競技する。指導する。応援する。観戦する。スポーツという文化的・社会的事象を成立させているのは、スポーツに興味をもち、さまざまなスタイルでスポーツに関わっている多くの人々です。スポーツ科学部での教育・研究の対象もまた、これら多種多様なスポーツとの関わりの中にあります。
21世紀の国際社会におけるコモンセンスとも言えるスポーツをテーマとした学習・研究を通して、科学的な姿勢やコミュニケーション能力、専門的知識や技能を養い、新たな時代に対応できる人材として、社会で活躍してほしい――。スポーツ科学部における教育に貫かれているのは、そんな思いなのです。
スポーツ科学部で学ぶ科目や学問領域の名称には、スポーツ生理学やスポーツ心理学のように、「スポーツ」の一語を冠したものが少なくありません。これは、スポーツをテーマに、多彩なジャンルの科学を援用した教育研究が実施されることを意味しています。つまり、スポーツというテーマを通して、医科学、生理学といった自然科学系の学問から社会学や心理学、教育学などの人文・社会科学系の方法論まで、幅広い学問領域で総合的・学際的に学べるのが本学部の特色です。
社会のボーダレス化に先んじる形で、スポーツ界のグローバル化は進展してきました。今日では、海外のプロスポーツリーグを楽しむ人も少なくありません。スポーツを通した国際交流は、今後ますます重要性を増していくことでしょう。本学部ではスポーツを通したコミュニケーション、とくに外国語能力の研鑽に力を入れていきます。少人数制の英会話指導、米国オレゴン州での実践的教育プログラムなど、独自のカリキュラムでコミュニケーション能力の向上をはかります。
コンディショニング・メディカル・リコンディショニング・ニュートリション・メンタルの5つのクリニックから構成されるスポーツ医科学クリニックは、学内アスリートや指導者のスポーツ活動に関する医科学サポートや、トレーナーを目指す学生の教育の場として活用されています。バイオデックスなど、測定のための設備も充実しており、教育研究の融合・発展を目指します。
教育研究を円滑に進め発展させる目的で、東京女子医科大学、オレゴン州立大学システムと提携。また、内外のスポーツ諸機関やスポーツに関する民間企業と連携し、スポーツ振興施策の提言や、実践的な教育研究を実施します。
早稲田大学では2003年に、スポーツ科学に関わる教育・研究を、主に自然科学的な分野から行うスポーツ医科学科と、人文社会科学的な分野から行うスポーツ文化学科から成るスポーツ科学部を創設しました。
しかし、ここ数年の受験生や入学した学生の動向をみると、必ずしも2学科制が適切なのかどうか疑問に思える点も浮上してきました。そこで2010年度より、2学科制を廃止して1学科(スポーツ科学科)として新たにスタートしました。
この変更により、1年次には全員が幅広くさまざまな切り口からスポーツ科学を学び、それを基礎として、各自が2年次から専門としたい分野(6コース:スポーツ医科学、健康スポーツ、トレーナー、スポーツコーチング、スポーツビジネス、スポーツ文化)を選ぶことになります。※2021年度入学者より、スポーツ教育コースの募集を停止しました。
スポーツには「する」、「みる」、「ささえる」などさまざまな関わり方があります。1年次には全員にこれらに関する導入教育を徹底して行い、一年かけてじっくりと自らが進むべき道を探れるようなります。
スポーツ医学、スポーツ生理学、スポーツバイオメカニクス、スポーツ心理学、トレーニング科学などのスポーツ科学に関連した基幹分野の理論的学習を礎に、身体運動のメカニズムやその改善法について教育・研究します。
スポーツ医科学の基礎的な知識を深めて、身体運動の意義を探る。
解剖学、運動生理学、バイオメカニクスなどの講義と実習から筋、骨格、神経など人間が有している運動機能と構造を理解し、その測定法、筋力や運動能力向上の科学的方法、正しい身体の使い方を学びます。またスポーツ栄養学、スポーツ医学を身につけることにより、スポーツに必要な栄養バランスや現場での怪我人の救護法、さらには疾病予防と健康増進の方法を学びます。卒業生は健康な未来を切り開くための身体運動に関する基礎知識を有しております。
