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国際シンポジウム「グローバルな視点からの浙江地域と日本の文化交流史」を開催

2019年9月5日から9月7日の3日間、中国寧波市において国際シンポジウム「グローバルな視点からの浙江地域と日本の文化交流史」を開催した。本シンポジウムの目的は、アジア・ヨーロッパの諸関係が交差し、日本と中国をつなぐ主要な窓口となった浙江地域に焦点をあて、日本を含むアジアの歴史・文学の地域連鎖的なつながりや相互作用を明らかにし、そこから、世界史における日本の歴史と文学の多様性・越境性・地域性を読み解くことにある。また同時に、日中交流史に関する史資料の豊富な寧波地域の主要な教育研究機関・研究者との関係を構築することを目指すものである。
本シンポジウムは、まず寧波大学において9月5日・6日の両日、4つセッションに分かれ研究報告と討論を行った。日・中・欧の15名の研究者が報告を行い、その他、中国・ヨーロッパの研究者40名、寧波大学の学生70名も参加して、盛況な会となった。

開会の様子

討論の様子

5日の第1セッションは、バチカン図書館の余東氏が同館所蔵の日本史関連文献について、ローマ・イエズス会文書館のBrunello Mauro氏が同館所蔵の文書について、本学の田中史生が江南唐商の対日交易の実態について、台北故宮博物院の林天人氏が地図をめぐる東西交流について、いずれも具体的な史資料をとりあげて報告を行った。第2セッションは、本学の川尻秋生氏が日本古代・中世の文書様式における中国の影響や特徴について、ローマ・教皇庁立サレジオ大学のJ.Luiz Lima氏が漢語研究におけるラテン語の役割について、本学の飯山知保氏が「唐宋変革」論の課題をめぐって、それぞれ報告を行った。第3セッションは、本学の高松寿夫氏が8世紀日本における「江南」のイメージについて、寧波大学の李広志氏が寧波・日本関係の東アジア史上の位置づけについて、本学の河野貴美子氏が日本の遣明使の寧波における蒐書活動について報告を行った。次いで6日の第4セッションは、パリ・ディドロ大学のPierre Emanuel Roux氏が中国清代のキリスト教禁制における日本の絵踏の影響について、本学の伊川健二氏が欧米史料に登場する「LIAMPO」の比定地について、寧波大学の龔纓晏氏が古地図にみえる「双嶼港」の比定地について、寧波大学の劉恒武氏が『瑩山清規』と道元の清規との関係について、寧波大学の鄭楽静氏が関東大震災後の中国人虐殺事件の真相究明をめぐる研究状況について、それぞれ報告を行った。各セッションの最後にはディスカッションを行ったが、寧波大学の学生からも様々な質問が出され、議論は日本の歴史教育の現状をめぐる問題にまで及んだ。その後、セッション全体の総括コメントを龔纓晏氏と田中史生が行った。

天一閣での資料実見

次いで6日の午後は天一閣博物館に移動し、同館の周慧恵氏・李開升氏から館蔵史料について説明を受けた後、日本令の研究に大きな影響を与えた『天聖令』など、日本と関連する天一閣所蔵書籍を実見しながら、本シンポジウムの目的に沿ったディスカッションを行った。7日は寧波大学の龔纓晏氏の案内のもと、寧波大学博物館において、寧波出土の博多商人の石碑など、日本と関連する博物館所蔵資料を実見しつつ、ディスカッションをする場を設けた。また阿育王寺と天童寺の視察を行い、両寺にある石刻資料を中心に、寧波の仏教と日本の仏教との関連性について意見交換を行った。なお、天童寺は8月の台風の影響による大雨で、寺院に深刻な被害が生じており、文化財保全の重要性についても議論となった。

以上のイベントを通じ、日本と浙江地域の歴史や文化のつながりは、ヨーロッパにまで及ぶ空間的広がりの中で位置づけるべきこと、また、それらは選択的な「記憶」として後世に伝えられ、各時代において意味付けされていることに留意すべきことなどが、具体的に確認された。また、こうした交流において、寧波が重要な役割を果たしていたことも明らかとなった。このため、なぜ寧波が長期にわたり日本を含む東アジアの交流拠点となったのかについても議論が及んだ。しかし、今回はそれを明らかにするには到らなかった。この点は今後の課題となるだろう。

シンポジウム概要

国際シンポジウム「グローバルな視点からの浙江地域と日本の文化交流史」
The International Symposium “The History of Culture Communication between Zhejiang and Japan in Global Perspectives”

日時: 2019年9月5日~9月7日

会場: 寧波大学人文与伝媒学院、天一閣博物館、寧波博物館、阿育王寺、天童寺

報告者:
余東(バチカン図書館)
Brunello Mauro(ローマ・イエズス会文書館)
田中史生(早稲田大学)
林天人(台北故宮博物院)
川尻秋生(早稲田大学)
J.Luiz Lima(ローマ・教皇庁立サレジオ大学)
飯山知保(早稲田大学)
高松寿夫(早稲田大学)
李広志(寧波大学)
河野貴美子(早稲田大学)
Pierre Emanuel Roux(パリ・ディドロ大学)
伊川健二(早稲田大学)
龔纓晏(寧波大学)
劉恒武(寧波大学)
鄭楽静(寧波大学)
※以上、報告順

司会:
王海燕(浙江大学)
Carlo Socol(ローマ・教皇庁立サレジオ大学)
Pierre Emanuel Roux(パリ・ディドロ大学)
河野貴美子(早稲田大学)
※以上、司会順

使用言語:日本語・中国語・英語
参加対象者:研究者・学生

主催:
スーパーグローバル大学創成支援事業 早稲田大学国際日本学拠点
早稲田大学総合人文科学研究センター 角田柳作記念国際日本学研究所
寧波大学浙東文化研究院
寧波大学浙東文化与海外華人研究院
寧波大学人文与伝媒学院
共催:
早稲田大学日本古典籍研究所
早稲田大学奈良美術研究所

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