Institute of Comparative Law早稲田大学 比較法研究所

研究所プロジェクト

新世紀における比較法研究の理論的・実践的課題

このたび比較法研究所は、早稲田大学グローバルCOEプログラム《企業法制と法創造》総合研究所(基礎法グループ)と共同して標記のテーマでの新しいプロジェクト研究を開始することになりました。これまで比較法研究所は、それ自体として比較法の産物とも言える日本法のアイデンティティ、すなわち、その国際的文脈におけるその自己確認を追求してきましたが、このプロジェクト研究は、その延長に展開されるものです。

企画趣旨

ヨーロッパ発の比較法は、ヨーロッパ統合の進行に伴ってシビル・ローとコモン・ローの対抗という伝統的な比較の方法を超える枠組を求め新たな展開を示している。同時に、加盟国における民法典を中心とした近代の大法典が、ヨーロッパ全体の法の実務、さらにEUの立法・司法過程によって、その基本的な枠組までもが変動している。旧東欧諸国においては、市場経済への移行およびEU加盟を目指す法の整備が進み、その古層にある法の復活も論じられている。このような流れの中で、ヨーロッパのレヴェルでの普遍を求め、ローマ法の根源、さらに ius communeに回帰した基本的法概念の歴史的探求をめざし、比較法学と比較法史がかつてないほど活性化している。そこには、グローバルな市場の効率化のための法の統一・調和であるのか、人々の間の社会的公正と市民社会の理念の実現のためのそれであるのかの、理論的・実践的対抗も生まれている。  我が国には、継受法の母国における法の「ヨーロッパ化」は無縁でないにもかかわらず、ヨーロッパにおける比較法学のルネッサンスに比肩する状況は、現れていない。しかし、アジア諸国に対しては、日本法が、法整備支援事業を通じて市場経済移行国へと移転される現象が依然、進んでいる。また、2007年12月の比較法研究所創立50周年記念国際シンポジウム『パンデクテンのゆくえ』で示されたように、私法上の基本概念を、東アジアの法学者たちと共通の土俵で検討することの重要性も認識されている。  このプロジェクトは、現代的な状況における比較法の意義とその役割を検討し、国境を越える法の理念を探求する学として比較法学を再定位し、国際的な協働関係の推進をはかるものである。  このプロジェクトでは、研究テーマに関する連続講演を開催して、このような比較法の状況を専門的に検証する。そして、この一環として、国際シンポジウム「比較法の新世紀 ―― 市民社会と法の調和を求めて(仮題)」(”New Era of Comparative Law:Challenging for Civil Society and Harmonization of Law”(Provisional)を開催することにしている。

