スピン軌道結合に頼らずスピン流を作り出す新現象を理論的に見出しました。有機化合物は、その構成単位が二つ以上の原子が結合した分子であるため、分子が特定の方向を向いて結晶を形作るという特徴があります。本研究で注目した「κ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Cl」という有機化合物は、水素や炭素からなるBEDT-TTFと呼ばれる分子が規則正しく整列してできた結晶物質です。この物質の構造を拡大して見ると、板状のBEDT-TTF分子が二つずつペアを組んで“滑り止め板”の模様に似たパターンで結晶化しています[図1(a)]。我々はこのパターンに注目し、この物質におけるスピンの流れを量子力学に基づいて理論的に計算しました。その結果、二種類のペアA、Bの電子スピンがそれぞれ逆向きに整列した反強磁性と呼ばれる磁気的状態において、この物質に外から電場あるいは温度勾配を加えると、上向きと下向きのスピンを持つ電子がそれぞれ異なる方向へと流れされる(整流される)ことを見出しました。これは、加えた電場や温度勾配と垂直方向にスピン流が発生することを意味します[図1(b)]。

このスピン流生成現象は、これまでスピン流を作り出す最もポピュラーな方法として知られていたスピンホール効果(注1)とは異なる新しい原理に基づくものであり、軽い元素でできた有機化合物でも効率的にスピン流を生成することが可能です。実際に理論計算から得られるスピン流の生成効率はプラチナのスピンホール効果に匹敵します。

今後について…

本研究はスピンを使った新しいエレクトロニクスの可能性を大きく広げ、ジュール熱を発生しない電子機器の夢に確実に一歩近づく成果です。図1(b)に示した反強磁性状態は、「κ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Cl」において既に観測されているため、近い将来このスピン流生成現象の実験による検証も行われると期待されます。ただし、有機化合物が磁性を示す温度は一般に極低温であるため、今後実用性を視野に入れた応用研究に繋げるには、より高い温度で磁性を発現する物質を探索することが課題です。

基礎的な物性研究の醍醐味は、およそ100種類に上るパーツ(元素)を自由に組み合わせて作られる膨大な可能性(物質)の中から、誰も見たことがない新しい物質や性質を発見することです。そこは広大なフロンティアであり、遠い将来に世の中の在り様を大きく変える物質が数多く隠されていると信じて日々研究を続けています。

(注1)物質に電場を加えた時、これと垂直な方向にスピン流が発生する現象。スピン軌道結合によって、電子の運動方向(軌道)がスピンの方向に依存して変化することで生じる。大きなスピン軌道結合を持つ重金属や半導体界面などで実際に観測されており、スピン流を生成・制御する有力な方法の一つとされている。

筆者:中惇准教授

活動紹介

WIAS共催の国際会議 Friends with Enemies – Neutrality and Nonalignment Then and Now が2020年3月2日~3日、オーストリアにて開催されました。開催者である本学高等研究所講師パスカル・ロッタ氏が会議の概要をお伝えします。

パスカル・ロッタ 講師

3月2日から2日間、早稲田大学の研究者およびThe International Institute for Peace (ウィーンに本部を置くNGO)を始めとする国際的な研究者のコンソーシアムが、「中立」に関する会議 Friends with Enemies – Neutrality and Nonalignment Then and Now (敵を友に-中立と非同盟の今と昔)に参加しました。現在の中立研究の実態と重要性、冷戦後の世界における中立の役割などに焦点を当て、学術的なイベントとして成功を収めました。

アジア、ヨーロッパ、アメリカから参加した研究者と実務家16人のパネリストがそれぞれの専門についてプレゼンテーションを行い、対外政策、外交上のツール、ナショナル・アイデンティティの要素として中立に関する専門家の識見を提供しました。

初日には元オーストリア連邦大統領ハインツ・フィッシャー博士 (Dr. Heinz Fischer)による基調講演が行われ、65年間にわたるオーストリアの中立政策について洞察に満ちた内容が伝えられました。オーストリアで初めて中立政策が採択された当時(1955年)17歳だったフィッシャー博士は、国会議員、市民社会団体の指導者、そして国家元首として数多くの役割を担い、半世紀以上オーストリアに奉仕してきた政治家としての人生について興味深く、個人的な逸話を交えて語り、会場を魅了しました。

