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SCSインタビュー企画 いきさつ Vol.3

-将来やりたいこと・ビジョンはどうやったら見つかるのか-

この問いに対するヒントを見つけていくSCSのインタビュー企画「いきさつ」。
「利他的」かつ「長期的」なビジョンを持ち、すでに活動している現役早稲田生の人生を振り返り、ビジョンを見つけるためのヒントやマネできるポイントを掘り出していきます。

第3回のインタビューイはプログラミングコミュニティ「GeekSalon」を立ち上げた土屋翼さん(基幹理工学研究科修士2年 ※取材当時)。元々プログラミングが好きだった訳でもなく、大学3年まではサークル・飲み会等に打ち込み何も考えていなかったそう。そんな土屋さんがいかにして新たな挑戦に舵を切りビジョンを見出してきたのか、そのいきさつをお楽しみください!

※記事の内容及びプロフィールは取材当時(2019年2月)のものです。

インタビューイ紹介

土屋翼さん(基幹理工学研究科修士2年)

千葉県の県立高校を卒業後、「国立大ではなく早稲田に行きたい」と思い早稲田大学基幹理工学部に入学。機械科学・航空学科を卒業後、同大学院基幹理工学研究科機械科学専攻に進学。大学院在学中に知人と3人で大学生限定のプログラミングコミュニティ「GeekSalon」を立ち上げ、2年間で1000名のコミュニティに成長させる。Technology x Community に可能性を感じ、2019年4月よりPeopleTech事業を展開する株式会社アトラエに入社。

本記事の流れ
・「働く」ことに抱いている疑問
・「大学生ライフ」をとことん楽しんだ3年間
・死に物狂いで取り組んだGeekSalon
・欲求や心に素直になる
・最後に

【「働く」ことに抱いている疑問】

―まず持っているビジョンを教えてください。

日本の中で「イキイキと働く人が1人でも増えてほしい」っていうのが今のビジョンです。将来像は日に日に変わるタイプですが。

それをやりたいと気づいたのはいつ頃ですか?

明確にこの思いに気づいたのは最近です。ちっちゃい頃から疑問には思っていました。僕の両親は公務員、姉も公務員で土日に家族と楽しむために平日は我慢して仕事に行って頑張るんだっていう雰囲気がありました。僕自身は愛してもらったし、休日に旅行にも行かせてもらえたし超ハッピーだった。

家族は大好きですしとても素敵だなと思ったんですけが、その反面、もっと平日も楽しくていいのになぁと考えていたんです。1週間の7日のうち2/7は楽しくて、5/7はあまり楽しくないという風に分かれているような気がしていて「7/7楽しければ一番ええやん」とそういうことを思っていました。巷でも仕事は我慢して頑張るものだという空気もあり、何だかなぁと感じていました。

特に公務員はその傾向が顕著な気がします。

もちろん「国のため」にと使命をもって働かれている魅力的な方もたくさんいるのですが、嫌々やっている人も多いというのを大人になるにつれ気付きました。

みたいな偉そうなことを言っていますが、自分は大学3年まで本当に飲み会しかしていなかったので(笑)。大学生活の前半は何となく過ごしていました。働くことに対する課題感も何となくしか思っていませんでしたし、何をしていいかも全く分かりませんでした。

【「大学生ライフ」をとことん楽しんだ3年間】

サークルは楽しいし、授業のレポートはぎりぎり提出してという感じでホントに何も考えてなかったですね。今が楽しければいいやと思って、飲み会ばかりしていました。そう思うと大学生活を通して僕は一番意識低いところから意識高いところまで網羅した気がします。経験の幅に関しては割と自信あるかもしれません。友達の幅も広いですし。

-どんな人ともフランクに付き合えるのはすごい能力だと思います。

そうですね、GeekSalonではそれが自分の仕事みたいなところもあります。毎月何十人も入会してきてくれていて、いろんな人に満足してもらわなきゃいけない。一人一人に合うコミュニケーションを考えて実行しないと満足感に繋がりませんし、GeekSalon自体が愛されずファンになってもらえないので。立ち上げ当初は1人で30人くらいの受講生を見ていたと思います。

-何も考えていない状態から、もやもやしていた課題感を明確にしていくに当たり何か転換点があったのでしょうか?

