2023年1月28日(土)15:00-17:00作家の藤野可織さんを招いてシンポジウムを行なった。『ドレス』、『ピエタとトランジ』、『青木きららのちょっとした冒険』など近年の作品についてお話しをうかがった。藤野可織さんは、2006年に「いやしい鳥」で第103回文學界新人賞受賞、2013年に「爪と目」で第149回芥川龍之介賞を受賞した。その他、『おはなしして子ちゃん』、『ファイナルガール』、『来世の記憶』などの著作がある。藤野さんの小説についてお話をうかがい、フェミニズムやシスターフッドの未来についてなど、幅広く講演をしていただいた。その後、早稲田大学文学学術院の岩川ありさ准教授と文学研究科現代文芸コース修士課程の磯﨑美聡さんが加わり鼎談となった。文学学術院の松永美穂教授から開会の挨拶をいただいた。
講演では、まず、デビュー作「いやしい鳥」についてお話をうかがった。藤野さんの小説を研究している磯﨑さんから、「いやしい鳥」などの初期の作品に萌芽はあったものの、近年、SFの要素が強まっているのではないかとの問いかけがあった。藤野さんからは女性の置かれている立場や生殖という視点から、現在の現実を描くとSF的な世界になるのではないかとの応答があった。次に芥川賞を受賞した「爪と目」(2013)を中心に、語りをめぐる問題についてお話をうかがった。人称の設定や情報をどういう順序で提示するかなど、幅広く語りについてお話しいただいた。二人称代名詞の「あなた」で語りはじめられる「爪と目」が、二人称の小説ではなくて、「あなた」に重きを置いた一人称だという言葉が印象に残った。
続いて、『ファイナルガール』など「恐ろしいこと」について描かれた小説についてお話をうかがった。また、それとつながるかたちで、映画『ヒッチャー』など藤野さんが触れてきたホラー映画についても話がおよんだ。磯﨑さんから、『ピエタとトランジ』など、女性たちのバディや「シスターフッド」についての話題が出た。また、岩川から、『青木きららのちょっとした冒険』の「積み重なる密室」という小説について質問した。「積み重なる密室」は、ある映画をつくるにあたり、語り手の「私」が原作者のミステリー作家に会いにゆくという設定の小説である。その語り手の私は、昔、男子生徒に与えられる制服を着ており、生まれた時につけられた名前で生きていた。
会場(対面、zoom双方)の質疑応答では、具体的な作品(「アイデンティティ」、「胡蝶蘭」、「おはなしして子ちゃん」)についてなど闊達な質問が出て、盛会となった。
イベント概要
- 日時:2023年1月28日(土)15:00-17:00 (JST)
- 開催方式:対面・Zoom Webinar併用
- 定員:対面100名程度
オンライン200名程度(双方ともお申し込み不要) - 会場:早稲田大学3号館 305教室
- 参加:学生、教員、一般
- 参加費:無料
- 主催:早稲田大学 文化構想学部 文芸・ジャーナリズム論系
早稲田大学大学院 文学研究科 現代文芸コース - 共催:スーパーグローバル大学創成支援事業 早稲田大学国際日本学拠点
早稲田大学国際文学館