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国際シンポジウム「熟議民主主義の実践と実験」を開催しました

スーパーグローバル大学創成支援事業 実証政治経済学拠点、ならびに、国際シンポジウム「熟議民主主義の実践と実験」実行委員会は、2020年2月18日・19日に「Designing Deliberative Democracy: Practices and Experiments」と題する国際シンポジウムを開催しました。シンポジウムは、早稲田大学国際シンポジウム等開催助成プログラムの支援を受け、また日本ミニ・パブリックス研究フォーラムとの共催により開催されました。50名を越える参加者のもと、熟議民主主義の「実践」と「実験」に関して活発な議論が交わされました。

 

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熟議民主主義(deliberative democracy)は自治体による市民討議会等を通じた「実践」が進む一方、熟議の形式、構成、テーマ等の影響を探求するための「実験」が様々な国で行われるようになりました。このような進展を踏まえて、ヨーロッパにおいて様々な実験を通じた熟議民主主義の実証研究を牽引するKimmo Grönlund教授(Åbo Akademi University)André Bächtiger教授(Stuttgart University)をお招きし、基調講演をいただきました。お二人は、欧州で最大規模の政治学会である欧州政治研究連合(European Consortium for Political Research: 早稲田大学政治経済学術院は準加盟校)の「Democratic Innovations」部会を創設・運営するなど熟議民主主義の実証研究において指導的な立場にあられます。

 

今回のシンポジウムを企画する目的は2つありました。1つは、熟議民主主義の実証研究の中心地となっているヨーロッパの最先端の研究を知ることです。日本でも熟議民主主義の実証研究は豊かな蓄積がありますが、それは主に討論型世論調査(Deliberative Polling®)の形式に則ったものでした。ヨーロッパでは、無作為に抽出された市民による討論を「ミニ・パブリックス」(Mini Publics)と呼び、どのような討論の形式を採用すれば、より質の高い熟議(deliberation)が行われるかについて実験による様々な研究が行われています(その意味においてはDeliberative Polling®はミニ・パブリックスの1つの形態と言えます)。

 

熟議の実験研究を長年にわたり精力的に行ってきたGrönlund教授は、基調講演「Designing Deliberative Mini-publics as Experiments, Experiences from Finland」において、フィンランドで行われた5つのミニ・パブリックスの実験結果を紹介しました。例えば、討論後の意思決定の形式を秘密投票とするか、グループごとにひとつの意見にまとめて表明するかを比較した実験では、グループごとの意思表明を割り当てられたグループの方がそのテーマ(フィンランドの場合は原発問題)への知識が高まったことが紹介されました。また、意見が似通った者同士の討論と異なる意見が混在するグループの討論を比較した実験では、議論のお作法を説く(熟議の規範を与える)という前振りがあるだけで、意見が似通った者同士であっても極端な意見に振れることはないということが明らかになりました。

 

 

Grönlund教授は、異なる討論の形式や参加者の特徴の違いを確認するためにはどのように実験を組めば良いかという実験設計の基礎を参加者に手ほどきをしてくださりました。これを受けて、André Bächtiger教授は「Democratizing Deliberative Democracy: A Critical Appraisal of Empirical Research on Deliberation」と題する基調講演において、良い熟議とは何か、そして質の高い熟議とは何かをお話されました。とりわけ、熟議をどのように客観的に評価、測定し実証分析に結びつけることができるかという点に力点を置かれていました。Bächtiger教授は、討論における発話を内容分析して点数化するDiscourse Quality Index (DQI)の考案者のお一人ですが、基調講演では他の参加者への敬意や議論の洗練性などのこれまでのDQIの評価ポイントの他に、経験談のような自分または他人の視点から話して共感を呼ぶことの大切さ(Storytelling)や反対意見への対処の仕方の重要性についてお話されました。

 

 

今回のシンポジウムのもう1つの目的は、日本における熟議民主主義の「実践」と「実験」の試みをヨーロッパからのゲストのお二人に知っていただき対話をすることでした。日本で討論型世論調査、ならびにミニ・パブリックス研究を牽引してきた慶應義塾大学の曽根泰教名誉教授と東京工業大学の坂野達郎教授には、道州制、藤沢市政、年金問題、エネルギー・環境問題等の様々な問題をめぐって行われた討論型世論調査のプロジェクトについてお話いただきました。また、日本の自治体などで市民討議会が500回以上も行われてきていることを踏まえて日本における熟議民主主義の「実践」についてもお話いただきました。日本における市民討議会についてはシンポジウムの2日目に長野基氏(首都大学東京准教授)によって、その概要と新宿区の事例について詳しくご報告いただきました。

 

シンポジウムの初日は、上記の2つの目的を実現すべく、ヨーロッパを代表するゲストのお二人の先生と日本を代表するお二人の先生をパネリストとして迎えてラウンドテーブル形式の「熟議」を行いました。テーマ は、良い熟議とは何か、熟議実験の内的妥当性と外的妥当性を両立させるためにはどのような方策が考えられるか、熟議空間で形成された「意見」はどのように社会全体の「世論」として反映されうるか、様々な国や地域でミニ・パブリックスを実践するにあたり文化的な違いはあるか、熟議やミニ・パブリックスは近年のポピュリズムの波に対して何らかの解決策になりうるかなど、多岐に渡りました。

 

シンポジウムの2日目は若手の最新の研究報告に対して、ゲストのお二人の先生にはコメンテーターとしてフィードバックをいただく機会を設けました。これらの報告は、日本において実施されたミニ・パブリックスの実験をはじめ、いずれも熟議民主主義の理論の実証に関わるものでした。静岡大学の中澤高師氏(静岡大学准教授)には、浜岡原発に関する対面によるミニ・パブリックスとオンラインによるミニ・パブリックス(その一部はAIによる司会進行による)を比較したご研究を報告いただきました。また、早稲田大学からはHun Chung氏(政治経済学術院准教授)が登壇し、熟議の様式は選好が明示された建設的な討論やディベートが望ましいことを論証する「熟議民主主義のフォーマル・セオリー」(アメリカ政治学会の学会誌APSR掲載)を報告しました。その他、2016年に早稲田大学が中心となり実施された外国人労働者のテーマに関する静岡県でのミニ・パブリックスのプロジェクト(研究代表者:田中愛治名誉教授・早稲田大学総長)の研究成果が、日野愛郎氏(政治経済学術院教授)、横山智哉氏(金沢大学講師)、田部井滉平氏(大学院政治学研究科博士後期課程)、原健人氏(政治経済学部4年生)により、それぞれ報告されました。いずれの報告に対しても、ゲストのGrönlund教授とBächtiger教授からいくつもの大変に有益なフィードバックが提示されました。

 

早稲田大学国際シンポジウム等開催助成プログラムのご支援、そして共催させていただいた日本ミニ・パブリックス研究フォーラム、ならびにシンポジウム参加者の皆様のご協力のおかげで、大変充実した国際シンポジウムを開催することができました。開会の辞をくださった田中愛治総長、パネルの司会を務めてくださった久米郁男氏(政治経済学術院教授)、遠藤晶久氏(社会科学総合学術院准教授)、閉会の辞をくださった清水和巳氏(政治経済学術院教授、実証政治経済学拠点リーダー)、そして、何よりもシンポジウムの企画・運営をお手伝いただいた実証政治経済学拠点事務局をはじめとする多くのスタッフの皆様に心より御礼を申し上げます。

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