Waseda Institute for Advanced Study (WIAS)早稲田大学 高等研究所

About WIAS

高等研究所について

Newsletter

ニュースレター

研究所の活動内容や所属研究員の研究成果等を定期的に情報発信しています。

最新号

目次

活動紹介

1. UBIAS Directors’ Meetingへ所長・副所長が参加

2023年10月31年~11月1日の3日間、名古屋大学にて開催されたUBIAS Directors’ Meetingに当研究所の所長・副所長の3名が参加しました。

世界の高等研究所ネットワーク“University-Based Institutes for Advanced Study(UBIAS)”はこれまで2年に1度、同会議を開催してきましたが、新型コロナウィルスの影響により2020年度は中止となり、前回2018年のブラジルのサンパウロでの会議以来、実に5年ぶりの開催でした。

今回のホスト校でもある名古屋大学高等研究院の呼びかけにより、世界20カ国 23機関から40名以上の参加があり、1日目はUBIASの重点的事項、2日目は研究トピックに係る各機関の取り組みについて各参加機関の話題提供とディスカッションが行われ、3日目は次回会議について全体で協議が行なわれました。

当研究所からは、赤尾所長が早稲田大学高等研究所のこれまでのあゆみとこれからについて講演し、所副所長が若手研究者育成支援について早稲田大学の研究者育成のフレームワークやオープンイノベーションの取り組みなど、大学が注力する事業も含めて紹介しました。また、山本副所長はデジタル・ヒューマニティーズとオープン・サイエンスのセッションに登壇し、現在従事している8K文化財コンテンツに係る試みを紹介し、人文学の新たなアプローチの可能性や課題に会場のディスカッションも自然と熱を帯びていました。

3日間にわたる会議は、お寺でのティーセレモニーなど、日本らしい趣も交えつつ、国際的な会議に相応しいオープンで活発な雰囲気の中行われました。ホスト校である名古屋大学高等研究院のホスピタリティには学ぶことも多く、また多くの海外機関と交流する機会をいただき、参加機関として非常に充実した3日間を過ごすことができました。次回はアフリカのガーナでの開催が決定し、会議は幕を閉じました。

また今回の会議参加を通して、これまでに交流のなかった海外の機関と個別に協議する機会を持つことができ、高等研究所として新たな展開にもつながっています。

2. 早稲田オープン・イノベーション・フォーラム2023(WOI’23)へ出展

2023年11月9日(木)~10日(金)、早稲田オープン・イノベーション・フォーラム2023が開催されました。高等研究所からは2つのブースを出展し、以下の通り所員が最新の研究成果を紹介しました。

テーマ:デジタル人文学・ビッグデータ分析で日本社会の真の姿を探る
テーマ:多彩な先端研究が支える新技術の発展と応用―分野横断的観点から

2日間の開催を通して、一般企業の方・研究者・学生等、合計約100名の方にお越しいただく盛況となりました。出展した所員からは「今後の研究に役立つネットワークの構築を進展させることができた」など、ポジティブな感想が挙がりました。

ご来場ならびにご参加の皆様、まことにありがとうございました。

早稲田オープン・イノベーション・フォーラム2023の様子は早稲田大学Webサイトにも掲載されています。
産学のリーダーが集まり知を共創する – 早稲田大学 (waseda.jp)

3. 高等研究所初のホームカミングデーを開催

去る12月9日に、早稲田大学高等研究所初となるホームカミングデーを開催しました。所員幹事を務めたファーヒ ロバート アンドリュー講師の報告をお伝えします。

2023年12月9日、高等研究所では初となるホームカミングデーが開催されました。高等研究所の所員(現所属研究者)と所友(旧所員)の学術的ネットワークの構築を目的として、当イベントでは所員によるポスターセッションと、所友からキャリアに関するアドバイスや見識を得る場を設けました。高等研究所には現在、学界・政府機関・民間企業などで活躍する約200人の所友がおり、その経験や知識を直接学ぶことは、キャリアの初期段階にある現在の所員にとってかけがえのない価値があります。

