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開催報告:「今更、谷川俊太郎 – 谷川作品をめぐるシンポジウム」

※イベント当日の動画を配信中です。(配信2023年3月31日まで)
※動画の配信は2023年3月31日をもって終了いたしました。

1950年から2020年代まで、70年にわたって創作を続け、海外でも翻訳の多い、詩人の谷川俊太郎さん、91歳。その作品の独創性をあらためて今、批評してみようという目的で、2023年1月30日、小野記念講堂にてシンポジウム「今更、谷川俊太郎」が開催されました。

パネリストは、作家の高橋源一郎、詩人の伊藤比呂美、四元康祐、マーサ・ナカムラの各氏と早稲田大学の尾崎真理子教授―いずれもこれまで谷川の詩について、みずからの著作等で言及している、長年の読者の代表です。これらの登壇者、パフォーマンスを担当した早大生、計120人余りが参加し、会場は熱気と温かな笑いに3時間余り包まれました。

松永美穂教授の開会の辞に続いて始まったパネルディスカッションでは、その知名度の高さに比して、なぜ、これまで十分な批評が寄せられてこなかったのか。この難問について興味深い討論が展開しました。

四元康祐氏が、「16歳で出会った時、その詩から生きる事そのものを教わった。谷川さんは日本には類のない、思想家であり、文学を超えている」と発言すると、高橋源一郎さんは、「谷川さんは『現代詩』が問題にしつづけてきた時代や時間軸を超えた詩を平気で書いてしまう。だから一般に詩誌で行われるような批評の範疇、時間軸には収まらなかった。この詩人は1万年だって1行で飛び越えてしまう」と、次のような短い作品を紹介しながら、ユーモアたっぷりに語りました。

〈アイスキュロスの設計した四輪駆動車は/円形劇場の階段をウィンチなしで登った/西欧文明にはそんなふうなところがあるのだ/もちろんこれが観察にもとづいた結論/ではないことは分かっているだろ/どうなんだおい!〉(「一月二十六日」=『日めくり』1984年刊)


早稲田大学出身のマーサ・ナカムラ氏は、「保育園の頃、『みみをすます』を母に勧められた。谷川さんの本はずっと道端の石ころのように身近だったけれど、どこか怖くもあった。怖いからこそ子供の私は引きつけられたし、世界の全体を教えられる絵本も多かった」。尾崎教授は、「同時代の日本と世界の人々の感受性を代表して、それを言葉で表現し続けてきた詩人。いつのまにか時代は谷川さんが書いてきたような日常風景の色調、テイストになってきた。その一つが『無印良品』のような商品群で、このブランドを創設したのも辻井喬(堤清二)という現代詩人だったことは興味深い」と、「詩」の存在感の大きさを伝えました。

2015年刊の重要な詩集『詩に就いて』についての集中討議を終えると、舞台上では文化構想学部の学生と文学研究科の院生6人が、谷川作品から発想した自作の詩を、楽器の演奏や演劇的な手法を用いて個性豊かに朗読するパフォーマンスを展開。来場者には手製の「記念詩集 今更、谷川俊太郎」も配られ、水準の高い創作と実演が喝采を浴びました。男子3人女子3人という参加メンバーは皆、伊藤比呂美氏から早稲田大学で詩の創作を学び、薫陶を受けた若者たちで、伊藤氏は「私は谷川さんに今、死に方について尋ねることが多い。でも、早稲田では谷川さんに影響を受け、詩を書くことで生き抜こうとする若者たちがいる。このようなパフォーマンスが実現したのも、谷川さんという詩人が生きて、書き続けていてくださるからだと思います」と、感謝と感激を語りました。

また、日本に滞在中のウェストミシガン大のジェフリー・アングルス教授、アイオワ大のケンダル・ハイツマン准教授(いずれも詩人)、さらには早稲田大の栩木伸明教授も最前列で参観。締めくくりに発言を求められると、「谷川作品はアメリカでもどこでも読まれている。それは批評されるより何百倍もすばらしいこと」などの発言もありました。
3時間を超す長丁場でしたが、あらためて谷川俊太郎という当代を代表する詩人と詩の力を確認することのできた、実り多い半日の催しとなりました。

イベント概要
  • 日時:2023年1月30日(月)14:00-17:00 (JST)
  • 会場:小野記念講堂
  • 開催方式:対面
  • 登壇者:伊藤比呂美、高橋源一郎、四元康祐、マーサ・ナカムラ、尾崎 真理子 (早稲田大学文学学術院 文化構想学部 教授)
  • 主催:早稲田大学 文化構想学部 文芸・ジャーナリズム論系、早稲田大学大学院 文学研究科 現代文芸コース、スーパーグローバル大学創成支援事業 早稲田大学国際日本学拠点
  • 共催:早稲田大学国際文学館
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