オーストリアの元大統領ハインツ・フィッシャー博士による基調講演。

2日間、合計4つのパネルを通じて中立の理論的な問題が論じられましたが、2日午後の分科会では会議のテーマに向けてより感情に訴える芸術的な取り組みもなされました。

第1のパネルNeutrality and Nonalignment in a Historical Perspective (歴史的観点からの中立と非同盟)では、ヨーロッパの中世、第二次世界大戦及び冷戦時代における国際関係での中立国と中立政策の歴史的な例が分析されました。ディスカッションでは、フィンランドの中立と、オーストリアの中立化における旧ソ連の役割、15〜16世紀の列強国がその他大小の国々に促した諸々の中立戦略など、幅広く討論されました。

ウィーン大学スカイラウンジでの最初のパネルの後、ハインツ・ゲルトナー博士 (Heinz Gärtner)がディスカッションを誘導しました。

第2のパネルThe Neutrals and Geopolitics(中立国と地政学)では、中立諸国の存在によって国際間の協力関係が深まり、紛争削減の機会を得られる今日の国際制度への中立の関わりと影響について議論されました。現実主義、理想主義、構成主義的な取り組みがディスカッションされ、中立の変遷という概念が大きな注目を集めました。パネリストたちは、国民国家が中立主義戦略を採択する際の主な動機は地理的、戦術的な判断であるが、その政策は採択国へ二次的な影響、特に国民のアイデンティティに影響する傾向もあるということに概ね同意しました。

中立国のための多国間主義の重要性を説明する元国連軍縮担当上級代表アンジェラ・ケイン氏(Angela Kane)。

3月2日の午後は、Neutrality and Art—the Art of Independence(中立とアート-アートの独立性)というタイトルで分科会が開かれ、別の切り口から会議のテーマに取り組みました。最初にウィーン大学社会学部クリストフ・ラインプレヒト教授(Christoph Reinprecht)とオーストリア・ペンクラブ会長のヘルムート・ニーデルレ氏(Helmut Niederle)が、中立国のアーティストが直面する現代の課題について講演。その後、6人のアーティストが詩や音楽を披露し、その直前に行われたディスカッションに関連し、より感情に訴える形で補足しました。

中立と非同盟に関わるアートと科学についての話し合いは、夕方、The International Institute for Peaceが会議参加者と招待客のために主催したレセプションまで続きました。

ヤウヘニ・プライヘルマン 氏 (Yauheni Preiherman) が現在のセキュリティ環境におけるベラルーシの戦略的選択を紹介。

3月3日、第3のパネルThe Role of Neutral and Nonaligned States in Multilateral Institutions (多国間機関における中立国と非同盟国の役割)では、中立国の可能性を活用するためには多国間主義が不可欠であること、また多国間環境が中立主義の人道的な側面を大きく支えていることが指摘され、スイス、オーストリア、ベラルーシの例が紹介されました。プレゼンテーション後は、現役及び元外交官を交えて白熱した討論が展開、中立政策は時事問題にも深く関連し、強い影響力を持っている証を示しました。中立国の外交は、国際制度内で中立を維持しながら他の国とも前向きな関係を持つなど戦略的な事案に影響されています。

会議最後の第4パネルはNeutrality, Non-Alignment and Values—From Good Offices to Engagement (中立、非同盟と価値:調停から関与まで)。4つのプレゼンテーションで構成され、中心的テーマ「価値」についてのリベラルな解釈が発表されました。その後に続いた広範囲にわたる議論は、この2日間の会議に一つの連帯感をもたらしました。このパネルが会議の締めくくりとなり、望ましい中立主義のあり方、あるいはその道徳的なインパクトを今後のテーマとして提起しました。

実務家間の議論:左から元欧州議会の大臣クリスティーン・ムットネン氏、元国連軍縮問題高等代表アンジェラ・ケイン氏(Angela Kane)、元オーストリア外務大臣ピーター・ヤンコビッチ氏 (Peter Jankowitsch)、安全保障の専門家パスカル・ラーゴ氏 (Pascal Lago)。

課題はまだ多く残っていますが、この会議で得た洞察や築き上げたネットワークは、今後、世界中の中立の研究者たちが国家安全や人間の安全保障への新しい取り組みを作り上げる支えとなることでしょう。

会議の詳細と写真については、公式会議レポートをご覧ください。

筆者:パスカル・ロッタ講師

インフォメーション

WIASでは国際的に活躍する優れた研究者を海外から招聘し、本学研究者との学術的交流やセミナー等を通じて、 本学の研究活動の活性化に寄与しています。詳しくはこちら

訪問研究員

 

訪問学者

  • 2020年6月5日~2020年8月3日 LIM, Hyunjung, Professor, 山口県立大学国際文化学科 (日本)

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