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日本社会における外国人に対する意識や政治意識の変化を分析

―4年ごとの調査(2025年)から見えた日本社会の変化―

<発表のポイント>

  •  2009年から4年ごとに実施している、日本社会における外国人に対する意識や政治意識についての調査結果(2025年)を公表しました
  • 外国人の増加による「治安悪化」への懸念は、2021年以降大きく上昇し、2025年調査では73%に達しました
  • 外国人の増加に対する意識は、外国人の出身国・地域によって評価が大きく分かれる傾向が確認されました
  • 右寄りとされる政党・政治家に対して、相対的に若年層からの好感度が高い傾向がみられました

早稲田大学文学学術院田辺俊介教授らの研究グループは、2009年から4年ごとに実施している「国際化と市民の政治参加に関する世論調査」の最新結果(2025年調査)を公表しました(回答者総数3,009名、回収率34.5%)。

分析の結果、外国人の増加が「治安・秩序が乱れる」とする懸念は、直近の2021年調査・2024年調査と比べて強まっており、2025年調査では、73%が懸念を示す結果となりました。また、SNSなどのデジタルメディアを日常的に利用する層ほど、この傾向が強く見られました。

一方で、日本に住む外国人の増加に対する評価は、想定される出身国・地域によって賛否が大きく異なりました。例えば、中国人の増加に賛成と回答する割合は、2009年調査の31%から、2025年調査では10%未満にまで低下しています。

さらに、政党・政治家などに対する好感度については、いわゆる右寄りとされる政党・政治家に関して、若年層で好感度が高いという傾向がみられました。例えば、30代以下では約8割(79%)が高市首相を「好き」と回答しています。

情報取得の手段については、政治や社会の問題に関する情報を得る際に利用頻度が高かったのは「テレビ(報道・ニュース)」や「インターネットニュース」であり、それぞれ57.1%、46.2%が「よく使う」と回答しました。一方で、SNSや動画共有サイトの利用はそれほど多くないものの、若年層ほど利用率が高く、34歳以下では55%がSNSを「よく使う」と答えています。

(図1)「治安・秩序が乱れる」ことへの懸念(調査年別)*2024年調査はネット調査のため、参考値

(1)調査の概要

早稲田大学の田辺俊介教授を研究代表とする研究プロジェクトでは、2009年より4年ごとに「国際化と市民の政治参加に関する世論調査」(Public Opinion Poll on Internationalization and Citizens’ Political Participation、略称「POPIP」)を実施しています。本調査は、日本社会のグローバル化や政治状況に対する人々の意識の現状を把握するとともに、その変化を継続的に調査し、学術的に探索することを目的としています。

今回、第5回目となる2025年調査を2025年11月から12月にかけて実施しました。日本全国の有権者(調査時点において18歳から79歳)を対象とし、合計45の市・区・町の選挙人名簿から無作為に抽出した合計9,000名に調査票を送付した結果、3,009名から回答を得ました(転居先不明の方など調査不能を除いた回収率は34.5%)。

回答者の属性は、男性は47.9%、女性51.6%と女性の比率が若干高く、平均年齢は55.6歳でした。年齢構成は18-34歳が12.5%、35-49歳が19.0%、50-64歳の方が33.6%、65歳以上が34.9%となっています。

(2)本調査で明らかになったこと

本調査の分析から、日本社会における人びとのナショナリズムや外国人に対する意識、政治意識の実態について、主に以下の点が明らかになりました。

1.外国人の増加による「治安悪化」の懸念の変化

本プロジェクトでは、日本に住む外国人の増加が社会にどのような影響をもたらすと考えられているか、継続的に調査しています。図1は、「日本社会の治安・秩序が乱れる」という認識について、2009年以降の回答推移を示したものです。

2009年調査以降、治安の悪化に対する懸念は徐々に低下する傾向が見られましたが、今回の2025年調査では、「そう思う」と「ややそう思う」を合わせて73%に達しました。なお、インターネット調査として実施した2024年調査(参考値)と比較すると、2025年調査では同割合が約20ポイント以上増加していました。

また、政治・社会問題に関する情報の入手先(メディア接触)と「治安・秩序が乱れること」への懸念との関係を分析した結果、政治・社会問題の情報を得る際にSNSをよく利用する層では、「そう思う」「ややそう思う」を合わせて84%に上った一方で、SNSをほとんど利用しない層での同割合は67%にとどまりました。SNS利用頻度と懸念の程度との間には、一定の関連がみられました。

(図2) メディア接触と「治安・秩序が乱れる」ことへの懸念

2.外国人の増加に対する意識: 出身国・地域により態度が異なる

日本に住む外国人の増加に対する賛否を尋ねたところ、想定される出身国・地域によって大きな違いが見られました(図3)。

たとえば、アメリカ出身の外国人の増加については、55%が「賛成」「やや賛成」と回答している一方で、中国出身の外国人の増加に賛成する割合は10%未満にとどまりました。全体として「賛成」と回答する人は少なく、最も好意的に見られているアメリカ出身者であっても、「賛成」と回答した人は6%弱にとどまっています。

