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量子コンピューターによるロボットの姿勢制御手法を開発

量子コンピューターによるロボットの姿勢制御手法を開発
芝浦工大・早大・富士通、量子技術でロボットの姿勢制御を高精度化

ポイント

  • ロボットの関節の動きを量子ビットで表現し、量子回路を使って順運動学を計算
  • 量子もつれの導入で関節間の連動性を再現し、計算速度と精度を向上
  • 富士通の量子シミュレーターでの検証で、従来手法よりも高い精度と実用性を確認。また64量子ビットの超伝導量子コンピューター(以下、64量子ビットの実機)でも量子もつれ導入の効果を確認

概要

芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田 純)システム理工学部の大谷 拓也准教授(人間ロボットシステム研究室)、早稲田大学(東京都新宿区/総長 田中 愛治)理工学術院の高西淳夫教授と富士通株式会社(神奈川県川崎市/代表取締役社長 時田 隆仁)は、量子コンピューターを活用してロボットの姿勢を効率的に制御する新手法を開発しました。  
 具体的には、複数の関節を持つロボットの「逆運動学計算」(目標位置に到達するための関節角度の計算)を、量子技術を活用して効率的かつ高精度に解くことに成功しました。理化学研究所と富士通が共同開発した64量子ビットの実機検証で、その有効性を確認しました。
ロボットの各部(リンク)の向きや位置を量子ビットで表現し、親関節の動きが子関節に影響する構造を量子もつれで再現することで、従来の古典的手法と比べて必要な計算回数を大幅に削減できました。量子コンピューターの実用化が進めば、リアルタイム制御や複雑な動作が求められる次世代ロボット開発への貢献が期待できます。

複雑化するロボットの姿勢計算、量子技術で突破口

ロボットの姿勢制御では、目標とする手先の位置から関節の角度を求める「逆運動学計算」が重要になります。特に、複数の関節を持つロボットでは関節の組み合わせが膨大となり、目標位置との誤差を最小化するために反復計算が必要になります。その結果、計算負荷が高くなり、人体の関節数と同じ17個の関節を有する全身多関節のモデルの場合は、解空間が膨大なため解けず、近似した7個の関節で運動計算を行うのが一般的でしたが、動きの滑らかさに限界がありました。
本研究では、こうした課題に対して、量子コンピューターの特性を活かした新しい手法を提案しました。ロボットの各部品(リンク)の向きや位置を量子ビットで表現し、量子回路を用いて順運動学計算(関節角度から手先位置を求める計算)を実行しています。逆運動学計算は古典的なコンピューターで行い、量子と古典のハイブリッド手法によって、効率的な姿勢制御を実現しました。

量子もつれの導入で、収束速度と精度が向上

さらに、量子もつれを導入することで、親関節の動きが子関節に自然に影響を与える構造を量子回路上で再現しました。これにより、逆運動学計算の収束速度と精度が大幅に向上しました。富士通の量子シミュレーターを用いた検証では、従来手法と比較して、少ない計算回数でも最大43%の誤差低減を達成しました。さらに、64量子ビットの実機を用いた実験においても、量子もつれ導入による効果を確認しています。また、ロボットなどの17個の関節を持つ全身多関節モデルの運動計算を、30分程度で実行できるという試算が得られました。

ヒューマノイドや多関節ロボットへの応用に期待

この手法は、少数の量子ビットで多関節ロボットの姿勢を表現できるため、現在の開発段階の量子コンピューター(NISQ)環境でも実装可能です。将来的には、ヒューマノイドロボットや多関節マニピュレータのリアルタイム制御、障害物回避、エネルギー最適化などへの応用が期待できます。また、量子フーリエ変換などの高度な量子アルゴリズムとの組み合わせにより、さらなる性能向上も見込めます。

論文情報

雑誌名:Scientific Reports
論文名:Quantum Computation For Robot Posture Optimization
執筆者名(所属機関名):大谷 拓也(芝浦工業大学 システム理工学部)、高西 淳夫(早稲田大学 創造理工学部)、原 伸之(富士通株式会社)、瀧田 裕(同)、木村 浩一(同)
掲載日時(日本時間):2025年8月8日
掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41598-025-12109-0
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-025-12109-0

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