ホームカミングデーは、所員幹事を務める藤田 智弘講師(自然科学)、モリス ジェームズ ハリー講師(人文科学)、ファーヒ ロバート講師(社会科学)による企画・主導のもと、イベント委員会と高等研究所事務所のスタッフの協力を得て開催されました。現所員は自身の研究プロジェクトを紹介するポスターを展示し、所友の4名は短い講演に引き続いて高等研究所の後のキャリアについて質疑応答を行いました。所友と所員の相互理解やネットワーク構築というイベントの趣旨に合ったカジュアルで和やかな雰囲気のもと、参加者は講演の合間にコーヒーとドーナツを楽しみながら、ポスターを鑑賞し、相互交流を深めました。

当日は早稲田大学国際会議場にて、高等研究所の所員幹事の短い挨拶に続き、午後には所友4名による2つのキャリア・トークが行われました。最初のセッションでは、加藤 真也先生(ナノファイバー・クアンタム・テクノロジーズ、プリンシパル・リサーチ・サイエンティスト)と、ホフマン レト先生(カーティン大学、准教授)が自身のキャリアについて語り、2つ目のセッションでは、西永 慈郎先生(産業技術総合研究所、主任研究員)と渡辺 耕平先生(ラザード・アセット・マネジメント、シニア・データ・サイエンティスト)が講演を行いました。講演者は自身の経験を踏まえて研究キャリアの道について幅広く概説し、それぞれの講演後には活発な質疑応答が行われました。

最後に、相馬 拓也先生(京都大学白眉センター、准教授)が高等研究所時代の思い出を語り、研究所OB・OGを巻き込んだイベントが今後も続くことを願っているとコメントし、午後のセッションは幕を閉じました。引き続き大学近くのレストランでビュッフェ形式のアフターパーティーが催され、元所長の宮島 英昭教授(早稲田大学、財務担当常任理事)の乾杯挨拶で幕を開け、参加者は歓談を楽しみ、絆を深めました。最後には所 千晴副所長の音頭で「関東一本締め」が行われ、閉会となりました。

ホームカミングデーは、17年にわたる高等研究所の歴史を通して、現役所員の探求する研究テーマやアプローチの多様性、そして所友によって追求されてきたキャリアの多様性を改めて実感するイベントとなりました。対面でイベントを開催できなかった数年間のコロナ禍を経て、このような現・旧所員が一堂に会するネットワーキングや交流の機会の重要性は増しています。今後もホームカミングデーやその他のイベントを積極的に開催し、海外を含むさらに多くの関係者が、成長し続ける高等研究所の研究者コミュニティにより深く関わることができるような方法を模索していきたいと思います。

ポスター発表は以下のページからご覧いただけます。

高等研究所 ホームカミングデー(2023年12月9日開催)

 

4. 協定機関である独コンスタンツ大学高等研究所との研究者相互派遣プログラムを開始

本年度より当研究所の協定機関であるZUKO(ドイツ・コンスタンツ大学高等研究所)と、研究交流を目的とした所属研究者の相互派遣を開始しました。第1号としてZUKOに滞在中のロメスヴィンケル ヘンドリック 准教授からは、今回の訪問の動機や滞在中の研究活動の様子を3回にわたりレポートする予定です。

レポート#01:協定機関である独コンスタンツ大学高等研究所との研究者相互派遣プログラムを開始しました

レポート#02:独・コンスタンツ大学高等研究所 研究者相互派遣プログラムレポート 第2弾(ロメスヴィンケル ヘンドリック 准教授)

5. 「デジタル時代におけるキリシタン版」(モリス ジェームズ ハリー講師)

モリス ジェームズ ハリー講師が主導する研究プロジェクト「デジタル時代におけるキリシタン版」では、フォントパッケージとデジタルツールの英語版リポジトリが公開されました。モリス講師より、当プロジェクトの概要やこれまでの道のり、今後の展望をご紹介します。

