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開催報告:国際シンポジウム「物語を拓こう、心を語ろう」

シンポジウムに先だち、本学放送研究会が事前に撮影した館内ツアーを放映し、実際現場に来られない視聴者に国際文学館を紹介した。総合司会は当館助教の権慧氏が務め、当館助手のエリックシリックス氏が技術補佐を務めた。

第一部では「物語と心――ストーリーが生まれ、人々に届くことをめぐる二つの語り合い」をテーマに作家の小川洋子氏と本館顧問のキャンベル氏が対談を行なった。

まず小川氏は国際文学館への印象を「村上春樹氏のデビュー作の『風の歌を聴け』でいうと、風のよどむ場所がなく、ときどき自分が何階にいるかわからなくなる」と語り、キャンベル氏が4階にある自身の研究室を案内した時の小川氏の感想――演博の横は墓地で、そのとなりに民家、死者と生者が同じ窓から見えて、文学をするのによいところ――を紹介した。

キャンベル氏は「小川さんの物語を読んで、通底しているものを考えると、人々の中にあって、当たり前のことが奪われていく、その奪われていくことに対して人はどのようにバランスをとろうとするのか」ということではないか?と問い、小川氏の『人質の朗読会』のエッセンスを伝え、一部を朗読した。

小川氏は「抵抗しない人の強さ、現実を受け入れる強さを私は書きたい」と語り、キャンベル氏は自身の専門である近世文学に引きつけながら、「日本で暮らす人の中で普遍的に共有されている感じ方があるように思う。一つは、備えていれば不幸とは防げるかもしれない、そしてもう一つは、不幸の先に喜びがある、というのが仏教・儒教の中で経験として、共有される世界。<幸福>を大きな声で言ったりしない。<苦・楽>が一つの言葉につながっている、苦と楽はめぐりくるもの。不幸をやり過ごすことが幸福である、ということが基層にある」と語り、最後は『密やかな結晶』を小川氏が日本語原文で、キャンベル氏がスティーブン・スナイダー英訳で朗読した。

第二部、「越境する文学――創作と翻訳」では、まず由尾瞳氏が「日本文学の海外での翻訳と受容」をテーマに、英語圏における日本の女性作家や翻訳家の活躍に焦点をあてた発表を行った。日本文学者としては谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫といった「ビッグ・スリー」をはじめ、安部公房、遠藤周作、大江健三郎といった「ザ・ネクスト・ビッグ・スリー」など、主に男性作家の作品が英語圏で翻訳されたことに対して、1990年代から川上未映子、多和田葉子、小川洋子をはじめとした女性作家もどんどん英語圏文学市場に登場したという。この現象とともに注目に値するのは女性翻訳家たちの登場であることも指摘されている。榊原理智氏は授業で学生と一緒に李琴峰氏の小説『彼岸花が咲く島』を読んだ際、物語のユートピア的な冒頭とディストピア的な設定の対比などが議論されたことを紹介し、学生から続編のリクエストがあったことを伝え、報告をしめくくった。李琴峰氏は自作の執筆と自作を訳す作業について紹介し、「自分の作品だからこそ、仕掛けや細かいところまでわかっていて、“直す”権限がある」と述べた。さらに、『独り舞』は日中両言語で異なる部分があるといい、日中両言語で『独り舞』の一部を朗読した。三人の報告後には、李氏の作品を中心に、二言語による創作、創作とジェンダーの問題、越境する文学などについて議論を行なった。

なお、本シンポジウムは「物語を拓こう、心を語ろう」というタイトルのもとに、現在活躍する作家をゲストに迎え、研究者3名の研究・教育成果との接点を探る研究イベントとして、国際文学館から本学放送研究会の協力のもとライブ配信を行い、190名前後の視聴者を得た。また視聴者からは多くの質問が寄せられ、現代日本文学や越境しつづけている文学に対する関心の高さを伺うことができた。今後はこのイベントのアーカイブ化を行うとともに、ウェブサイトにてさらに多くの視聴者に届ける予定である。

開催概要

日時:2021年11月20日(日曜日)14:00〜17:15
場所:早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)オーディオルーム
主催:早稲田大学国際文学館
共催:スーパーグローバル大学創成支援事業 早稲田大学国際日本学拠点
協力:柳井イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクト

構成:

1. 開会の辞(14:00〜14:05)十重田裕一 早稲田大学国際文学館館長・文学学術院教授

2. 国際文学館館内オンラインツアー(14:05〜14:15)

3. 第一部 対談 「物語と心――ストーリーが生まれ、人々に届くことをめぐる二つの語り合い」(14:15〜15:25)

小川洋子 作家
ロバート キャンベル 国際文学館顧問・早稲田大学特命教授
Q&A:栗原悠 早稲田大学国際文学館助教

4. 第二部 鼎談 「越境する文学――創作と翻訳」(15:40〜17:10)

李琴峰 作家
由尾瞳 早稲田大学文学学術院准教授
榊原理智 早稲田大学国際文学館副館長・国際学術院教授
Q&A:山嵜早苗 柳井イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクト担当職員

5. 閉会の辞 (17:10〜17:15) ロバート  キャンベル

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