その話をすると3年生の終わり頃に戻ります。サークルは3年生の秋に終わり引退して「やることねえな」と暇になりました。何となくレストランでバイトしているけれど「やることないなぁ、暇だな」みたいな状態はずっと続いていました。進路に関しても大学院進学がちらつき始めていた時期だったんですけど、「まあ推薦で行けばいいか」と完全に思考停止状態でした。

―大学院進学の推薦はもらえるレベルだったのですね。

成績は中の上くらいでした。要領は良い方だったと思うので、テスト前にがーっと詰め込んで乗り切っていました。それで大学院に行けるし、あと二年くらい遊ぼうみたいなテンションで3年生の終わりまではいました。

でも「大学院に行ってもつまんなそうだな、研究室とか楽しいのかな」と思い、一度就活を覗いてみました。おそらく大学院に行くことになるだろうけど就活の経験は今しかできないし、社会人もフラットに話をしてくれる機会は無いんだろうと思い2社だけ選考を受けたんですね。ちなみに絶対受かると思っていました(笑)。

―そんな風に思っていたのですか!?

今では恥ずかしいですが、俺は天才だみたいな感じでしたね(笑)。本気でやれば別に負けねえと思っていましたし、これまで挫折を味わったことがありませんでした。高校では野球部だったんですがそれなりに努力してレギュラーになり、キャーキャー言われて満足。大学受検も部活を引退してから半年でワーッと勉強して第一志望の早稲田に合格しました。割とサクセスサクセスで歩んできて、今後もこういう人生かと思っていました。(笑)

だから選考も落ちると思っていなかったのですが、あっけなく落ちたんですよ。人生初めての大きな挫折でした。何しろ就活で話すネタがないんですよ。定番の「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)を聞かれ、サークルの事を話すにしても大したことをしていなくて絞り出したようなものしか話せませんでした。俺は今まで何をやってたんだってその時に雷が落ちた気持ちでした。

―うまくいかなかったという事実に直面したんですね。

そうです、まさに。過去に上手くいかなかった経験があまりなかったので「やばいぞ」と思いました。逃げるようではありましたが、大学院に行くということは決めていたので、どう残りの3年を過ごすか考えました。今思ってもやはり雷が落ちたみたいな体験でした。とても悔しかったし、このままじゃだめだという大きな焦りを感じていました。

―大学院進学は逃げるようにという意識だったんですか?

そうですね。研究がめちゃくちゃ好きというわけじゃないですし、広い意味での修行を積まなきゃいけない。就活を続けても多分妥協した選択肢で就職先を選ぶことになり、ちょっとモラトリアムを持とうという思いで大学院に行きました。

「やばい」と思ってから就活イベントに顔を出したり、長期インターンを始めました。何をしたら良いか分からなかったので、長期インターンをリクルーターに紹介してもらいました。意識高そうなイベントに顔を出している内に、GeekSalonに4年生の秋に出会いそれ以来GeekSalonに心酔しています。

―悔しさや焦りの源は、理想の自分とのギャップだったんですか?

そうですね。結構理想が高いというか。こうありたいというイメージが割と高かったんだと思います。だからこそ「何とかしないと」という風に思いました。

―ぼんやりとでも理想があるからこそ、悔しさや焦りが生まれたんでしょうね。

【死に物狂いで取り組んだGeekSalon】

―漠然と持っていた「幸せに働けたらいいのに」という気持ちに気付けたのはどのタイミングだったのですか?

GeekSalonでの経験がとても大きなきっかけでした。4年生の終わりに加入し、M1の一年間は立ち上げ期で、その期間を一言で表現すると“超カオス”でした(笑)。当時3人で活動していたんですが1か月に5・6回ぐらい体験会をやっていたんですよ。メンターが2人しかいないのに受講の募集を掛けると50人来てしまったり、会場を用意していない状態で40人も来たみたいになったりと想定外のことだらけで、その場で何とかする力や胆力が付きました(笑)。

思い出深いのはカリキュラムの最後に行われる最終発表会ですね。受講生の発表が終わった後打ち上げに行ったんですが、そこでめちゃくちゃ感謝を伝えられて思わず号泣してしまったんですよ。とても胸に刺さりましたね。自分も一杯一杯で追い込まれ、結構メンタルにもきていたので、「土屋さんのおかげで」と受講生が言ってくれた時にバーッて涙が溢れてきました。