また、中国出身者の増加に対する賛否の推移を示したものが図4です。2009年の時点では31%が「賛成」もしくは「やや賛成」と回答していましたが、2025年調査ではその割合が10%未満にまで低下しており、長期的に見て変化が生じていることが確認されました。

(図3) 出身国・地域別外国人の増加に対する意識

(図4) 中国人の増加に対する意識(調査年別)

 3.若年層における特定の政党・政治家への好感度の傾向

特定の政党や政治家などに対する好感度を「もっとも好き+3」から「もっとも嫌い-3」までの7段階で尋ね、これを「好き(+)」、「中間(0)」、「嫌い(-)」の3つに区分したうえで年代別に分析しました。図5はその一部を示したものです。

分析の結果、参政党やトランプ大統領など一般に右寄りとされる政党・政治家について、30代以下の若年層において好感度が高く、60代以上では好感度が低い傾向が見られました。

また、高市首相については、どの年代でも「好き」と回答する割合が過半数を占めていましたが、特に若年層においてその割合が高い傾向が確認されました。

(図5)政党・政治家・市民団体の好感度(年齢層別)

4.政治・社会問題に関する情報の入手先

政治や社会問題に関する情報の入手手段について、利用するメディアを尋ねました(図6)。

その結果、「テレビ(報道・ニュース)」や「インターネットニュース」の利用頻度が高く、それぞれ57.1%、46.2%が「よく使う」と回答しました。

一方で、「SNS」や「動画共有サービス」を「よく使う」と回答した割合はそれぞれ21.4%、22.5%にとどまり、これらの媒体は政治・社会問題に関する情報源としては限定的な使用にとどまっている傾向がみられました。

ただし、年代別に見ると、若年層ほどSNSの利用頻度が高い傾向がみられ、特に34歳以下では55%がSNSを「よく使う」と回答しており、年代による差が顕著に表れています(図7)。

(図6)政治・社会問題の情報を入手する際のメディアの利用頻度

(図7)政治・社会問題の情報を入手する際のメディアの利用頻度

(3)研究の波及効果や社会的影響

本調査の結果から、「排外主義が高まったことで右派政党が伸張した」のではなく、むしろ選挙の争点とされたこと自体が排外主義を高めた、と考えられます。すなわち、外国人に対する否定的な意識が政治的支持を直接的に生み出すというよりも、選挙などを通じて関連するテーマが注目されること自体が、人々の意識の変化に影響を与えている可能性が示されています。

本研究は、2009年から4年ごとに実施している継続的な社会調査データに基づく議論を行うことで、通俗的で印象論に偏りがちな議論とは異なる、データに基づく実証的議論が提供可能です。

また、昨今混迷の度を高める政治情勢に対し、過去との比較の視点も含めた世論の動向を提示することで、結果的に一時的な社会的風潮や感情的議論に対する一定の歯止めとなることを期待しています。

(4)課題、今後の展望

本研究のような継続調査は「4年ごとに」など着実に実施することが重要ですが、その継続可能性は時限的研究費(例えば科学研究費補助金など)を獲得できるか否かに依存しています。昨今、そのような研究費への政治的介入が世界的に危惧される状況となっており、その意味でも社会的理解とが必要と考えています。また社会調査への協力率の低下などの現象も見られるため、回収率改善のための方法論的検討などがより必要になっています。そのためにも、本プレスリリースなどのような形で社会的還元を行うことで、研究の必要性と重要性について、社会的な認知と理解を広げていくことが、以上の課題解決の一手段であるとも考えています。

(5)研究者コメント

2025年の参院選の前後で、「外国人問題」という言葉が急に日本社会で広まりました。しかし本当の問題は、外国人の語り方が(特にネット上で)大きく変化し、外国人が「問題」として扱われるようになったこと自体だと考えられます。定点観察としての社会調査を通じ、そのような様々な社会的な変化が、世論にどのような影響を与えるのかを検証し、さらにその世論変動のメカニズムを明らかにする。そのような研究は、SNS等を通じて多様な情報が拡散されている現状を考えれば、社会的に喫緊の問題対処にも必要な研究と考えております。

(6)キーワード

排外主義、右派政党、SNS、利用メディア

 (7)研究助成(外部資金による助成を受けた研究実施の場合)

研究費名:基盤研究(A)  22H00074
研究課題名:移民急増社会におけるナショナリズムの変容要因の解明:時点間と国際比較による実証
研究代表者名(所属機関名):田辺俊介(早稲田大学)

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