本講演会は本学高等研究所研究プロジェクト「人新世と人文学:Humanities in the Anthropocene」セミナーシリーズ第9回公開講演として企画されました。国内外から19名の参加者を得、講演後には活発なディスカッションが行われました。
ドイツのコンスタンツ大学より、美学・文学がご専門のティモ・ミュラー教授 (Timo Müller、Chair of American Studies, Department of English Literature, University of Konstanz)をお招きし、「環境美学」に関する研究史を紹介するとともに、自然環境の美的表象の政治学に関するミュラー先生ご自身の見解を示していただきました。
講義の冒頭では、ミュラー先生がコンスタンツ大学にて取り組んでおられるOff the Roadプロジェクトを紹介していただきました。これは、コンクリート道路上を走る自動車という現在のシステムが出現する以前、自動車による移動が徹底的に環境に配慮したものであったという、現在ではほとんど忘れられている事実を再確認することを通じて自動車文化を歴史的に捉え直し、ひいては人間と自然との関係を体系的に再検討する取り組みということでした。
![]() ティモ・ミュラー先生 |
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続いて、そのような具体的プロジェクトの背景にある理論として、哲学者ゲルノ・ベーメ(Gernot Böhme、1937-2022)が提唱する「環境美学」の概念を詳しく紹介してくださいました。従来の自然美学における美的判断や主体と客体の関係の強調を、より包括的な環境認識への理解へと置き換える「環境美学」の可能性について論じていただきました。さらに、ベーメのアプローチを、新物質主義(New Materialism)などに関する近年の研究を参照しながら解説する過程で、数多くの書籍を紹介してくださり、大変情報量の多いセミナーとなりました。

デマタゴダ・ユディス先生
なお、本企画の立案と運営は、当研究所講師のデマタゴダ・ユディス先生によるもので、当日の様子は近日Youtube上で広く一般公開予定です。
イベント概要
- 登壇者:Timo Müller (Professor, Chair of American Studies, Department of English Literature, University of Konstanz)
- 司会:山本 聡美(早稲田大学高等研究所 副所長/文学学術院 教授)、Udith Dematagoda(早稲田大学高等研究所 講師)
- 日 時:2023年2月27日(月)17:00~19:00
- 会 場:Zoomによるオンライン開催
- 言語:英語
- 対 象:教員・研究者・大学院生
- 主 催:早稲田大学 高等研究所
- 共 催:スーパーグローバル大学創成支援事業 早稲田大学国際日本学拠点
総合人文科学研究センター 角田柳作記念国際日本学研究所
早稲田大学 美術史学会
※後日YouTube配信予定