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OGに聞く FIFAマスター日本人合格者2名はいずれもスポ科出身~その1

スポーツ科学部卒業生でア式蹴球部(サッカー・女子)出身の2人、辻 翔子氏と大滝麻未氏が2016年秋、FIFA(国際サッカー連盟)が運営する大学院「FIFAマスター」に進学した。元日本 代表主将・宮本恒靖氏が修了したことで日本のスポーツ界でも広く認知されるFIFAマスターに、日本人2名が同時入学するのは初めてのこと。「早稲田大学スポーツ科学部に身を置いた4年間があるからこそ」海外の大学院進学という決断ができたという2人に、進学先での抱負や将来のスポーツ界の展望などをインタビューした。[聞き手:江橋よしのり]

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左が辻 翔子(つじ・しょうこ)氏、右が大滝麻未(おおたき・あみ)氏

【プロフィール】

辻 翔子(つじ・しょうこ)

国際基督教大学高校出身。2011年3月、早稲田大学スポーツ科学部 スポーツ文化学科卒。卒業後、マドリードの大学院に進み、新聞社「アス」のインターンシップを経て、バルセロナのコーディネート会社に就職。リーガエスパ ニョーラの現地取材や中継、日本のスポーツチームのスペイン遠征のコーディネートなどに携わる。

大滝麻未(おおたき・あみ)

神 奈川県立鎌倉高校出身。2012年3月、早稲田大学スポーツ科学部スポーツ医科学科卒。2012年1月、オリンピック・リヨン(仏)とプロ選手契約。同年 5月UEFA女子チャンピオンズリーグ決勝戦に出場し、優勝。浦和レッズレディース、ギャンガン(仏)を経て、2015年5月、現役引退。日本代表通算3 試合出場。

江橋よしのり(えばし・よしのり)

茨城県立土浦第一高校出身。1997年3月、早稲田大学商学部卒。執筆家、女子 サッカー解説者、FIFA Women’s Player of the Year 投票メンバー。著書に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも超えられる』(講談社)など。

 

欧州3大学で学ぶユニークなプログラム

——2016年9月からFIFAマスターに進学することになったおふたりは、早稲田大学スポーツ科学部を卒業後、どのような道を歩んだのですか。IMG_7562-1

 4年生のときに全学オープン科目(全学部生対象の科目)で「スポーツジャーナリズム論」を履修し、スポーツを伝えることの奥深さを知りました。中学時代から勉強していたスペイン語を磨きたい気持ちもあって、大学を卒業後レアル・マドリードと提携する大学院で1年間学び、新聞社「アス」のインターンシップを経て、バルセロナを拠点としてリーガ関連取材をしていました

大滝 私は早稲田大学に入学した当初から「海外でプロサッカー選手になる」という目標を持っていて、卒業直前(2012年1月)にフランスの「オリンピック・リヨン」というクラブとプロ契約を交わしました。その後、浦和レッズ、ギャンガン(フランス)でプレーし、2015年5月に25歳で引退しました。

——FIFAマスターに進むことを決めた経緯は?

 私は在学中(2009年)、「国際スポーツ文化論」というゼミの担当教員だった石井昌幸先生からFIFAマスターの存在を教えていただきました。ただし「FIFAマスターで学ぶなら、一度社会に出てからのほうがいい」とアドバイスされました。それから4年間、スペインでメディアコーディネーターとして活動し、やっと労働ビザの許可も下りたのですが、この快適な生活環境に甘えてしまわず、もっと挑戦して、もがいて、成長したいと思ったので進学することにしました。スペインではFIFAマスター修了生の宮本恒靖さんにも仕事でお会いしました。「17年間のプロ選手生活と同じぐらい中身の濃い1年間だった」と聞いて、それだけやる価値があるんだ、とワクワクしました。

大滝 私は引退後、スポーツ界の国際的な機関で仕事をしたいと思い、そのために海外の大学院への進学を希望していました。いろいろな人に相談したところ、「だったら、FIFAマスターに挑戦してみてはどうか」と複数の方から勧められました。それからプログラムなどを調べてみたら、面白くてやりがいがあるなと思いました。引退が早かったことを後悔したくないですし、絶対にこの1年を無駄にしたくないと思っています。

——FIFAマスターはヨーロッパの3大学(イギリス・レスターのデ・モントフォート大学、イタリア・ミラノのSDA ボッコーニ経営大学院、スイス・ヌーシャテルのヌーシャテル大学)と提携し、1年間に渡って3つの大学を移動しながら研究するプログラムが用意されています。プログラムはどのようなところに期待していますか?