この経験をしてからはGeekSalonを辞めようとは思わなかったですね。それこそ毎日が楽しかったです。活動はとてもしんどかったけれど、その言葉をもらった時、喜びの大きさがこれまでとは全然違ったんですね。こんなに嬉しかったことは人生の中で今までなかった。しんどい時はとてつもなくしんどいけれど、嬉しい時はかつてない喜びで人生の振幅が大きくなった感覚です。

逆に言うと、苦しさのような負の感情を経験しないと喜びの最大値を上げられないんだなという学びを得ました。その頃から人生の喜びを得るために毎日楽しいほうがいいよねという漠然とした思いが、「イキイキと働くっていいよね」みたいな段階に落とし込めました。活動に対して「今日行きたくねえ」って思ったことがないという体験をみんなにしてもらいたいなという思いが芽生えました。

―振幅があるためには沈む必要があると思うんですが、それすらも楽しいと感じてGeekSalonに打ち込んでいたんですか?

そうですね。ある時は「しんどい」という気持ちしかないんですけど、後々には「あんなこともあったなぁ」という感じで何事もなかったかのように終わると思います。例えば卒論のために数日徹夜しても、後には良き思い出として残るという感覚ですかね。だからしんどくても「まあ今だけかな」みたいに思えるようになり、どんな事象でも楽しめる力が付いたなぁと思います。

―苦労が無いとその後に来る達成感や感謝が生まれないと思うので、目先の苦労のその先に目を向けていればイキイキと働けそうですね。


―GeekSalonに出会った時に「直観的にここだと思った」と仰っていたのですが、どこにピンと来たんですか?

GeekSalonを立ち上げた方の中に名の知れているスタートアップを創業し10億円以上で売却した人がいらっしゃり、その人は僕の研究室のOBだったんです。その方は研究室は辞めていたのですが、同じ研究室にいて年齢も近い人がビジネスの世界で活躍していて「研究室よりもこっちのほうが楽しそうやん」と思ったのと「そういう人生もありなんだ」というカルチャーショックを受けました。この人に話を聞いて付いていけば、何か俺も変われるかもしれないと思ったのがきっかけですね。

―GeekSalonなら変われるかもしれないと思ったんですね。

そうです。初めてイベントに行った際に「やらせてください」と伝えました。「そういう熱量があるならたぶんできると思う。一緒にやろう。」と言ってもらい、参画することになりました。

―プログラミングスキルが前提で参画したという感じなんですか?

プログラミングに関しては本当に初心者でした。一年生の時にC言語は授業でやっていたんですがほんの少しコードを書く程度で、全然理解していませんでした。C++に関しては「超嫌いだわ」みたいな状態でした(笑)。でもいつかプログラミングをやらなければならないという思いはあり、GeekSalonに参加したんですよね。

ほぼ初心者だけど三日後には教えなきゃならないという状況だったから死ぬほど勉強せざるを得ませんでした。言語ごとにコースがあるんですが「1週間後にこのコースを立ち上げるからやって」みたいな無茶ぶりを必死に形にしていました。だから決してプログラミングができたから入ったという訳ではありません。

【欲求や心に素直になる】

―ご自身が目先の苦しさに囚われていた時期はありましたか?

そうですね。何も真剣に取り組んでいなかったから苦しいこともあんまりなかったです(笑)。サークルに行きバイトも何となくやって、飲み会代を稼ぐみたいな状況でした。授業も出なくて良いものは出席せず、レポートだけ出して単位だけを取るみたいな感じでした。

―とは言え1年生から3年生の間でも本気でやっていなかったわけじゃないですよね?当時も当時なりに頑張っていたのでは?

