2020年1月10日、早稲田大学SGU実証政治経済学拠点にて、Eko Riyanto南洋理工大学准教授の研究発表が行われました。Eko Riyanto准教授は実験経済学で多くの論文を国際専門雑誌に発表している気鋭の経済学者です。そのため、本校に在籍する実験経済学を専門とする教員および学生をはじめ、学外からの参加者もありました。
発表のタイトルは、“Incentivizing Deceased Organ Donation Under Blood-Type Compatibility Constraints: Theory and Experiment”で、臓器移植の提供におけるドナーのインセンティブについて、理論と実験の両側面から検証した、社会に直接応用可能な成果の発表でした。
臓器移植における問題の一つとして、血液の適合問題があります。すなわち、臓器移植を受ける患者と提供者の血液が適合しなければ、移植を行うことができないという問題です。Eko Riyanto准教授の発表では、この制約下でどのような移植ルールが、ドナーの臓器提供のインセンティブを上昇させるか、また社会的に効率的かの検証結果の報告がされました。
結論として、あらゆる血液型に適合するO型のドナーの臓器を優先的に用いる政策は、O型のドナーの臓器提供のインセンティブを低めることが示されました。また、A型、B型、AB型などの適合性の低い血液型のドナーの臓器を最初に用いた後に、適合性の高いO型のドナーの臓器を用いる方が、社会的効率性も高くなることが報告されました。さらに、同じ血液型同士の臓器提供のみを許す政策が、最も社会的効率性が高くなることが報告されました。