「軍隊における専門特化と英国の対植民地訓練提供の連関」ワークショップ
スウェーデンのウプサラ大学からクリスティーン・エック先生が来日され、2019年10月30日に早稲田大学早稲田キャンパス三号館でワークショップ「軍隊における専門特化と英国の対植民地訓練提供の連関」が開催されました。このイベントは科学研究費補助金・開拓研究とスーパーグローバル大学支援事業の支援を受けたものです。
まず、最初にエック教授は、独立後に宗主国が旧植民地地域に残しうる遺産とはどのようなもので、何が影響を与えるのかという問いを設定し、トークをスタートさせました。過去の研究成果では、植民地の伝統は政治的、社会的、経済的な制度に色濃く残り、独立してからも旧植民地地域の国々において様々な影響を与えることがわかっています。しかし、それらのほとんどが軍隊に対して残す宗主国の遺産については検討をして来なかった問題点があり、この研究ではそこにオリジナルな検討を加えるとしています。エック教授の研究チームは、軍隊における専門特化には二つの種類があり、それを分解した上で、訓練と制度的な専門特化の間にある関係性を論じる必要性を述べました。そして、今回はデータをイギリスとその旧植民地地域に絞り、英国で訓練を受けた旧植民地地域出身者の情報を集め、処理をし、検討を加えました。
エック教授は、より多くの士官訓練生がイギリスに送り出されるほど、より送り出した地域の軍隊がその組織的な形を変え、より専門特化を行いやすいと論じました。イギリスで指導されたことを受け、士官訓練生が近代軍隊をめぐる規範を内面化し、例えばそれら士官候補生は組織特化について一定の同じ指向性を持ち、よってその軍隊の編成が精緻なものになるといいます。この議論をテストするために、エック教授らはイギリスのサンドハースト王立陸軍士官学校の1948年から1971年までの外国人訓練学生のアーカイブデータを集めて確かめたといいます。このようなプロジェクトは、植民地研究の宗主国の遺産の研究のほか、軍隊の専門特化研究の分野で貢献が見込めるといいます。