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SCSインタビュー企画 いきさつ Vol.2

-将来やりたいこと・ビジョンはどうやったら見つかるのか-

この問いに対するヒントを見つけていくSCSのインタビュー企画「いきさつ」。
「利他的」かつ「長期的」なビジョンを持ち、すでに活動している現役早稲田生の人生を振り返り、ビジョンを見つけるためのヒントやマネできるポイントを掘り出していきます。

第2回目のインタビューイは基幹理工学部4年(取材当時)の柴田尭彦さん。人当たりが良くオープンマインドな柴田さんの興味の先は「宇宙」。しかし幼い頃から宇宙に興味があった訳でなく、大学時代の講演会が大きなきっかけだったとか。しかも単に宇宙ではなく地上を考えて宇宙を見る高次元の視点をお持ちです!柴田さんの“いきさつ”をご堪能ください。

※記事の内容及びプロフィールは取材当時(2019年2月)のものです。

インタビューイ紹介

柴田尭彦さん(基幹理工学部4年)

カナダの小中一貫校を卒業後、早稲田大学高等学院を経て早稲田大学基幹理工学部学系IIに入学。2019年に機械科学・航空学科を卒業し、同年より同大学院創造理工学研究科総合機械工学専攻に進学。所属サークルは早大ピアノの会(既卒)。機械工学の勉強と研究に励む傍ら、将来宇宙事業を興す事を目指し事業開発やマーケティングに携わる。趣味はピアノ、読書、ドラマ鑑賞。

本記事の流れ
・柴田さんが描くビジョン
・引き金となった宇宙飛行士のリアルストーリーと友人の言葉
・宇宙を専門とする上でぶつかった2つの迷い
・自分の行動を促す環境づくり
・今後の展望

【柴田さんが描くビジョン】

―本日はよろしくお願いします!手始めに自己紹介をお願いしても良いですか?

はい、早稲田大学基幹理工学部機械科学航空学科の4年生でこの春卒業します。生まれは東京で、小中学校時代は親の都合でカナダのトロントで過ごしました。トロントに日本人学校がなく、現地の学校に入れられました(笑)。

中学校卒業後帰国して、早稲田大学高等学院に進学しそのまま早稲田大学に入学しました。学部では宇宙探査の研究をしていましたが地上(地球)にはあんまりメリットがなく、純粋な夢の探求で終わるのではないかと考えることがありました。そのため修士課程では地上のためになる分野を選ぼうと思い、創造理工学研究科の総合機械工学専攻に進学して人工衛星の研究をする予定です。

―では早速この企画の趣旨であるビジョンについて教えてください!

ビジョンは一言でまとめると「技術を通した大衆向け価値創造」です。具体的には人工衛星を通して地球に住む人の生活に価値を生み出すことを目標としています。

―壮大ですね~!ではそのビジョンをどうやって見つけたかをお聞きしようと思います。宇宙には小さい頃から興味があったんですか?

実は宇宙にどっぷり浸かったのは大学に入ってからで、小さい頃から宇宙飛行士になりたかったとかは全くありませんでした。大学の学科選びの際にも経済・建築・航空学科の3つで迷いました。ただ学者を目指してはいなかったので経済は本を読んで学べば良いと思い、建築はアートセンスが必要になるため選択しませんでした。残った航空学科は独学が難しいと思って進学を決めました。

大学に入って必修の授業で三菱重工(株)のプロジェクトマネージャーのお話を伺ったり、JAXAのオープンキャンパスに行ったりして「おー宇宙面白いじゃん!」と感じてから少しずつ宇宙に浸かり始めました。

-大学に入ってから宇宙に興味を持ち始めたんですね。

そうですね。授業を受け始めた一年生の頃から色々な人の話を聞いたり、講演会に行ったりしていました。でもその時は宇宙に限らず海外留学など興味のあるトピックには何でも行っていました。その中でたまたま宇宙飛行士の方の講演会に行って、話を聞いたときに感動して宇宙に興味を持ちました。

-ちなみに講演会は学内の講演会ですか?それともfacebook等を使って探したんですか?

学内ではないですね。facebookを使ったり、TOMODACHIイニシアチブが開催するイベントで出来た繋がりから情報を得ていました。TOMODACHIは東日本大震災の復興支援から誕生した、次世代リーダーの育成を目指す取り組みです。TOMODACHIの情報は全部一般公開されていますが、知り合いによく教えてくれる人がいたので情報にリーチできました。とても有益な情報をもらえる良いネットワークです。

-そういった紹介をしてくれる人とは高校の時から繋がっていたんですか?

