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イベント報告-作家多和田葉子さんに徹底質問!

作家多和田葉子さんに徹底質問!

 

2018年7月27日(金)、スーパーグローバル大学創成支援事業 国際日本学拠点では作家の多和田葉子氏をお迎えし「多和田さんに徹底質問!」と題したワークショップを開催しました。コーディネーターおよび司会は文学学術院の松永美穂教授。松永ゼミを履修している早稲田大学の大学院生、および他大学からの参加者が戸山キャンパスの一室に集い、たっぷり3時間をかけて、多和田氏の作品世界や創作の姿勢に迫りました。ルーマニアや韓国からの参加者もおり、多様な視点から意見が交わされる場となりました。

ワークショップは、参加者が事前に用意した多和田氏への質問リストに沿って進められました。多和田氏が回答し、参加者も適宜意見を出すという形で、以下の内容が話題になりました。

◆翻訳について
多和田作品のテクストにおいて、文字(漢字)が作り出す印象は重要な要素のひとつです。アルファベットなど異なる文字体系を持つ言語へ作品が翻訳される際、文字の姿形が消えてしまうことについてどう感じるか、との質問を皮切りに、話が展開して行きました。
例えば『飛魂』では、登場人物の名前が「梨水」「亀鏡」といったように、漢字を独自に組み合わせたものとなっています。作者である多和田氏本人も読み方は決めていないとのこと。それが英訳では中国語読みで表記されるなど、作者にも予測できない作品になることへの関心を語っていただきました。漢字をマンガの絵のように捉えている、との一言も印象的でした。
自身でも翻訳をされる多和田氏に、カフカの『変身』を日本語に訳した際に心掛けたことは? との質問もありました。主人公ザムザが変身する「ウンゲツィーファー」の中に入り込むような感覚で訳したところ、読者からも入り込んで読めたとの声があったそうです。
『変身のためのオピウム』『雪の練習生』など、多和田氏が独→日、あるいは日→独へ自己翻訳をした作品についても言及がありました。さらに、日本語とドイツ語の両方で同時に書かれた『旅をする裸の眼』執筆時には、どうしても思うところへ行かない“苦しさ”があったこと、日本語とドイツ語の間に中間のテクストが生まれたように感じたことを話していただきました。

◆動物について
多和田作品には、動物が多く登場します。作品に動物を登場させる際に、人間を描写する時とは違った描き方を意識しているか、との質問に多和田氏は「動物は人間と違う欲望を持った存在」とした上で、森の中にいる完全他者として動物を捉えている、と話されました。『尼僧とキューピッドの弓』や『変身のためのオピウム』には鳥への変身のモチーフがみられますが、鳥=他者の言葉が分かることには興味と憧れがあるとのこと。人間中心主義のヨーロッパに対し、日本では動物と人間の間に上下の区別がないことにも絡めて、動物観を語っていただきました。

◆詩と小説の違いは?
参加者から質問のあったこの項目に関しては、まず多和田氏から参加者へ、「小さな子供に訊かれたらどのように答えるか?」との問いが投げられました。「小説は“おはなし”であり、内容を提出するもの。詩は“ことばあそび”であり、音が前面に出るもの」「詩は少ない言葉で、凝縮されたもの。小説は流れていくイメージ」「具体的なテクストを読ませ、これが詩、あるいは小説と答える」など、様々に意見が出されました。
多和田氏からは、書く側が区別するというより、商業的、社会的に分かれているという側面が強いとの認識が示されました。言葉以前のイメージを書き記す、という感覚についても話していただき、ジャンルを超えた、言葉に対する多和田氏の姿勢を覗うことができました。

◆執筆環境、本をつくること
創作を学ぶ大学院生からは、執筆環境や、書くために準備することに関しての質問も出されました。執筆の場所や時間帯について、また、内容を決めて書くかどうかなど、丁寧に答えていただきました。さらに校正や装丁のことにも話は及び、テクストが書かれてから本になるまでの過程を知ることのできる、興味深い内容でした。

◆言葉への興味
2018年4月に単行本が出版された『地球にちりばめられて』。これまでの多和田作品にも増して、移民、アイデンティティ、言語などに関する多くの問題意識が盛り込まれた作品です。本作に絡めた質問に答える形で、ヨーロッパでは多言語の問題が小説内にとどまらない日常的な問題であること、また、人称に関することを話していただきました。『地球にちりばめられて』は語り手が章ごとに交代するスタイルで書かれています。ここから、一人称の「わたし」、さらに『容疑者の夜行列車』他で用いられている二人称「あなた」へと話が広がりました。
そして……言葉コレクターである多和田さんの琴線に触れた、街中の「面白い」言葉は? との質問には、「カリカリ梅サンド」「ゆるっと動物」「おでかけpass」など、駅の売店で見かけたという「人の心を操作するような宣伝の文句」が飛び出しました。フィクション性とは言語そのものの問題かもしれない、という見解も示され、常に新鮮でユニークな言葉を追求し続ける多和田氏の姿勢を改めて示す一幕でした。

途中休憩を挟みつつ、3時間はあっという間に終了しました。話しやすい雰囲気の中、参加者の研究内容と関心に即した質問から、議論は多方面に広がり、充実したワークショップとなりました。

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