 石井先生の専門がスポーツ史だったこともあり、最初にレスターで学ぶ「スポーツの歴史と人文・社会科学」は興味あるテーマです。また、ヌーシャテルで学ぶ「スポーツと法律」が一番の難関だと聞いていますが、ルールに則ってフェアに競争するというスポーツの土台を理解するためには法律の知識が欠かせないと思うので、気を引き締めて学びたいです。

大滝 レスターで「スポーツの歴史と人文科学」をテーマに、スポーツが産業革命の時期を経てどのように変化してきたかについて学びます。私はスポーツ科学部の「スポーツ人類学」というゼミ(寒川恒夫教授)を履修し、さまざまなスポーツが社会の変化とともにどう変化してきたかを学びましたので、大学時代の研究がそのまま生かせそうで、楽しみです。将来私が競技団体などマネジメント側の仕事をするのなら、たとえばこれからスポーツがどういうふうに変化していくのかを予測する際、過去を理解していることが大事です。スポーツの歴史を学ぶことは未来につながると思っています。

スポーツ界から社会に変化をもたらすアクションを

IMG_7575-1 スポーツをいかに身近なものにしていくか。大会のときだけ盛り上がるのではなくて、大会が終わってからもそのスポーツの話題が途切れないような世の中になってほしい。

大滝 2020年の東京オリンピック・パラリンピックが終わったときが、大事なターニングポイントになりそうですね。

 メディアにも、その競技の成績にかかわらず継続的に取り上げてほしいけど、見てくれる人がいなければコンテンツ化しにくいですよね。ということは、やはり見る人、応援する人を増やしていかなければならない。

大滝 地域の人に「このチームがあってよかったな」という実感を持ってもらう施策も大事だと思います。試合を見に行くだけの場合と、試合以外の場所で選手と実際に会って話せる機会がある場合とでは、ファンの満足度が全然違いますからね。その接点は地域の学校かもしれないし、何らかのコミュニティーかもしれませんが。

——たとえばジェンダー・イコーリティー(男女共同参画社会)という社会的な課題に対するアクションを、女性スポーツ界から起こせるのではないかと思います。FIFAは2014年に” Women’s football – 10 key development principles”(女子サッカー発展のための10の原則)を打ち出し、「サッカーはスポーツ界および社会において、女性の可能性を示す力をもっている。すべての女性が、性別を理由に差別や虐待、不利益を受けるべきではない。サッカーは世界にこのメッセージを運ぶリーダーとなる」と宣言しています。

大滝 FIFAのウーマンズ・リーダーシップ・カンファレンスでも、まさにそのような話がありました。

 スペインでは去年、レバンテというチームの男子が2部に落ちてしまい、その結果女子チームの予算も削減されてしまいました。でもバレンシアなどは、男子と女子で別々の財布を持って運営していますね。

大滝 まず削る対象がそこ(女子)になる、というケースはよく聞きます。

 辻 ブラジルのサントスでも、過去にありましたね。(バルセロナから移籍のオファーが届いた)ネイマールを引き止めるためにお金が必要で、レディースを解散させたんです。

——女性スポーツは男性のおまけではない、という世の中にしていかないと。FIFAはおそらく、サッカー界がその先頭に立とうと考えていますね。

大滝 日本国内でも、文部科学省でダイバーシティに取り組んでいる方に、「女性スポーツを盛り上げることで、世の中に変化をもたらしたい」というビジョンを持った方がいらっしゃいます。

「OGに聞く FIFAマスター日本人合格者2名はいずれもスポ科出身~その2」

このインタービューの続き「OGに聞く FIFAマスター日本人合格者2名はいずれもスポ科出身~その2」はこちらからご覧いただけます。

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