高3の時にTOMODACHIイニシアチブ主催のプログラムに参加し繋がっていました。多国籍に囲まれたカナダの小中学校から一転して日本の高校に通い、閉塞感を感じていました。世界に多くの人がいる中で1か国の人のみと過ごすのは嫌だなと思い、国際交流をするなど出来るだけ外に出るようにしていました。

高校時代からチャンスがあれば色々やりましたね。目的も様々でシンポジウムに出る、日米の文化交流をする、海外を知る、自分の文化を発表する、一緒に勉強するみたいなことを多角的にやりました。それらがきっかけで多くの人と繋がることができました。

【ビジョンの引き金となった宇宙飛行士のリアルストーリーと友人の言葉】

-宇宙に興味が向いた最も大きな経験を具体的に教えてもらって良いですか?

大西さんがISS(国際宇宙ステーション)から帰還した直後にミッション報告会があったんですが、それが一番自分に響きましたね。「地球は本当に美しかった」と仰ってたんですよ。それを聴いて「やべーーー!自分も見てみたい !!!」と強く思い魅了されました(笑)。

あと僕は人が心を動かされる瞬間を見るのがすごく好きなんです。宇宙に行ったと言うだけで多くの人を引き付けるじゃないですか。その点も重なって「宇宙」にはまるようになりました。

-ちなみに宇宙に興味を持った時、大西さんのように宇宙飛行士になろうとは思わなかったんですか?

1年生の頃は宇宙飛行士になるのもいいなぁと思っていたのですが、大学2年生の時に転機がありました。ゴールデンウィークに公共政策系サミットの運営のお手伝いをしました。そこで出会った友達に宇宙への想いを話したところ、「国家予算何百億円かけて、隣にいる貧しい人も救えなくてどうなの?そんなに巨額の投資を宇宙にしても、結局地上の人に何も恩恵無いんじゃないのか。」と言われたんですよ。この言葉に対する意見は人それぞれだと思うのですが、僕自身は頭をハンマーで殴られるような衝撃を受けました。ただ宇宙飛行士になりたいというのは少し違うのかなと思うようになったんです。

それからまず宇宙開発を先導する人の多くがお金持ち、もしくは宇宙系にしか興味がない人であることに疑問を持ちました。自分は宇宙一点張りで育ってきた人間ではなく、音楽やビジネス等にも興味を持ってきたこともあり、宇宙のことだけをやるのに違和感がありました。その結果、友人の言葉もあって「地上のために」という視点を持つようになりました。

そして大好きな宇宙開発と、地上の人のためになることを両立する手段を考えた時に「人工衛星だ!」って思ったんですよ。人工衛星はテレビ、電話、地上観測とか既に地上をよくするために使われてきたものだったので、宇宙と地上両方のために取り組めると思いました。それからは衛星ベンチャーでインターンを行い、3~4年生にかけて9か月くらい業界分析や事業開発をしていました。今は宇宙分野の中でも宇宙ゴミと衛星画像に一番興味をもっています。

【宇宙を専門とする上でぶつかった2つの迷い】

―宇宙を専門分野として活動する中で迷いや壁はなかったんですか?

2つの壁がありました。まず1つはたくさんある興味の中で宇宙だけを選んでよいのかという点です。宇宙以外にもビジネス、サスティナビリティ、公共政策系、マーケティングと多方面に興味があったので、その中で宇宙を選んで自分は納得できるのかという点で迷いがありました。もう1つは宇宙業界の中で綺麗にキャリアを踏めるのかどうかという点です。

―そうだったんですね。先ず後者の宇宙分野でのキャリアに関してはどうやって判断しましたか?

キャリアについては国内の宇宙ベンチャーでインターンをしたり、それらがどれくらい成長するのかなというのを見ていました。その結果キャリアを積める環境が出来つつあるなと感じました。

宇宙探査や宇宙旅行は持続的にビジネスを回すのが難しいと思うんですけど、人工衛星の分野は安定性があると感じました。実績と市場さえあれば、引く手数多の現状なので事業として安定してやっていける、と。

―そこもやはり自分の目で確かめてきたということですね。もう1個のたくさんの興味から宇宙を選べたのは、どういう考えや基準があってのことだったんですか?

この点はかなり試行錯誤しましたね。結論から言うと宇宙は1つの業界なので、経験できる業種はたくさんあるという考えに至りました。宇宙ベンチャーに於いても、(他の企業同様に)マーケティングもあればビジネスの要素も必ずあるので。

あと興味がある業種を一通り経験しました。マーケティングはベンチャーや広告代理店で経験させてもらい、プロダクト開発は自分でやってみたりなどです。その中でマーケティングは自分が心からやりたいサービスのために行いたいと思うことに気づきました。プロダクト開発に関しても自分が情熱を注げるもの、そして企業のミッションにも共感できる分野に取り組みたいなと思いました。そうすると、やはり自分には宇宙がぴったりだと感じました。

宇宙業界でビジョンに共感できる場所を選ぶことができれば、職種はマーケティングでも事業開発でも、エンジニアでも良いと感じました。今はむしろ横断的にやりたいと思っています。いつか起業したいと考えているので、宇宙業界で職種を含め多くの事にチャレンジして、キャリアを積んでいきたいです。

【自分の行動を促す環境づくり】

―話を聞きながら自分で1歩踏み出す力がすごいなと感じました。トライすることに難しさを感じる人もいると思うのですが、そういう行動力は物心ついた時には既に持ち合わせていたんですか?