モリス ジェームズ ハリー講師が主導するプロジェクトにおいて、フォントパッケージとデジタルツールの英語版リポジトリが公開されました。

DNP文化振興財団のグラフィック文化に関する学術研究助成及び早稲田大学特定課題(研究基盤形成)助成のもと実施されている『デジタル時代におけるキリシタン版: デジタル手法による「キリシタン版」探索の可能性と限界に関する考察』は、キリシタン研究とデジタル・ヒューマニティーズ分野における筆者の経験から生まれたプロジェクトである。まず、キリシタン(16~17世紀の日本におけるカトリック信徒とその宗教)研究に利用可能なオンライン上のリソースは僅少であり、図書館で一次資料や二次資料にアクセスすることの難しい若手研究者や日本国外に滞在している研究者は、限られた資料しか利用できない可能性があることがわかった。また、コンピュータがラテン文字や英語中心で設計されているため、キリシタン資料を使用する際の基本的な作業を行うことにも困難が生じていた。しかしその一方で、いくつかのソリューションは簡単に開発できることにも気づいていたため、当プロジェクトの目的を、コンピュータ・サイエンスに深く携わっている人ではなく、日常的にコンピュータを使う人やデジタル・ヒューマニティーズの周辺にいる人の潜在的な問題に対する解決策を生み出すことと位置付けた。

リポジトリ

多様なオンライン・リソースへのアクセスを拡充するため、筆者は若手研究者を対象としたリポジトリを作成することにした。ジョセフ・ビルズ氏(慶應義塾大学)の協力を得て完成したこのリポジトリは、3つの部分から構成されている。

  1. リソース…オンラインで公開されているデータベースやプロジェクト、ツール、リソースの一覧(解説付き)
  2. テキスト…当プロジェクトのウェブサイトで実際に閲覧することのできるキリシタン版
  3. コレクション…日本国内の図書館および博物館の所蔵リストと地図

当初は網羅的であることを目指してリポジトリを開発していたが、すぐに不可能であることがわかった。キリシタン研究に関連するコンテンツを持つオンライン・リソースは数多く存在するものの、その多くは収録に値するほどの十分な関連資料や情報が含まれていなかった。また、ヨーロッパの諸言語によるリソースも豊富であったが、ビルズ氏と筆者の日本史学以外の知識は限定的であったため、今回は主に日本語と英語によるリソースに焦点を当てることにした。つまり、このリポジトリは当分の間、主に日本語のキリシタン研究と日本語のリソースや資料に興味のある人たちに役立つものだが、今後他の資料を含める余地も十分にあるということである。

「リソース」の一覧 は若手研究者が興味を持ちそうな資料、ツール、プロジェクトを見つけることに役立つ。資料が自分にとって有用かどうかをユーザーが判断できるよう、それぞれの資料の利点と限界についての補足説明も添えられている。「テキスト」は、日本語の文字とラテン文字で書かれた各7点のキリシタン版にアクセスできるIIIFビューアを提供しており、構築時点ではIIIFフォーマットで利用可能なすべてのキリシタン版を網羅している。ユーザーが新しいテキストを探したり、アクセスすることに役立ち、同時にタブをいくつも開いたり、複数のデータベース、図書館のウェブサイトやリポジトリにアクセスする手間を省くことができる。「コレクション」はキリシタン関連のコレクションを所蔵する日本の図書館や博物館の一覧であり、地図とリストで各施設の所在地、電話番号、ウェブサイトなどの詳細を示している。資料を探している人や、日本への研究出張を計画している人にとって特に重宝するはずである。現在は英語版のみ提供しているが、日本語版の公開も準備を進めている。