ヘルスプロモーションの指導者に必要となる健康増進技法を学ぶ。
健康スポーツコースでは、人々が活動的で健康なライフスタイルを送るための様々な智恵を教授し、豊かで活力のある生活を確立するための科学的視点とヘルスプロモーションの指導能力を学習します。健康運動指導士をはじめとした指導者の養成も目指しますが、単なるスポーツ指導の現場にとどまらず、様々な業種での実業に携わりながら、健康増進を通じた豊かな社会の実現に視する人材を輩出することを目的としています。
スポーツ医科学の基礎知識に基づいて、スポーツ障害の予防、リハビリテーション、トレーニング、コンディショニングなど、具体的な実践技法について教育・研究します。
アスレティック・トレーナー、ストレングス&コンディショニングスペシャリストに必要となる基本的な知識と技能を学ぶ。
トレーナーコースでは、スポーツ解剖学やスポーツ傷害評価を基本学問とし、アスリートのパフォーマンス改善やけがの予防策、そして受傷後の復帰に向けたリコンディショニングを学びます。これら、改善、予防、復帰という一連の流れは、将来的にはアスリートのみならず、高齢者や発育期の子供を含むあらゆる年代の人たちの健康管理に応用できる知識と技術です。また、コミュニケーション能力や協調性といった社会人としての基本能力も、実習を通して養われるのがこのコースの特徴です。
スポーツスキルの構造と向上のメカニズム、トップアスリートにおけるパフォーマンス向上に関わるコーチングの理論と方法、技術・戦術分析法など実践的知識について学び、その成果を競技スポーツ教育の場においても展開しうる能力を持った人材を育成します。
アスリート、コーチ、アナリストの3つの立場から、スポーツスキルを向上させるための理論的背景を学び、それに必要な情報を収集・分析する実践的能力を養うことで、スポーツの現場で活躍できる人材を育成する。
トップパフォーマンスコースでは、アスリート、コーチ、アナリストの3つの視点から、スポーツ科学の知識と手法を現場で活用できる人材育成を目指します。アスリートの育成には、アスリートやコーチの「カン」や「コツ」が重要ですが、「カン」や「コツ」をとらえるための科学データの算出法や解釈法、技術・戦術・戦略の分析法などを授業で取り扱います。これらの実践的な学習をもとに、スポーツをする側だけでなく支える側の役割や環境整備に関する理解を深めることによってスポーツにとどまらず社会の様々な現象に対する洞察力と、問題に対処する能力を身につけることができると考えられます。
スポーツに関する幅広い知識を修得するとともに、社会調査やマネージメントに関する実習も行います。マーケティングやメディア、イベントなど多彩なスポーツビジネスの場で活躍できる人材の育成を目指します。
マーケティングやメディア、イベントなど多彩なスポーツビジネスの場で活躍する人材を育成。
経済学、経営学等のコース関連の基礎的な学習を踏まえ、プロスポーツ球団、スポーツリーグ、スポーツイベント、スポーツメーカー、スポーツメディア、スポーツ施設や総合型地域スポーツクラブなど、スポーツに係わる製品やサービスを生産、提供する「スポーツビジネス」の最新現場を取り上げながら、スポーツビジネスのみならず、一般の組織マネジメントに必要なコンセプチュアル・スキル、テクニカル・スキル、ヒューマン・スキルを身につけます。
人間の生活全般を規定する文化。そのなかでのスポーツや身体表現の役割を、時代と空間を網羅しながら考える。
文化コースの学生は、自由で型にとらわれない発想で物事を考える訓練を受けます。歴史学、社会学、人類学など、様々な視点からスポーツを考えます。文献の収集と読解、データ集めの方法と分析、ディスカッション、論文作成などのノウハウを習得します。リベラルアーツの強みは適応力。一生学び続ける姿勢と技法を身につけます。文化コースではスポーツを「考える」ことに重点を置いています。