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特別講義レポート:実験政治経済学における最近の潮流

実証政治経済学拠点では、CEFMプロジェクトで招聘している新進気鋭の実験経済学者、ダラム大学の亀井憲樹准教授による連続特別講義を開催した。

今回の特別講義は新型コロナの影響のため、対面講義ではなく、ZOOMを用いてオンライン形式で行われた。単位のない、大学院生向け特別講義であったが、多くの積極的な大学院生の参加があった。

今回の亀井先生の講義のメインテーマは、実験経済学の様々な研究テーマの中でも長い間、多くの人々によって研究されてきた人々の協力に関する問題であった。毎回の講義のトピックに関する3-4本の最新研究を紹介し、そのトピックがどのような流れの中で研究されてきたかの詳細な説明が加えられた。さらに、最新研究でよく使われる新しい実験手法や、新たに研究されている協力行動に影響を与える要素も詳しく説明された。
特別講義の登録者総数は29人,5回の各講義の平均参加者数は約13人であった。早稲田大学の大学院学生のみならず、学部学生、ポスドク研究員、教員や他大学の研究員、教員の参加もあった。

なお、講義の詳細は下記の通りである。

 

トピックス1: ピア・ツー・ピアの罰則行動(講義1:10月21日)

協力問題を扱う公共財実験に関する過去の実験研究からの知見をレビューした。その上で、社会的ジレンマにおいてピア・ツー・ピアの罰則行動が人々の協力行動に果たす役割を考察し、その際に特に高度の罰則行動(higher order punishment)に着目し説明した。また、直接当事者ではない第三者による規範逸脱者に対する罰則行動やグループサイズパラドックについても講義した。

トピックス2: 内生的モニタリングと協力(講義2、3)

ピア・ツー・ピアの罰則行動以外の協力を促す分権的メカニズムとして、内生的に評判情報を構築し相互にモニタリングをする、または、交流相手を選択する「選び」「選ばれる」という仕組みがある。内生的モニタリングの例として二つの形態を勉強するとともにパートナー選択メカニズムの効果を説明した。

講義2: ゴシップ(10月28日)

内生的モニタリングには評判情報が必要となるが、代表的な情報伝達方法はゴシップである。しかしながらゴシップを流すのにはコスト(例:時間等の機会費用)がかかる。 誰がコストをかけてでもゴシップを社会に流そうとするのか?流した情報の効果は何か?囚人のジレンマゲームを用いた最近の実験からその問いの答えを説明した。

講義3: 自発的な情報開示行動とパートナー選択(11月4日)

ゴシップ以外の情報伝達手段として自身の情報を自らが開示する行動も考えられる。第3回目の講義では自発的な情報開示行動(自身のID情報、過去の行動など)を説明した。また、評判情報の存在は人々が交流する相手を選ぶことを可能とし、また選ばれるためにはパートナーから信頼されることが必要となる。講義の後半では、パートナー選択が人々の協力行動を律するのに果たす役割についても講義した。

トピックス3: 制度遂行によるインセンティブ構造の修正(講義4,5)

トピックス1と2で示した分権的なメカニズム以外の方法として、グループ内のインセンティブ構造を集合的意思決定により変更することで協力問題の自律的解決を目指す方法もある。この分野における2つのトピックスを解説した。

講義4: 民主主義プレミアム(11月11日)

向社会的行動を促す制度選択の効果は、同制度が民主的に導入されると効果が高いと知られている。この効果を民主主義プレミアム(democracy premium)と呼ぶが、それに関する最近の実験研究を紹介し、解説した。

講義5: 内生的制度選択行動(11月18日)

社会的ジレンマなどの協力問題は、そのインセンティブ構造を適切に修正すれば(個人のインセンティブを社会のインセンティブと同じ方向に向かせれば)理論的には解決する。それでは、グループに制度構築の機会が与えられれば、人々は集合的に効率的なルールを構築するのか?人々はゲーム理論と整合的な行動をとるのか?このような問題について、人の内生的制度選択行動に関する近年の研究成果を解説した。

 

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