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開催報告:文学と美術における〈古典〉の変容と生成

シンポジウム「文学と美術における〈古典〉の変容と生成」では〈古典〉の在り方および〈古典〉の継承について文学と美術の側から議論が提供された。〈古典〉に依拠するテクスト、歌、美術作品などを単なる再現あるいは復元としてではなく、新しいものの生成としてとらえることができるのではないかという視野を提示する講演が2本行われた。講演者は日本古典文学・比較文学を専攻とするヴェネツィア・カフォスカリ大学研究員および早稲田大学角田柳作記念国際日本学研究所招聘研究員のエドアルド ジェルリーニ氏と西洋美術史を専攻とする早稲田大学高等研究所講師の桑原夏子氏で、二人による議論が本シンポジウムの見どころとなった。
シンポジウムは12月5日(火)の14:00から早稲田大学文学学術院教授の河野貴美子先生による開会の挨拶から始まり、続いてエドアルド ジェルリーニ氏による「複製された遺産としての和歌」というテーマの講演が行われた。ジェルリーニ氏は本歌取という和歌の技法に注目し、『新古今集』の歌人たちが有名な古歌を取り入れた上で、新しい和歌を創造するプロセスを分析し、日本の中世におけるオリジナルとコピーの問題について論じた。第二の講演は桑原夏子氏による「中世キリスト教美術と「古典」」の講演だった。桑原夏子氏は西洋美術における〈古典〉の意義について定義を行った後、中世イタリア美術にみる〈古典性〉の意味するものについて分析を行った。
2名の講演が終わった後、1時間にわたるパネルディスカッションが行われた。ディスカッションはディスカッサントのフィットレル アーロン氏によるコメントから始まり、講演者のお互いへの質問や意見交換が行われ、その後フロアから多くの質問やコメントが寄せられた。
大きな問題点として浮上したのは、中古・中世における古典的なるものの流動性、現代的なオーサー(作者)の概念の不在、さらに〈古典〉および「古」の「再利用」の問題と前近代におけるオリジナルとコピーの捉え方であった。中世は日本、イタリアともに現代の価値観でコピー、すなわち二次的なものとみなされる産物がオリジナルと同等な価値を持っていたことが明らかとなった。それに続いて、近現代の問題点として、日本と西洋における古典を重視するムーブメントとナショナル・アイデンティティとナショナリズムとのつながりが議論となった。終了後に、本シンポジウムにおいて異なる分野の研究者による学際的かつ国際的な議論の場を提供できたことは非常に刺激的で有意義であったという評価を得られた。文学を専門とする来場者からは、普段西洋美術の話が聞けないので、こうした機会があり非常に有益であったという感想が多く聞かれた。イタリア美術と日本古典文学は一見して、つながりがないように見えるが、フロアからの質問やコメントは両方の講演の内容に通じるような文脈を持っており、日本古典文学の固有な問題かと思えるものも、イタリア美術の問題意識につながり、またイタリア美術で議論されている問題点が日本古典文学にも共有できるものだった。
登壇者とフロアとの議論を通じて、〈古典〉の問題を捉える際に、文学あるいはテクストのみならず、美術、演芸、音楽も視野に入れるとより活発で多角的な問題提起につながるという結論にいたった。このように研究の継続と将来の研究への前向きな展望が示された。
14時00分から始まったイベントは、興味深い発表とコメントで16時30分まで続いた。登壇者を含む参加者は26名で、文学と美術の専門家が集まった。盛況のうちに終了することができ、〈古典〉に関する国際的かつ学際的な研究の発展につながったのではないかと思われる。

開催概要

日 時:  2023年12月5日(火)14:00~16:30

会 場:  対面のみ

会 場:  早稲田大学早稲田キャンパス26号館302号室

言 語:  日本語

講演者:  エドアルド ジェルリーニ(ヴェネツィア・カフォスカリ大学研究員、早稲田大学角田柳作記念国際日本学研究所)、桑原夏子(早稲田大学高等研究所 講師)

ディスカッサント:  フィットレル アーロン(早稲田大学高等研究所 講師)

挨拶:  河野貴美子(早稲田大学文学学術院 教授)

司会:  アンダソヴァ マラル(早稲田大学高等研究所 講師)

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