下記の日程で、CEFMプロジェクトで招聘している新進気鋭の実験経済学者であるダラム大学准教授亀井憲樹先生による大学院生向け連続特別講義を開催することになりました。ZOOMによる集中講義です。参加希望者は10月18日までに次のリンクから受講登録をしてください。なお、この講義は単位はつきません、また、意欲ある学部生も受講できます。言語は原則的に英語ですが、参加者全員が日本語を理解する場合は日本語になります。
特別講義参加申込フォーム
http://expwaseda.sakura.ne.jp/kamei/webcj.cgi
10月21日(水)を初回として、毎週水曜日13:00-14:30の5回連続の講義です。
実験政治経済学における最近の潮流
講師: ダラム大学准教授(実験研究センター長) 亀井憲樹
実験経済学の手法は制御された環境下で人々の行動データを習得し仮説を検定するものであり、社会科学の問いに答えるのに有益である。現代社会における人々の協力行動及び協力を促す仕組みに関連し、膨大な実験が過去20年以上に及び行われてきた。この5回の講義を通じ、本授業では人々の協力に関する最近の実験研究を大学院生に紹介することを目的とする。本講義では最近の実験手法の一部についても紹介する。
具体的には以下で示す通り、3つの主要なトピックを勉強する。なお、時間が許す限りにおいて追加的なトピックスを扱うことがある。
トピックス1: ピア・ツー・ピアの罰則行動(講義1)
最初の授業では、協力問題を扱う公共財実験に関する過去の実験研究からの知見をレビューする。その上で、社会的ジレンマにおいてピア・ツー・ピアの罰則行動が人々の協力行動に果たす役割を考察する。その際に特に高度の罰則行動(higher order punishment)に着目する。また、直接当事者ではない第三者による規範逸脱者に対する罰則行動やグループサイズパラドックについても勉強する。
トピックス2: 内生的モニタリングと協力(講義2、3)
ピア・ツー・ピアの罰則行動以外の協力を促す分権的メカニズムとして、内生的に評判情報を構築し相互にモニタリングをする、または、交流相手を選択する「選び」「選ばれる」という仕組みがある。内生的モニタリングの例として二つの形態を勉強するとともにパートナー選択メカニズムの効果を考察する。具体的な2回目、3回目の講義内容は以下の通りである。
講義2: ゴシップ
内生的モニタリングには評判情報が必要となるが、代表的な情報伝達方法はゴシップである。しかしながらゴシップを流すのにはコスト(例:時間等の機会費用)がかかる。 誰がコストをかけてでもゴシップを社会に流そうとするのか?流した情報の効果は何か?囚人のジレンマゲームを用いた最近の実験からその問いの答えを探る。
講義3: 自発的な情報開示行動とパートナー選択
ゴシップ以外の情報伝達手段として自身の情報を自らが開示する行動も考えられる。第3回目の講義では自発的な情報開示行動(自身のID情報、過去の行動など)を勉強する。また、評判情報の存在は人々が交流する相手を選ぶことを可能とし、また選ばれるためにはパートナーから信頼されることが必要となる。講義の後半では、パートナー選択が人々の協力行動を律するのに果たす役割についても考察する。
トピックス3: 制度遂行によるインセンティブ構造の修正(講義4,5)
トピックス1と2で示した分権的なメカニズム以外の方法として、グループ内のインセンティブ構造を集合的意思決定により変更することで協力問題の自律的解決を目指す方法もある。この分野における2つのトピックスを勉強する。
講義4: 民主主義プレミアム
向社会的行動を促す制度選択の効果は、同制度が民主的に導入されると効果が高いと知られている。この効果を民主主義プレミアム(democracy premium)と呼ぶが、それに関する最近の実験研究を勉強する。
講義5: 内生的制度選択行動
社会的ジレンマなどの協力問題は、そのインセンティブ構造を適切に修正すれば(個人のインセンティブを社会のインセンティブと同じ方向に向かせれば)理論的には解決する。それでは、グループに制度構築の機会が与えられれば、人々は集合的に効率的なルールを構築するのか?人々はゲーム理論と整合的な行動をとるのか?人の内生的制度選択行動に関する近年の研究を勉強する。
なお、これらのトピックスは暫定的であり変更する可能性がある。
その他:亀井のオフィスは3号館11階の1111にあります。学生の実験研究プロジェクトについて個別にディスカッションを希望の方は歓迎しますのでkenju.kamei[at]gmail.comまでご連絡ください。1対1の(オンライン)ミーティングを設定します。
【日時】2020年10月21日(水)より毎週水曜日13:00~14:30(5回連続)
【参加対象】大学院生
【使用言語】英語
【参加方法】10月18日までに下記リンクから受講登録してください(無料)。
http://expwaseda.sakura.ne.jp/kamei/webcj.cgi