連続講演会

第6回
日時 2009年10月9日(金)18:00~20:00
演題 ヨーロッパ民法典構想の現在―不当利得法に関するDCFR第VII編を素材として―
講師 松岡 久和(京都大学大学院法学研究科・法学部教授)
コメンテーター 加藤 雅信(上智大学法科大学院教授)
コメント・司会 鎌田 薫(研究員、早稲田大学法学学術院教授)
会場 早稲田大学早稲田キャンパス 27号館地下2階 小野記念講堂
共催 グローバルCOEプログラム《企業法制と法創造》総合研究所(基礎法関係グループ)
概要 ヨーロッパ私法は、契約法のみならず、債務法、契約各論、事務管理、不当利得、不法行為、動産物権法、動産担保法など、広く民法の財産法を対象とした統合・平準化の動きを見せている。ヨーロッパ民法典草案構想の第一歩として今年初めに公刊された Draft Common Frame of Reference (共通の参照枠草案。DCFRと略称される)の最終完成版の中から、第Ⅶ編不当利得を素材として取り上げ、この試みの意味と限界や課題を検討する。
第5回
日時 2009年7月24日(金)18:00~20:00
演題 R.チマーマンの比較法学とローマ法学
講師 小川 浩三(桐蔭横浜大学法学部教授)
コメンテーター 藤岡 康宏(早稲田大学名誉教授)
コメンテータ・司会 戒能 通厚(研究員、早稲田大学法学学術院・大学院法務研究科教授)
会場 早稲田大学早稲田キャンパス 27号館地下2階 小野記念講堂
共催 グローバルCOEプログラム《企業法制と法創造》総合研究所(基礎法関係グループ)
概要 現在世界の最も代表的な比較法学者であるチマーマンの法学を彼のローマ法学とコモン・ローへの 接触という観点から論じたい.「法史学なくして比較法学なし」というスローガンにもかかわらず, それを体現できたのは,実はエルンスト・ラーベル以外には,ほとんどいなかった.チマーマンは, ローマ法学で訓練を受けた研究者である.次に,チマーマンのローマ法学は,古代ローマ法学だけ でなく,中世以降のローマ法学の発展を踏まえたものである.中世以降のローマ法学は,多様な発展
を示した.この受容の時期と受容の仕方の違いによって,同じローマ法学の影響を受けながら, 異なった現象形態を示す現代の諸国の法の説明が可能になる.最後に,チマーマンは南アフリカで コモン・ローと正面から向き合った.ローマ法学の十分な素養をもった学者が,若いうちにコモン・ ローと本格的に対決した例は今までなかったのではないか.コモン・ローとローマ法の近接性,連 続性に注目すると同時に,ローマ法の多様性にも目が行くようになった.それはまた,この多様性 の中の共通の要素としての,学問としてのローマ法学の機能にも着目させることになった.
第4回
日時 2009年6月22日(月)18:00~20:00
演題 貧困・差別問題と憲法(学) ―自律・社会的包摂・潜在能力
講師 西原 博史(早稲田大学社会科学総合学術院教授)
コメンテーター 菊池 馨実(研究員、早稲田大学法学学術院教授)
司会 笹倉 秀夫(研究員、早稲田大学大学院法務研究科教授)
会場 早稲田大学早稲田キャンパス8 号館3階 大会議室
共催 グローバルCOEプログラム《企業法制と法創造》総合研究所(基礎法関係グループ)
概要 「格差社会」化がいわれる今、日本国憲法と憲法学は、どのような形で問題を 捉え、解決しようとしているのか。「生活水準」を軸とした20世紀型の生存権論 は行き詰まりを見せている。そうした中ヨーロッパでは、特に1990年代以降、 「社会的排除との戦い」を進めている。ただ、何をすれば「社会的包摂」に寄与 するかの判断は単純ではない。ここでは、A.セン型の潜在能力アプローチを参 照しつつ、サーヴィスの受け手の主体性と個別性を受け止めた権利論の可能 性を探る。
第3回
日時 2009年5月29日(金)18:00~20:00
演題 21世紀の農地制度と土地所有権論 ―日仏の比較土地法研究の視点から
講師 原田 純孝(中央大学法科大学院教授)
コメンテーター 楜澤 能生(研究員、早稲田大学法学学術院教授)
会場 早稲田大学早稲田キャンパス9 号館5階第1会議室
概要 60年前の農地改革で創出された日本の農地制度は、2009年の農地法改正 により、これまでとは別のベクトルの展開方向を与えられた。食料と水、そして農地の争奪戦も予想される将来に向けて、日本の農地制度と農村地域はどうなっていくのか。都市・農村を通じる都市計画法典を背景に精緻な農地制度を確立しているフランスとの比較のなかで考えてみたい。
第2回
日時 2009年4月22日(水)18:00~20:00
演題 比較における「段階」と「型」 ―加藤周一を手がかりに
講師 樋口 陽一(元早稲田大学法学学術院特任教授)
コメンテーター 戒能 通厚(研究員、早稲田大学法学学術院・大学院法務研究科教授)
会場 早稲田大学早稲田キャンパス27号館地下2階小野記念講堂
第1回
日時 2008年12月18日(木)18:00~20:00
演題 新世紀の比較法 ―法令情報の国際的共有のための辞書開発と比較法基盤の構築
講師 松浦 好治(名古屋大学大学院法学研究科教授)
コメンテーター 笹倉 秀夫(研究員、早稲田大学法学学術院・大学院法務研究科教授)
世話人 早川 弘道(比較法研究所長)
会場 早稲田大学早稲田キャンパス8号館3階 大会議室
共催 グローバルCOEプログラム《企業法制と法創造》総合研究所(基礎法関係グループ)

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