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「日本文学が世界遺産だとすれば−現在を過去に繋げる古典、記憶、アイデンティティ」を開催

開催報告

「日本文学が世界遺産だとすれば−現在を過去に繋げる古典、記憶、アイデンティティ」

 

2019年4月6日、エドアルド・ジェルリーニ氏による講演会「日本文学が世界遺産だとすれば−現在を過去に繋げる古典、記憶、アイデンティティ」が開催された。本講演会は、欧州連合委員会 Horizon 2020「マリ=キュリー・フェローシップ」プログラムにより、2018年6月から2年間の予定で文学学術院に訪問学者として滞在しているジェルリーニ氏に、そのプロジェクト「世界遺産と東アジア文学 文学遺産としての日本漢文」の研究内容についてご講演いただくとともに、コメンテーターによるコメント、ディスカッションを通して、文学と文化遺産学との学際的な対話の開拓を目指したものである。講演には学内外から60名を超える聴衆が集まった。

ジェルリーニ氏は、まず昨今話題にされている「人文学の危機」、とりわけ「古典の危機」に応えるところに本研究の必要性があることを説明され、研究方法として論理的なアプローチと実践的なアプローチの2点を紹介された。特に本講演で取り上げられる論理的なアプローチについては、古典文学を文学遺産として捉え直し、新しい遺産の定義を提供することを目指すと述べられた。つづいて、「遺産研究+文学研究」、「文化遺産としての古典文学」、「研究発展 三つの仮説」、「まとめ&展望」の4点に分けて、それぞれ詳細にご説明いただいた。

エドアルド・ジェルリーニ氏

まず、「遺産研究+文学研究」では、文学研究に遺産研究を合わせることによって、様々な学際的研究が可能となることを、具体例をもって示された。そこで提案された共同研究の例は、いくつかあげるだけでも、言語学、建築研究、観光学、博物館学、美術史、現代史、法律、ビジネスと幅広く、当該分野で進展していくであろう研究の深さを示された。「文化遺産としての古典文学」では、古典文学が文化遺産だとすれば、より正確な「文学遺産」またはより広い「テクスト遺産」の定義が必要となるとし、作品としての文学だけではなく、知識・活動(リテラシー)としての文学とその継承過程を検討するべきであると提言された。「研究発展 三つの仮説」では、文化遺産と文学についての先行研究の検討から、①カノン、②所有性、③作者性と真正性の3つの問題を掲げられた。①カノンについては、文学研究に於ける「カノン」という言葉と文化遺産研究に於ける「遺産」という言葉が同じものを指すと考えられるのではないかと提案された。②所有性については、文化遺産も文学も同じような所有性の主張の対象となっていること、また翻訳は私物化(appropriation)の手段であり、所有性/所有権に影響を与えるということを主張された。③作者性と真正性については、特にオリジナルがほとんど残っていない古典文学の実態について触れ、真正性・オリジナル・カノン形成・権威を合わせて考えていく必要があるのではないかと提言された。さいごに「まとめ&展望」では、文化的アイデンティティの問題にも触れつつ、本研究が「遺産」というキーワードを通して、古典文学というトラディショナルで保守的な学問分野にポジティブな刺激を与えることを期待するとまとめられた。

講演後3名のコメンテーターからコメントがあった。まず、国際日本文化研究センター教授の荒木浩氏は、古典文学研究の立場から3点言及された。1つ目は、「古典」という言葉の位置付けにカテゴリー・エラーがあるのではないかという問題、2つ目は古典の未来学を、receptionのような受け身ではなく、project(投影)の観点から考えることができないかという提案、3つ目は古典作品においては普遍性とローカリティを区別して考えていかなければならないのではないかという提案である。つづいて、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部准教授の松田陽氏が、文化遺産研究の視点からコメントされた。まず松田氏は、世界遺産というとユネスコによる制度化されたものを思い浮かべがちではあるが、ジェルリーニ氏のいう世界遺産というのは、制度化されていない人類共通の遺産とでもいうべきものではないかと述べられた。ただし、講演中に地理性に関する言及が複数あり、地理性と関わる以上世界遺産と言わざるを得なかったのではないかと慮った。また、グローバルな遺産とローカルな遺産のそれぞれの考え方が、古典文学を考える上でヒントを与えてくれるのではないかと提案された。さいごに、日本ユネスコ国内委員会元副会長の林原行雄氏がコメントされた。林原氏は、まず松田氏の指摘にあわせ、ユネスコには持続可能な平和を追求するという目的があり、そのような限定がついているため、なかなか広い概念としての世界遺産としては捉えにくい側面があることを述べられた。また、文学がユネスコの枠内で入るとすれば記憶遺産になるが、ドキュメントの存在、真正性、世界性などが問われ、現状として文学として登録されているものが非常に少ないということについて紹介された。

コメントのあとは、会場との質疑応答、ディスカッションが活発に行われた。幅広いテーマであるため、学部生、若手研究者らからも様々な観点から手が上がった。議論は尽きないところではあったが、定刻になったため盛況のうちに閉幕した。

【開催概要】

「日本文学が世界遺産だとすれば−現在を過去に繋げる古典、記憶、アイデンティティ」

日時:2019年4月6日(土)15:00~17:00

場所:早稲田大学戸山キャンパス33号館16階第10会議室

主催:スーパーグローバル大学創成支援事業 早稲田大学国際日本学拠点

早稲田大学総合人文科学研究センター 角田柳作記念国際日本学研究所

共催:早稲田大学日本古典籍研究所

後援:European Union’s Horizon 2020 research and innovation programme MSCA grant agreement No 792809

講演者:

エドアルド・ジェルリーニ(カフォスカリ・ヴェネツィア大学 マリキュリー・フェロー、早稲田大学文学学術院訪問学者)

司会:

河野貴美子(早稲田大学文学学術院教授)

コメンテーター:

荒木浩(国際日本文化研究センター教授)

松田陽(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部准教授)

林原行雄(日本ユネスコ国内委員会元副会長、源氏物語ユネスコ世界の記憶登録推進委員会運営委員長)

 

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