ツール

キリシタン研究の研究者が直面する問題は、デジタル・リソースへのアクセシビリティにとどまらない。例えばキリシタン版からの引用や翻刻をワープロに入力するような基本的な作業にさえ支障が生じている。通常の日本語の文字やラテン文字で書かれたテキストであれば差し支えないが、キリシタン版にはユニコードに存在しない特殊文字(合字・造字)が含まれており、一般ユーザーはこれをコンピュータに入力することができない。従来、これらの特殊文字は、代わりの記号やラテン文字などを使って入力されてきた。たとえば、下の画像で/dsと/ds2と表示されている文字は、従来は翻刻でDSと表示されていた。出版社がこのような文字を入力するためのフォントを提供していることもあるが、一般ユーザーが利用できるものではない。代用文字を使うという現在の方法では、特殊文字のさまざまなバリエーションを区別する能力や、それらの文字をロゴグラムとして理解し読み取る能力など、原文を読み解くうえでの重要な部分が失われてしまう。また代用文字を使用すると、ユーザーやコンピュータが合字とラテン文字を容易に区別できないため、テキスト分析が複雑になるという問題も生じる。このような問題に対処するため、ユーザーが自分でこれらの特殊文字を入力できるようなフォント・パッケージ(大曲都市氏が設計・実装)を作成した。WindowsユーザーにはMicrosoft Wordを、MacユーザーにはPagesを使用することをお勧めする。

キリシタン版に含まれている文字の読み方を学ぶためのフラッシュカードデッキやオンライン辞書(2024年発売予定)などのツールの開発を進める一方で、プロジェクトにおけるもう一つの重要な取り組みとして行っているのが、資料の翻刻を作成することである。活字化された翻刻がなければ、研究者はテキストのデジタル分析を行うことができない。当プロジェクトは「みんなで翻訳」というプラットフォーム上に専用のプロジェクト・ページを持っており、そこには国内外のさまざまな図書館から集められた31のテキストが掲載されている。このプラットフォームでは一般の方々が翻刻の作成と相互チェックを行っており、昨年は9点の翻刻が完成した。完成版は、研究等やその他の目的で誰でも自由に使うことができる。キリシタン版やキリシタン関連資料の読み下し練習に興味のある方は、ぜひ気軽に翻刻に参加してほしい。

終わりに

来年度は、キリシタン研究をよりアクセスしやすくし、デジタル時代におけるキリシタン研究の妨げとなっている問題の解決策を提供し、キリシタン関連資料を分析するためのデジタル手法の使用を促進するリソースやツールをさらに開発したいと考えている。

このプロジェクトに参加したい方や、ご意見やご提案がある方は、遠慮なくご連絡ください。プロジェクトのウェブサイト:https://kirishitanbank.com/

インフォメーション

高等研究所では国際的に活躍する優れた研究者を海外から招聘し、本学研究者との学術的交流やセミナー等を通じて、 本学の研究活動の活性化に寄与しています。詳細情報についてはこちらをご覧ください。

訪問研究員

  • 2023年10月20日~2023年11月19日
    DREHER, Jochen
    Researcher、コンスタンツ大学(ドイツ)
  • 2024年1月8日~2024年2月7日
    ELDEM, Edhem
    Professor、ボアズィチ大学(トルコ)

訪問学者

  • 2024年1月8日~2024年2月16日
    MIRIFAR, Arash
    Postdoctoral Associate、フロリダ大学(アメリカ)
  • 2024年2月14日~2024年4月1日
    DUTTA, Vibekananda
    Assistant Professor、ワルシャワ工科大学(ポーランド)

 


ご意見、ご感想をお待ちしています。 下記発行元までお寄せください。

早稲田大学高等研究所

〒169-0051
東京都新宿区西早稲田1-21-1 早稲田大学西早稲田ビル1階
URL:www.waseda.jp/inst/wias/
TEL:03-5286-2460
FAX:03-5286-2470
E-mail:[email protected]

バックナンバー

購読申し込み

高等研究所ニュースレターの購読をご希望の方は、下記の登録フォームに氏名、メールアドレス、所属、肩書(任意)をご入力ください。

登録いただいたメールアドレス等は高等研究所からの情報発信のみに使用し、その他の目的に使用することはいたしません。

お申込みいただく前に、「早稲田大学高等研究所ニュースレター」サービス運用内規をご確認ください。

姓 ※ (例)日本
名 ※ (例)太郎
メールアドレス ※ (例)[email protected]
メールアドレス(確認) ※ (例)[email protected]
所属 ※
肩書

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/wias/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる