【開催レポート】早稲田大学ボランティア・アカデミー「震災から15年~なぜ、私たちは福島へ行くのか~」 ワークショップ
2026年6月12日(金)、早稲田キャンパス GCC Common Roomにて、早稲田大学ボランティア・アカデミー「震災から15年~なぜ、私たちは福島へ行くのか~」 ワークショップを開催しました。
本イベントは、2026年5月に実施した「福島でアート」スタディツアーの学びを共有し、参加者一人ひとりが「福島」に対するイメージや問いを見つめ直すことを目的として実施しました。
当日は、スタディツアーに参加した学生5名による発表に加え、参加者同士のワークや意見交換を行い、「福島」に対する認識や視点を深める時間となりました。
参加者それぞれが描く「福島」のイメージ
はじめに、参加者全員で「福島と聞いて思い浮かぶもの」をテーマにイラストを描き、それぞれのイメージを共有するワークを行いました。
桃や自然、雪景色といったイメージに加え、原子力発電所や震災といったイメージなど、参加者によって多様なイメージが挙げられました。
同じ「福島」という言葉であっても、その捉え方は決して一様ではなく、一人ひとりの経験や情報によって異なることを改めて確認する時間となりました。

「福島でアート」
続いて、これまでの「福島でアート」の取り組みが紹介されました。
この取り組みは、東北芸術工科大学の学生たちとともに、「福島の今」を自らの身体で感じ、アートとして表現することを目的として、福島県の富岡町や双葉町などを中心に、2025年度から継続的に実施されています。
今回のスタディツアーでは、人が戻らない家の「カーテンをつくる」ことをテーマに活動を行いました。
参加学生は町を歩きながら地域住民の方々と交流し、作品制作に使用する布や衣類などの素材を集めました。集めた素材を用いて作品を制作する過程では、地域の方々や子どもたち、東北芸術工科大学の学生との交流も生まれました。
材料集めでは、地域住民の方々に活動の趣旨を説明しながら不要になった布や衣類の提供をお願いしました。突然の訪問にもかかわらず、多くの方が温かく迎え入れてくださり、震災当時の話や地域の暮らしについても聞かせてくださいました。
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スタディツアーを終えて
続いて、今回のスタディツアーに参加した学生たちが、それぞれの経験を通して得た気づきや学びについて発表を行いました。
発表では、実際に富岡町を訪れたことで、事前に抱いていたイメージとの違いに気づいたという声が多く聞かれました。
震災から15年が経過し、道路や施設などのインフラ整備は進んでいる一方で、人が戻らず空き地となった場所や、帰還困難区域が残る現状を目の当たりにした学生もいました。また、人通りの少ない街並みや若い世代の少なさから、人口流出や少子高齢化といった地域課題を実感したという声もありました。
一方で、訪れる前は「震災の経験を持つ地域の方々にどのように接すればよいのかわからず、少し身構えていた」と感じていた学生も、実際には地域の方々が気さくに声をかけてくださり、街には穏やかな時間が流れていたことが印象に残ったと語りました。
福島を「被災地」としてだけでなく、今を生きる人々の暮らしがある場所として捉え直す機会となったようです。
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地域の人々との出会い
活動の中で学生たちの印象に最も残ったのは、地域住民との交流でした。
材料集めのために町を歩く中で、住民の方々から布や衣類を提供していただいただけでなく、震災当時の経験や復興への思いを聞く機会もありました。
ある学生は、コインランドリーで出会った男性に自宅へ案内していただき、思い出が詰まったご家族の着物を譲り受けた経験を紹介しました。また、別の学生は、町を歩く中で何度も声をかけてもらったことから、人と人とのつながりの強さを感じたと語りました。
こうした交流を通して、参加者は地域の温かさや、人とのつながりが持つ力を実感したようです。
また、東北芸術工科大学の学生との協働も大きな学びとなりました。異なる地域やバックグラウンドを持つ学生同士が活動を共にすることで、新たな視点や価値観に触れる機会となりました。
「正解のない表現」から得た学び
アート制作についても、多くの気づきが共有されました。
当初は「カーテンを作る」という目的を持って活動を始めたものの、実際には完成した作品以上に、制作の過程で生まれた出会いや対話が参加者の心に残ったといいます。
学生たちは、どの素材を使うのか、どこに配置するのかと悩みながら制作を進めました。しかし活動を続ける中で、「正解を探さなくてもよい」「まずは思うがままにやってみることが大切」という感覚を得たと語りました。
また、制作中には地域の子どもたちが自然と集まり、一緒に遊んだり会話をしたりする場面もありました。アート作品そのものだけでなく、作品をつくる過程で生まれた人と人との関わりや共有した時間が、参加者にとって大きな意味を持つものとなりました。

参加者との意見交換
学生による報告の後には、参加者同士で感想を共有する時間が設けられました。
参加者からは、「学生たちの率直な学びや変化に心を動かされた」「福島に行ってみたくなった」「実際に足を運び、地域の人と関わることの大切さを改めて感じた」といった感想が寄せられました。
また、福島出身の参加者からは、「スタディツアーに参加した皆さんにとって、福島がポジティブな経験の場として記憶に残っていることがうれしい」との声も聞かれました。
「思うがまま」に生まれる化学反応
最後に、「福島でアート」スタディツアーの企画に携わった兵藤 智佳 准教授(平山郁夫記念ボランティアセンター)による総括が行われました。
兵藤先生は、本ツアーを企画するにあたり、「目的や意味を考えながら行動することを得意とする早稲田大学の学生」と、「直感や感性を大切に行動する東北芸術工科大学の学生」が出会うことで、新たな学びが生まれるのではないかと期待していたと振り返りました。
実際に学生たちの発表からは、「思うがままにやってみること」や「まず行動してみること」の大切さについて多くの声が聞かれました。兵藤先生は、こうした気づきこそが両大学の学生が協働したことで生まれた“化学反応”であると語りました。
また、富岡町でのアート制作の場には地域の子どもたちも自然と集まり、世代を超えた交流が生まれたことにも触れ、「人が自由に楽しみ、思うがままに過ごしている場所には自然と人が集まる。そのような場をつくることも、福島への一つの関わり方であり応援の形なのではないか」と述べました。
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おわりに
今回のワークショップは、スタディツアー参加者が福島で得た経験や学びを共有するとともに、地域との関わり方や人とのつながりについて改めて考える機会となりました。
参加した学生たちにとって、福島で出会った人々や風景、そしてアート制作の過程で得た気づきは、今後の学びや活動につながる貴重な経験となったようです。
また、本スタディツアーの実施にあたり温かく迎え入れてくださった富岡町をはじめとする地域の皆さま、ともに活動いただいた東北芸術工科大学の皆さま、そして本ワークショップ参加者の皆さまに、心より感謝申し上げます。
福島で生まれた出会いや学びが、今後も参加者それぞれの活動や新たな関わりへとつながっていくことを願っています。

【関連リンク】
【教員便り】福島スタディツアー「福島でアート」実施報告










