2019年度 東アジア知識人文学 国際学術大会 檀国大学校 早稲田大学共同学術大会
「東アジアの知識交流のメカニズム:知識の生産と伝達」
2019年5月24日、25日の2日間にわたり、早稲田大学戸山キャンパスで標記の国際学術大会が開催された。
韓国 檀国大学校日本研究所は、2017年度より人文韓国プラス(HK+)支援事業として、「知識権力の変遷と東アジア人文学――日中韓の知識体系と流通のコン・ディバージェンス――」という研究課題にとりくんでいる。
このたびは、この檀国大学校日本研究所が、早稲田大学教育・総合科学学術院、早稲田大学総合人文科学研究センター 角田柳作記念国際日本学研究所、スーパーグローバル大学創成支援事業 早稲田大学国際日本学拠点とともに、「東アジアの知識交流のメカニズム:知識の生産と伝達」と題して国際学術大会を催すこととなった。
まず大会初日の午前には、開会式につづいて、李成市氏(早稲田大学文学学術院)による基調講演がおこなわれた。演題は「東アジアにおける知識の流通に関する一視角:国民史の伝播と受容を中心に」であった。
今回の研究課題である「東アジアの知識交流」の例として、李氏がとりあげられたのは、近代の東アジアにおける、日本を「媒介」とした西欧学術の伝播と受容、という問題である。すなわち、大韓民国(韓国)および朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)における「国民史」の成立が、植民地時代に朝鮮から日本に留学した人々にどれほど多くを負っているのかという点を明らかにしつつ、そうした留学生たちを「媒介者」とした国民史の伝播と受容、またそれに対する今日の評価に関する問題点が鋭く指摘された。特に、国民史ならびに民族文化をとらえてゆく枠組みとして、津田左右吉による国民史、国民思想からの影響がさまざまな事例とともに示された。
さらに講演の後半では、文化の伝播と受容における「媒介者」の問題をより巨視的にとらえるため、古代の例として韓国出土の木簡がとりあげられた。日本列島における木簡の使用の開始が7世紀前半ごろで、中国における使用(4世紀ごろまで)と重ならないことから、日本古代史研究では、長らく日本の木簡が列島で独自に形成されたものとされてきたという。ところが韓国の出土木簡(5・6世紀)は、わずか1000点にも満たないものの、日本で出土している多様な木簡のほぼすべての種類がそろうという。これにより、日本の漢字文化が新羅、百済を「媒介」として受容された可能性が明確になったとした上で、講演の最後では、「媒介者の創造的な受容」を評価する必要性が力説された。
つづいて、初日の午後、ならびに二日目の午後には、2つの会場であわせて20人の研究者により、東アジアにおける知識交流のメカニズムに関する研究発表がおこなわれた。発表は、檀国大学校日本研究所から参加した9名、さらに立教大学、中国 西安交通大学、台湾 国立政治大学、ベトナム 越南漢喃研究院からの各1名に加え、早稲田大学教育・総合科学学術院から4名、同文学学術院から3名がおこなった。また、それぞれのセクションでは、檀国大学校日本研究所所長の許在寧氏、および同運営委員長の鄭灐氏をモデレーターとして、総合討論がおこなわれた。研究発表でとりあげられたテーマは、東アジアのさまざまな地域、そしてさまざまな時代の、思想、言語、文学、歴史、民俗、教育、研究など多岐にわたったが、総合討論においてはそれぞれの専門領域を超えて、知識が生まれ、伝達され、さらに交流する様について、活発に議論された。
最後に閉会式が行われ、盛会のうちに本国際学術大会は終了した。
《国際学術大会 概要》
タイトル:
2019年度 東アジア知識人文学 国際学術大会
檀国大学校 早稲田大学共同学術大会
「東アジアの知識交流のメカニズム:知識の生産と伝達」
The Transition of Knowledge Power and East Asian Humanities: Con-Divergence of Korea-China-Japan Knowledge Production and Distribution
開催日:2019年5月24日(金)、25日(土)
スケジュール:
基調講演 24日 11:00-11:50
研究発表 24日
第一発表会・第二発表会 13:20-14:40
第三発表会・第四発表会 15:00-16:20
研究発表 25日
第五発表会・第六発表会 13:00-14:40
会場:早稲田大学戸山キャンパス 33号館16階 第10会議室、39号館5階 第5会議室
登壇者:
・基調講演
早稲田大学文学学術院
李 成市
・研究発表
韓国 檀国大学校日本研究所
李 炳旻
金 景南
金 昌洙
金 世宗
崔 升銀
崔 皙元
洪 晟準
孟 栄一
尹 志源
立教大学
金 廣植
中国 西安交通大学
原口浩一郎
台湾 国立政治大学
朴 炳善
ベトナム 越南漢喃研究院
Nguyen Tuan Cuong
早稲田大学教育・総合科学学術院
石原千秋
康 潤伊
堀 誠
和田敦彦
早稲田大学文学学術院
河野貴美子
陣野英則
高松寿夫