SGU国際日本学拠点 Sarah Olive (ヨーク大学)講師講演会
“Shakespeare and Citizenship Education in Japanese Higher Education”
開催日時:2018年1月10日(水)17:00-18:30
場所:早稲田大学戸山キャンパス33号館16階第10会議室
演題:Shakespeare and Citizenship Education in Japanese Higher Education
プログラム:
講演者 Sarah Elizabeth Olive (Senior Lecturer, Department of Education, University of York, UK)
コメンテーター 冬木ひろみ(早稲田大学文学学術院教授)
司会 & オーガナイザー 梅宮悠(早稲田大学文学学術院助教)
SGU国際日本学拠点では、去る1月10日、早稲田大学戸山キャンパスにヨーク大学のサラ・オリーヴ先生をお招きし、“Shakespeare and Citizenship Education in Japanese Higher Education”と題した講演会を開催した。本講演は古くから大学の教育現場において聞かれることの多い命題を多角的に検討したものであった。具体的には「日本の大学教育においてシェイクスピアがどのような効果をもたらすか」という問いを複数の実践報告を元に考察した。British Shakespeare Associationから刊行されているTeaching Shakespeareの日本特集号となった第6号に寄稿した教員たちの授業内容が紹介され、その内容は歴史的コンテクストにおいて作品を読むものから、猥雑な描写を敬遠しつつ、シェイクスピアを「きれいな」ものとして紹介しがちな日本の傾向も伺えた。また、授業への学生の取り組みにも一つの特徴が見られ、日本の傍観型(挙手などでの発言はしないもの)授業への教員の苦心も垣間見えた。これ以外にも、シェイクスピアを読み物ではなく目撃されるものとして、舞台上に具現化する上での重要事項や難点を考え、あくまで観客との相互関係の中に成り立つシェイクスピアを目指した授業も報告され、日本でも様々な試みが行われている実情が明らかとなった。
シェイクスピアを紹介、あるいは高等教育における教養の一つとしてのアプローチが多い中、Olive先生は400年以上前に生み出された良人も悪漢も人間の一例として捉えることを推奨し、様々なキャラクターを体感することによって、現代社会の市民としての理想像が見えると結論づけた。
Olive先生のお話に続き、冬木先生の方から現在も開講中のシェイクスピア関連授業が紹介された。演習科目は少人数での精読を主とし、複数出版されている版本比較し、それぞれの違いを意識した上で、独自の和訳を作成するものだった。それに対して大教室で行われる講義は映像なども活用しながら、初学者に向けてのシェイクスピア概論が網羅的に教授されているようだった。特にボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の被害者となった若き恋人を「サラエボのロミオとジュリエット」と呼び、現実世界と戯曲世界を重ね合わせる実例の提示などは、まさしくOlive先生の模範的市民を知る行為に関連しているように思われた。
お二人の講話後の質疑応答では、学部生からの質問もあり、盛況のうちに講演会は終了した。