いや、元々受け身な性格ですし今も結構受け身だと思っています。ただ周りの人から機会を振ってもらえるように自分をオープンにしているという感じですね。

フットワークが軽いっていうのは確かにあるのですが、どちらかというと「これしたいんです」と周りに言っておいて、紹介してもらえる環境づくりをしていました。

―「宇宙をやりたい」と言い続けていたんですか?

宇宙以外のやりたいことも周りにどんどん発信しています。大学1年の頃からベンチャーキャピタリストになりたい、マーケターになりたいとかキャリアパスを5つくらい考えて発信し、どれにも進めるような準備をしていましたね。今でこそ宇宙という大きな分野の軸はありますが、とりあえず一つ没頭してみて駄目だったら別のプランをやってみるというのは繰り返しています。今もプランA・B・Cなど計画は怠らないようにしています。

「一つだけやってダメだったらもう終わり」というのは今の時代に相応しくないと思います。個人として自立出来る環境が整っている時代ですし。そのために自立の土台となる「収入を得る」のような部分が、崩れないように準備しておくことは必須と思っています。だから自分も、宇宙業界が仮に全部駄目になった場合は大企業に行くとか、そういうオプションは考えていますね。

―どうしてそんなに難しいことがあってもやり続けられるんでしょうか?

ありきたりですけど、やらないと分からないじゃないですか。やった後に辞めるのは良いと思うんですけど、やらずに辞めるのは違うなと思っています。実際にコンテストに出すかとかになるとみんなビビっちゃうと思うんですが、自分の場合はそこはやってみようって何も考えず飛び出してましたね。

―そういった挑戦を支援してくれる人の存在はあったんですか?

周りに自ら挑戦する人が多くて。中学校の同級生にビオラで音大行きます、みたいな人もいました。周囲に「これやります」という人がたくさんいたので、自分も何かやってやろうみたいな刺激を受けましたね。人との出会いって本当に大きいなって思っています。

―刺激の多い環境に巡り合っていたんですね~。そういった自分の行動を促してくれる人を見つけるためにはどうしたらいいと思いますか?

自分はピアノやテニスといった趣味用のサークルに大学で入っていたのですが、それ以外にやりたいことをお互いに話せる環境(勉強会)にも顔を出していました。つまり意識的にコミュニティを選ぶようにしていましたね。

あと授業後にいつも質問に行く熱心な人だったり、優秀な人が1学科に3人程度いると思うのですが、そういう人たちに自分から話しかけに行くようにしていました。周りにやりたいことを突き進めている人は絶対いるので、探して一言声を掛けてみるという小さいアクションだけで相当な刺激を受けられると思います。

【今後の展望】

―では今後の展望を聞かせてほしいんですが、大学院に入った後の2年間はどういう研究をするつもりなんですか?

修士では、人工衛星を構造的にどう広げていけるかというテーマを探求していきたいです。例えばサイズの大型化とか精密化とかですね。それ以外にもまだ見えていないことばかりなので、どんどん知識の幅を広げていきたいと思います。

―研究以外に今後やっていこうと思っていることはありますか?

事業開発やマーケティングを学んでいこうと思っています。今後研究やビジネスで必須となるものだと思うので。

―ちなみに「実験面倒くさい」とか思ったことはないんですか()?ビジネスの分野に興味がある中で、どうやって学術的な好奇心を失わないようにしていたんでしょうか?

実際に携わっている人と連絡を取ることが自分としては良かったですね。自分の成績は真ん中くらいですし、学問的に秀でていないと思います。必修の科目に対してつまらないと思ったことも何回もあります。

しかし、そういう時でも宇宙分野で働いている人とお話しさせていただく機会があり、学部の勉強を乗り越えるとめちゃくちゃ面白い世界があることを知りました。ですので、学部の勉強を社会で活用している人と会うことってすごく大事だなと思っています。勉強の重要性や繋がりが見えるので。

周りが大学生だけだと「面倒くせー」で終わる可能性が高かったと思うので、そういう意味で先輩とか社会人のメンターの人にかなり恵まれてたなと思います。

―その話は特に理工生には金言ですね!それでは最後にメッセージをお願いします!

まずは一歩踏み出してみる。そして自分が興味ある事を実際にやっている人を見つけて欲しいです!たぶん友達の親とか、友達の友達の親とかを辿れば絶対にいると思うので、まずやってる大人を見つけて話をして欲しいです。

―貴重なお時間をありがとうございました!

 

このインタビューはキャリアセンターの「学生キャリアスタッフ」が企画・実施しました。


”いきさつ” 連載紹介

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