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開催報告<参加型文化>と日本−伝統芸能から現代マンガまで−

 <参加型文化>と日本−伝統芸能から現代マンガまで−

 

 コロンビア大学からハルオ・シラネ先生をお招きしてオープン・クラス(公開授業)として講演、グループディスカッション、ディスカッション内容の報告という三部が90名の参加者の元で実施された。演題は「“Participatory Culture and Creative Remix: From Traditional Japanese Performance Arts to Contemporary Manga” <参加型文化>と日本—伝統芸能から現代マンガまで—」とし、日本語表記のスライドを使いながら英語でお話いただいた。
シラネ教授は日本の伝統文化(能や茶道など)の特徴は、基本の動き(型)が家元のシステムに則って師匠から弟子に継承される点だと位置づけた。一見すると保守的で閉鎖的な技術の伝承方法に感じられるかもしれないが、それによって様々な芸(音楽、舞踊、武道など)の数世紀に渡る伝承が可能になった。また家制度では、パトロン(出資者)を中心とするアマチュア(素人)にも稽古をつけることによって、十分に収入がないプロ(玄人)の収入源を確保したが、この稽古文化も参加型文化の一つである。他の参加型文化としては町民や素人の参加を受け入れた祭りの文化がある。こうした仕組みはプロが一対一の稽古に謝金が払えるような素人の弟子に教えていたことと歴史的にもつながっており、これは能の仕舞、謡、囃子などを素人が個別に習う「座敷芸能」の文化に発展していく。

シラネ教授はアマチュアがプロによって稽古、指導される「座敷芸能」の類は俳句のようなその他の伝統文化にも見られ、さらに現代日本にも継承されていると指摘した。例えばアマチュアの著名人たちが詠んだ俳句をプロの先生が評価、添削するテレビ番組などにも形を留めている。また、アマチュアが作品を提出し、プロによって添削が行われるプロセスは、素人が応募するマンガのコンテストにもみとめられる。コンテスト優勝の副賞として、それを主催する出版社の紙面に作品が掲載されることとなる。プロからの指摘に基づいて修正された作品が出版され、場合によってはアマチュアからプロへの転換を実現している。また、株式会社KADOKAWAが運営する「カクヨム」といったWebサイトに素人が投稿するライト・ノベルの分野でも類似の流れが見られる。素人の作家が新人賞を受賞すると、作品は出版前に審査員の協力のもとに書き直されるのだ。
他の参加型文化として、シラネ教授はファン・フィクションについても指摘した。ファンによる有名作品や人気作品の続編や改変である。このパターンは『源氏物語』の時代まで遡ることができる。当時のファンたちは『源氏物語』の本編に不十分だと感じた所に書き足したり、続編を書いたりしたのだ。現在でも同人誌やアマチュアの自費出版といったポップカルチャーの世界に同様の活動が顕著に残されており、既存のゲーム、アニメ、マンガやライト・ノベルの続編などが手がけられている。読み手が続きを作り出す参加型文化は、日本の伝統的な詩歌にも散見される。古い時代に戻れば、「宴会文化」と呼ばれるものの中で和歌は別の和歌の返歌として詠まれ、中世の連歌のごとく、物語、もしくは続編を作るかのようなっていた。同様の事象は語り物や説話などでも読み手・聞き手が作品に加筆していく行為として残されている。

続いてシラネ教授は現代のポップカルチャーに見られるメディア・ミックスという事象に言及した。ライト・ノベルがマンガになったり、その逆になったり、マンガがアニメ化されるなどが頻繁に起こっている。このように大幅に媒介を超越するような動きは近世には存在しない。代わりに異なる媒介ということでは、詩歌と絵画のような異なるメディアの融合があり、詩歌に絵画の形で反応したり、絵画に詩歌の形で反応する、対話関係として融合されていた。俳句絵画とも言うべき俳画は前近代にアマチュアの間で盛んで、その形式は現代でも続けられている。

次にシラネ教授は、参加型文化や「座敷芸能」には様々な形があるということを指摘した。座敷芸能は縦の階級制の中でも起こる可能性があり、そこでは権力を保持している師匠の指示に弟子が従い、作法をきちんと真似なければならないとされた。その一方でより平面的な参加型文化もあり、その中では指導者や先輩の指導を受けながら、参加者たちが中身や方向性を形成していけるようになっている。シラネ教授は現代の例として縦構造(軍隊に近いような)を持つ傾向が強い大学の部活(アメリカンフットボールなど)と、よりくだけた平等で自由な形式のサークルを挙げた。こうした点を切り口に、早稲田大学の国際日本文化論プログラム(Global Studies in Japanese Cultures Program:JCulP)に所属している学生たちを中心に、「参加型文化に関わったことがあるか、あるのならどのようなものか」という質問用紙に回答を記入した。学生たちはグループディスカッションをおこない、代表者の一名がそこでの話し合いの内容を報告した。簡単な報告はやがて会場を巻き込む議論となり、質疑の折には参加型文化に性別が関係するかという質問があった。シラネ教授はこれに対し、『源氏物語』に続編を「加えた」人々の大半は女性であり、文体の真似を試み、作品世界に惹かれていたことと返答した。その一方で、男性、特に男性の学者や詩人といった権威的な古典テキストに興味を持っていた面々は、解説などの類を残していると付け加えられた。
学生たちの経験は様々な縦形式と横形式の存在を示しており、航空部(縦)や下駄を履くダンスサークル(横)といった実例も報告された。本イベントは2時間にわたって行われ、講演、グループディスカッションと質疑応答によって構成された。聴衆からは終始積極的な参加があり、盛況の中、演題にある「参加型文化」が体現されていた。

 

<イベント概要>

開催日時:2018年8月2日(木)14:00-16:00
場所:早稲田大学 国際会議場 第1会議室
演題:”Participatory Culture and Creative Remix: From Traditional Japanese Performance Arts to Contemporary Manga” <参加型文化>と日本−伝統演劇から現代マンガまで−
講演者:ハルオ・シラネ(Professor, Columbia University)
司会: 由尾瞳(早稲田大学文学学術院准教授)

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