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2023年度までのニュース

参加レポート:ICPSRサマープログラム 2022@ミシガン大学 -Session 2-

社会科学に関する世界最大の調査データアーカイブを保有するICPSR (Inter-university Consortium for Political and Social Research) は、本部のあるミシガン大学で1960年代から統計・データ分析のサマープログラムを実施しています。今年度のICPSRサマープログラムはアナーバーキャンパスでの対面授業とZoom中継によるハイブリッド開催となり、40以上のコースについて4週間にわたる集中講義が行われました。SGU実証政治経済学拠点では、例年このサマープログラムに参加する大学院生に受講料の補助を行っています。今年は政治学研究科と経済学研究科から2名の大学院生がこの長丁場のプログラムに挑みました。

 

麻生 充仁 (ASO, Mitsuhito) 

所属:政治学研究科 修士課程1年
研究テーマ:比較政治学(現代政治領域)
派遣先・期間:アメリカ・ミシガン大学(2022/7/17-8/15)

私は現在、政治学研究科の修士課程に在籍しています。修士課程に入学以来私は計量分析の手法の理解に努めてきましたが、学部で統計学に触れなかった私にとり体得までの道のりはまだ長く感じられたため、統計学的な考え方により近しくなり自ら研究デザインを組み立てられるようになること、アメリカの大学院教育を肌身で知ることを目的に参加しました。ICPSRは、アメリカのトップレベルの大学の教育にさまざまな大学に所属する人がアクセスできることを目的に開かれており、アメリカの大学の夏休み期間中に2か月間開かれます。ICPSRのプログラムは1つ4週間で構成されており、セッション1とセッション2があります。今回私はセッション2に参加しました。

コロナ禍での渡航

飛行機のチケットの確保と海外旅行保険の手配は大学に行っていただいたため、渡航前に私がすべきことはビザとワクチン接種証明書の確保でした。ESTAの申請は驚くほどスピーディーに完了しましたが、ワクチン接種証明書の確保は少し手間がかかりました。また、帰国のためにPCR検査を受ける必要があり、これには大変苦労させられました。

ワクチン接種証明書は、デジタル庁によってアプリが公開されており、これを利用すれば簡単にワクチン接種証明を行うことができますが、利用にはマイナンバーカードを持っていることが必要です。私はマイナンバーカードを持っていないため、保健所に実際に訪れて発行してもらう必要がありました。保健所のウェブサイトでは郵送での手続きは1か月以上と非常に長い時間がかかると案内されていたため、戦々恐々としながら保健所に向かいましたが、窓口ではすぐに対応してもらえ、無事にワクチン接種証明書を手にすることができました。

渡航している際に気づいたことは、日本を発つ機内までは周囲の誰もがマスクをしていたのに、トランジットのためシカゴの空港に降り入国審査に並んだ時にはほぼ誰もマスクをしていなかったことです。私はコロナが広がって以来日本を出ていませんでしたので、マスクをしない人を見ることが久しぶりで、少々違和感を覚えました。

授業の様子

授業はすべての授業が教室とZoomのハイブリッド方式で行われました。参加者の比率は、教室で受ける人とZoomで受ける人とで半々か、ややZoomの人が多いくらいでした。

今述べたように、アメリカではマスクをする人はあまりいませんでした。これはプログラムでも同様でしたが、決して誰もマスクをしないということではありません。プログラムはマスクの着用を奨励しており、各教室にはN95マスクが常備されていて参加者は自由に取って使うことができます。先生方の中には、参加者の質問に答えるため至近距離で会話する際にマスクを着用する、気遣いあふれた方もいました。

ICPSRの授業はレクチャーとワークショップの2種類があります。メインであり受講者が必ず選択するのが、ワークショップです。ワークショップは毎日2時間の授業が4週間にわたって続けられます。この濃いカリキュラムを通して、計量分析手法の体得に努めます。一方レクチャーは受けなくてもよく、基本的に2週間のみ開催で、授業時間も短いものが多いです。レクチャーは基礎的な事項の確認のために開講されています。

セッション2に参加した私は、レクチャーから「Introductory/Review Lectures on Matrix Algebra(行列入門)」と「Introduction to the R Statistical Computing Environment(R入門)」を受講し、ワークショップからは、「Panel Data and Longitudinal Analysis(パネルデータ・時系列分析)」と「Regression Analysis II: Linear Models(回帰分析II: 線形回帰モデル)」を受講しました。

