早稲田の杜を巣立つ皆さんへ
総長、各学術院長、学校長からの贈る言葉
早稲田大学を卒業する皆さんへ、総長、各学術院長、学校長からのメッセージを贈ります。これらの言葉を胸に、夢に向かって歩んでください。
『グローバルな視点と高い志を持って挑戦を』
早稲田大学を巣立っていく皆さん。卒業、修了おめでとうございます。
皆さんが入学した2012年、早稲田大学は2032年の創立150周年を見据えた中長期計画「Waseda Vision150」を発表し、世界に貢献する高い志を持った学生が世界中から早稲田大学に集い、世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する研究を行い、校友が世界や地域の至る所で、また、あらゆる分野で「グローバルリーダー」として社会を支え、かつ早稲田大学と緊密な協力関係を築き、そして早稲田大学がアジアのモデルとなるような大学運営体制を確立しているというVisionを示しました。
この「Waseda Vision 150」を推進する早稲田大学では、日本で最も多くの外国人学生が学び、最も多くの日本人学生が海外留学を経験し、教場やサークルにおいて、日々、多様な文化背景・価値観の中で正解のない問いに答えを見いだす力を養っています。そして、世界大学ランキングにおいては、早稲田大学は雇用者からの評価や卒業生の就職率などの項目からなる「QS Graduate Employability Rankings 2016」で、国内1位(世界33位)となりました。これは、早稲田大学が企業と連携した取り組みや学生の卒業後の活躍が世界的に高く評価され、グローバル時代に応じた着実な自己改革の成果が客観的な数値として示されたものであります。こうした点からも、早稲田大学の伝統や価値が校友の活躍に支えられていることが分かります。
これから皆さんは日本社会そして世界に向けて飛び立っていくことになりますが、グローバルリーダーとは世界を舞台に活躍する人材に限らず、地域社会などどのような場所でも、いかなる分野においても、グローバルな視点を持って多様な価値観・文化的背景を持った人々との相互理解を深め、地球社会の繁栄と人類の幸福のために貢献できる人材です。
ありとあらゆる分野で旧来の価値観が大きく変わろうとしている現在、皆さんの前途は必ずしも平穏というわけではありません。しかし、どのような難局に直面しても、進取の精神を持って果敢に挑戦し、自らの信念に基づいて、人類の幸福のために力を尽くす人格の養成こそが建学の理念であり、そして多くの校友たちがその理念を体現してきたのです。
卒業生の皆さんもまた、先輩たちに勝るとも劣らない活躍をしてほしいと思います。そのためには深い学識と幅広い教養、そして何よりも豊かな人間性を備えていなければなりません。知恵に磨きをかける必要は一生続きます。早稲田大学は社会人教育も拡充しています。志の実現に向けて必要があるときは、再び早稲田大学の門をたたいてください。
『人生意気に感ず、功名誰か復た論ぜん』
人間は、意気に感じる人との出会いによって突き動かされ、そこに自分の進むべき道を見いだすものです。功名に気を取られていては、自己の発見もおぼつかないでしょう。意気に感じる出会いを通じて自己を確立し、社会に貢献してくれることを期待します。
『希望は最後に死ぬ』
Die Hoffnung stirbt zuletzt.
このドイツの格言を合言葉に、日本国憲法の不戦の誓いを守り、世界平和への希望を捨て去ることなく、憲法の理念の実現を希求し続けましょう。
『倒れたら起き上がればいい』
文学学術院長
越川 房子(こしかわ ふさこ)
どんなときにも早稲田の気風を忘れずに、失敗を恐れることなく夢にチャレンジし続けてください。成功者とは転ばなかった人のことではありません。何度も転び、そのたびに何度も何度も起き上がって、夢を実現した人のことです。未来のあなたのことです。
『胸を張って生きていこう』
権力に佞(おもね)ることなく、暴力に屈することなく、時の風潮に流されることもなく、信念を貫き通すのは簡単ではありません。国からの指令に背き「命のビザ」を発給した偉大な先輩、杉原千畝(ちうね)は、何よりも自分に対して胸を張って生きた人だと思います。
『なんとかなる、なんとかする』
大人になると、自分の気持ちとしてはやりたくないことをやらなくてはならないときがあります。誰かがやらなくてはならないこともあります。自分のできる範囲でやっていきましょう。きっとなんとかなります。あなたの苦しみがきっとどこかで報われます。
『人は自分にとって真と思われることの範囲内で真理を探求している』
普遍的真理というものがそもそも無いことを省察した哲学者キルケゴールの言葉。人生において、真理といわれるものすら個人に属する相対的なものであることを心しておくことが、大切になることがあるでしょう。自分を愛し、慈しんで生きていってください。
『深夜の暗闇の中に、次の日が実は始まっている』
思想的には遠いが、先々代の教皇ヨハネ・パウロⅡ世の言葉から。厳しい時代の試練に耐え、検証されたものが次の時代に輝きを放つ。下積みの時を恐れてはいけない、自分の力を蓄えるチャンスなのだ。そして、真の歴史の流れを見抜く目を研ぎ澄ませてほしい。
『人にして遠き慮(おもんばか)り無ければ、必ず近き憂い有り』
『論語』の中の一節です。「人として先々のことや縁遠く思えることにも配慮がないようでは、きっと身近な心配事が起きる」。現代社会にあって、私たちは目先のことに汲々(きゅうきゅう)としており、遠くを思うことは難しい。それ故に、こうした孔子の言葉が必要なのです。
『希望は強い勇気であり、新たな意志である』
これは16世紀に宗教改革を行ったマルティン・ルターの言葉です。希望を持ちながら、腐敗したカトリックに敢然と立ち向かったルターは、時代を画する宗教改革を成し遂げました。人生は希望を失わない限り、どのような困難をも乗り越えられるように思います。
To thine own self be true
『己に誠実であれ』
国際学術院長
Adrian Pinnington (エイドリアン ピニングトン)
『ハムレット』より。あなたが大学で育んだ最も重要な能力は、自分自身の考えを持ち、それを客観的に検証する力です。民主主義を守るには、市民各自が、メディアや世論に流されず社会の行く道を熟慮せねばなりません。常に自分に誠実であり続けてください。
『美しいものを見るためには、目は美しくなければならない』
詩人G ・バシュラールの言葉として有名だが、ギリシャの哲人プロティノスも『魂が美しくなければ美を見ることもできない』と述べた。ゆえに美しい目をもつ魂によってしか美しい世界を造ることができない。忘れないで欲しい。世界は君たちの目にかかっている。
早稲田ウィークリー 第1389号より