早稲田大学の機械系分野と情報系分野の連携は、1973年に故加藤一郎教授(当時の機械工学科)と白井克彦元総長(当時の電気工学科)らが協働で開発した世界初のヒューマノイドロボットWABOT‐1 が始まりと言えます。機械系のメカニズムと制御システム、情報系の会話システムと視覚システムが組み合わさり、ヒューマノイドロボットが誕生しました。1984年には鍵盤楽器演奏ロボットWABOT‐2 を、1997年には人間協調ロボットHadaly‐2 を世に送り出しました。いずれも機械系の研究室と情報系の研究室が一つの実験室に集まり開発に成功したロボットであり、分野を越えた、そして学科や研究室の壁を越えた連携の強さを示しました。その後、機械系・情報系ともCOEとGCOE(機械系:グローバル・ロボット・アカデミア、情報系:アンビエントSoC)に採択され、それぞれが国際的な拠点を形成してきました。そして2013年、それらの融合をベースにした5年一貫制の「実体情報学博士プログラム」が「博士課程教育リーディングプログラム」に採択され、これまでの研究での連携を教育に拡大し、次世代の機械・情報系融合であるICT・ロボット拠点形成のための基盤作りを進めています。
最先端のシステムであるロボット、自動車、医療機器には、材料、メカニズム、センサ、ヒューマンインタフェース、ネットワーク、コンピュータなど、機械工学、情報・通信工学のあらゆる技術が投入されています。これらの幅広い最新の技術を全て理解することは容易ではありませんが、最も重要なことは、これら学問分野それぞれが持つ強みを理解し活かすことです。機械工学は、人と空間を共有でき、相互作用による実在の効果を示すことができます。情報・通信工学は、正確かつ超高速な計算とネットワークを介した大量の部品・データの迅速なハンドリングによるアイデア・知識の資源共有の効果をもたらします。専門分野に留まることなく広範な領域において最先端の技術および問題への対処方法を理解するとともに、新たな課題設定とその解決パラダイムとして昇華させる能力を養うために、本拠点では次の3つの取り組みを実行しています。①分野横断的な先端技術を修得し、問題解決パラダイムやイノベーション創出に近づける教育科目の設置②異分野交流による刺激を受けるための共用研究教育スペース(工房)の設置③異文化を理解し視野を拡大するための長期海外研修・インターンシップなど国際的な交流プログラムの展開。 こうした分野の枠を越えて融合する〝仲間〞の輪を、早稲田から世界へ拡大することで、国内外の産業界で活躍するリーダーを育て、送り出していきます。