レクチャーのIntroductory/Review Lectures on Matrix Algebraは、ブエナビスタ大学のTimothy McDaniel先生が担当しました。Tim先生は非常に陽気で、行列の計算ルールについての説明にも熱がこもっていました。Introduction to the R Statistical Computing Environmentはコロラド大学ボルダー校のSarah Hunter先生が担当しました。Sarah先生の説明は非常に細やかで、あらかじめ用意されたR markdownに沿って講義を進める中でも、R使用時に遭遇しがちなエラーとその対処法について逐次説明をしてくれました。

ワークショップのPanel Data and Longitudinal Analysisは、前半をコロラド大学ボルダー校のAndrew Philips先生が、後半をサイモンフレーザー大学のMark Pickup先生の2人が担当しました。パネルデータ分析の理論的背景として行列を使った説明が多用されたため、行列になじみがなかった私は苦戦しましたが、授業ごとに丁寧なラボセッションが設けられ、配布されたコードをRとStataを用いて実演することで、分析方法や検定方法の吟味の仕方を学ぶことができました。

Regression Analysis IIは、オハイオ州立大学のBrian Pollins先生と、ダートマス大学のRobert Cooper先生が担当し、大ベテランのBrian先生を若いRobert先生が補佐していました。Brian先生はお茶目で、時折ジョークを交えながら、回帰分析の理論的基礎について丁寧に解説をしてくれました。授業ハンドアウトもICPSRの歴史を感じさせるものでしたが、それもそのはずで、なんとこの授業には20年前に多湖先生が参加しているのです! 統計ソフトを用いずに回帰係数を計算する課題は、線形回帰モデルに対する理解を深めてくれました。

Brian先生のクラスのメンバーと

レクチャーとワークショップは、広大なキャンパスの各地にある建物に散らばって行われます。私は多くの授業を取ったので授業ごとに長い距離を移動していましたが、大学内を探検することができ、多くの発見がありました。

現地での生活

滞在した Osterweil

現地では、研究科の先輩が教えてくれたICCという学生協同組合が運営する家で生活しました。ICCは大学近辺で16もの家を運営しており、生活する学生は寮のように利用しています。私はキャンパスにも近いOsterweilという家に寝泊まりしました。

平日は、自宅でスーパーで買ったパンを食べた後、キャンパス外れにあるICPSRの本部でコーヒーを飲みながら課題をこなしました。12時から13時までは行列のレクチャー、13時から17時までは2つのワークショップ、17時半から19時半まではRのレクチャーと、忙しい毎日を送りました。ICPSRの本部は受講生に開放され、コーヒーや紅茶が自由に飲めるほか、ソファや机があり、毎日受講生が数人集まって課題をしていました。また火曜日昼はランチボックス、水曜日朝にはドーナツが配られたほか不定期にワーキングランチが設定され、TAも含む参加者同士の交流の場となっていました。授業後には、結構な頻度で誰からともなく誘い合って、レストランやバーに行きました。

休日には、最初と最後の土曜日の2回ICPSRによってピクニックが開かれて参加者同士の交流の場が設けられました。別の日には現地の他大学院に通う友人が訪れてくれ、車で周辺を観光しました。一方、ICPSRの本部は休日も開放されており、他の受講生と一緒に課題にあたったこともありました。

ICPSR本部の部屋でコーヒーやドーナツが配られた

今後の展望

私はこのプログラムを通して、言葉で語りつくせないほど有益ですばらしい体験をすることができました。最大の課題であった計量分析への理解がBrian先生の丁寧な線形モデルの授業を通して深まったうえ、Andrew先生らのパネルデータの授業を通して今後私が取り組むべき発展的な内容についての知見を得ることができました。

また、私は現地へ参加したので、アメリカの大学院教育を五感を通じて経験することができました。(とりわけ、先生のことを名前で呼び捨てにする習慣には大きな衝撃を受けました。)勇気を出して他の受講生に話しかけたことで、世界各地から集まった彼らと交流する機会を得ることができました。他の受講生に話しかけることは以前の講演でUCSDの直井先生に勧められていたことでしたが、おかげで4週間の間実りある時間を過ごすことができ、社交の大切さを身に染みて感じることができました。また、受講生のほとんどは博士課程に在籍しているかすでに博士号を持っていたため、修士課程にいながら先のレベルを肌で感じられ、アカデミズムの中でのキャリアパスの描き方もおぼろげながら見えてきました。今後は、この経験を原動力にして、私自身のキャリアパスを切り開いていきたいです。

最後に、このようなすばらしい機会を与えてくださった関係者の皆様、先生方に感謝を申し上げます。

参加者の集合写真

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