もしかしたら頑張るの基準が上がっているから、頑張っていないように見えているかもしれませんが本当に何も頑張っていなかった。強いて言えば遊びをおぼえることに頑張っていたくらいでしょうか。高校まで18年間ずっと坊主で朝から晩まで部活だったし遊びといったら2か月に一回、坊主10人でカラオケ行くくらいです(笑)。これまで遊びの面では抑圧されていたので、大学に入学したら絶対遊んでやると反発がすごくてそのためだけに受験勉強頑張ったという状態でした。

大学ではクラブとか飲み会もそうですし、いろんな店に行こうとかどうやったらモテるかなぁとそういう面で頑張っていました。特に髪型のPDCAを回してましたね。人間としての魅力は中身という結論なんですけど、そこを磨くには時間が掛かるけど髪型は短期的に効果が出る施策だなぁと思います(笑)。こういう点では全力でした。

―モテようとしていた時と、原体験をもとにしたビジョンに気付いたときどっちがエネルギーを持っていますか?(笑)

もちろん後者のほうが長期的なエネルギーはあると思うんですが、どっちも根本的な欲求に近いところだと思うのでどちらもエネルギーとしては高いです。基本的に欲求に素直になろうと思っていて、「楽しく働きたい」とか「モテたい」とかは誰しも絶対あると思うんですね。でもなんか蓋している、なんか我慢している。そういう人が多いから違和感をとても感じます。たとえば僕ハワイに住みたいんですよ。みんなやりたいのになんで言わないんだろうとか、なんでやろうとしないんだろうとかが基本的に思うことです。

―「これやりたい」と主張した時に「それ無理だよ」と本音をつぶされたことはないんですか?

もちろん優しさゆえだと思いますが、親とか親戚からそういう言葉を言われたことはあります。両親は理解があって「やりたいようにやったら良い」ということだったんですが、親戚のおばちゃんには「こんなの無理じゃない。大丈夫?」ていう言葉をかけられました。自分には好きな女優さんがいて割と本気で付き合いたいと思ってるんですよ。友達からは「いやいや、あほちゃう?」とよく言われますね。

でも起業家で芸能人と交際されている方って多いじゃないですか。だから無理じゃないし、そういう方をモデルに行動していけば可能だと思うんですよね。逆算して一つ一つ行動していけば達成に近づくと思います。

―人によっては「無理」と言われて落ち込み本音に蓋をしてしまうと思うんですが、それはなかったんですか?

そもそも本音に蓋をしなくなったのはGeekSalonでの体験が自信になったと思います。何にも持っていないただの大学生だったんですけど、二年くらいGeekSalonをやって卒業生・受講生1000人弱くらいになったんですよ。僕は学生代表みたいなことをやった経験があるから、大抵のことは努力すればできそうな気がしています。

【最後に】

―今後ビジョン実現のためにどんなことに取り組んでいく予定ですか?

僕は人材系のベンチャー企業に行くんですが、世界中の人々を魅了する会社を作ることをビジョンに据えているんですね。HRテックの領域で「みんながイキイキと働けるようにする」という考えが事業の根底にあって魅了されました。おそらく入社当初はスキル面も含めて何もできないだろうと感じているので、まずは自分自身が誰よりもイキイキ働くことで「土屋君みたいになりたい」っていう人を増やしたいと思っているのが一つです。

もちろん事業としても日本中の人に影響を及ぼせるようなサービスを提供して、みんながイキイキと働ける社会に近づけていきたいと思います。

GeekSalonも土屋さんの考えるイキイキと繋がっていたんですか?

多分繋がっていますね。GeekSalonではプログラミングという武器だけでなく、コミュニティや繋がりを提供することも重視しています。そこで受講生が起業する仲間や長期インターンを見つけたりと色んなきっかけを作れているなと感じますし、彼らがイキイキしている姿を目にしているので甲斐を感じながら運営していました。

―では最後にやりたいことを探している人に一言お願いします!

まずやってみて、行動してみて、苦労してみてほしいです。人に会っても、いろいろ言うだけでも何も変わらないので「とりあえずやってみよう」と伝えたいです。僕の場合は意識高いイベント行きまくったり、長期インターンを紹介してもらってやってみるところから始まったので。きっかけは「焦り」や「やりたい」や色々あると思いますが、とにもかくにもまずはやってみて欲しいです!

―お忙しい中ありがとうございました!

このインタビューはキャリアセンターの「学生キャリアスタッフ」が企画・実施しました。


”いきさつ” 連載紹介

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 平日10:00~16:00
【連絡先】
 Tel : 03-3203-4332  
 e-mail : career#list.waseda.jp
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