山本 鉄平 マサチューセッツ工科大学准教授
2021年7月31日から8月21日にかけて、山本 鉄平准教授（マサチューセッツ工科大学政治学部）による夏季集中講義「Advanced Topics in Political Economy: Causal Inference」が実証政治経済学拠点の招聘で実施された。本講義は、授業前半はオンライン配信、後半は対面授業とオンライン配信授業を併用するハイフレックス型形式を用いて行われた。参加した学生は、政治学方法論の分野で国際的に活躍する山本准教授から、社会科学研究で益々重要性が高まりつつある統計的因果推論の基礎を体系的に学ぶ機会となった。約20名の受講生は、短期間で5回の課題、中間試験、期末課題に取り組むことを通して、因果推論の様々な手法を身に着けることを目標とした。
8月17日には、受講生が自らの研究について報告するワークショップが企画された。報告者が山本准教授やクラスメートからコメントをもらうことを通して、講義のみならず、因果推論の手法を実践的に用いる機会が設けられた。このワークショップでは、3名の大学院生・学部生が研究報告を行った。
高橋 孝平さん（経済学研究科博士後期課程）は禁煙プログラムが生産性に与える短期的影響についての研究（タイトル「Short-Term Productivity Impact of Smoking Cessation Programs」）、山口 剛正さん（経済学研究科修士課程）はメキシコの国民健康保険制度が犯罪率へ与える影響を推定する研究（タイトル「The Effect of Health Insurance Provision on Crime -The Case of Mexico-」）、中村 健太郎さん（政治経済学部政治学科）は政治的に困難な時期における中国のパブリック・ディプロマシーに関する研究（タイトル「Telling China’s stories well: How Public Diplomacy has Changed under Difficulties」）についての報告を行った。いずれも統計的因果推論等、最先端の方法論に依拠した研究であり、山本准教授からは各報告者に対して、今後の研究の発展、さらには査読付きジャーナルへ掲載されるための具体的な助言がなされた。
研究報告風景 左上：高橋 孝平さん 右上下：山口 剛正さん 左下：中村 健太郎さん（オンライン参加）
報告者の声
高橋 孝平さん（経済学研究科博士後期課程）：
「ワークショップでは、禁煙実験を扱った研究について、クリティカルな点をいくつもご指摘いただき、より精緻な議論を論文に盛り込むことが期待できました。このような機会を与えてくれた因果推論の講義に感謝します」
山口 剛正さん（経済学研究科修士課程）：
「授業やオフィスアワーで、山本先生やTAの北川さんは質問に対して丁寧に説明をしていただけたことで理解が深まった。計量経済学の授業では多く取り扱わない範囲もカバーしており、予習をしっかり行った上で積極的に参加すれば短い期間でも多くを吸収できる授業だった。特に、ワークショップでは自分の研究に対しての改善点を指摘してくださるので、実践を通して因果推論への理解を深める機会になった。これから本格的に実証分析を始める・実証系の論文を読む学生には、非常に有益な授業だと思う。」
中村 健太郎さん（政治経済学部政治学科）：
「セミナーでは山本先生から研究のデザインや議論のフレーミング、構成の仕方に至るまで非常に細かくコメントを頂き、とても参考になりました」
高橋 孝平さん
山口 剛正さん
中村 健太郎さん（オンライン参加）と山本准教授（手前）
統計的因果推論を集中的に学ぶ夏季集中講義は、山本准教授の講義、TAセッション、複数の課題、試験、ワークショップを短期間に実施するため、履修を貫徹することは決して容易ではない。受講生はこのようなハードな内容を集中的に学習することを通して、社会科学研究における重要な方法論的基礎を身に着けるとともに、本講義で得た知見を各自の研究へと応用し、研究成果の発信へ向けて重要な示唆を得ることができた。
