• ニュース
  • 比研主催イベント:シンポジウム「ウズベキスタンと日本からみたAIと金融法」11/15(土)が開催されました

比研主催イベント:シンポジウム「ウズベキスタンと日本からみたAIと金融法」11/15(土)が開催されました

比研主催イベント:シンポジウム「ウズベキスタンと日本からみたAIと金融法」11/15(土)が開催されました
Posted
2025年11月18日(火)

◆ウズベキスタンと日本からみたAIと金融法◆

【主 催】早稲田大学比較法研究所
【共 催】国際取引法学会国際契約法制部会
【日 時】2025年11月15日(土)14時~16時30分
【場 所】Zoom

【講演者】

①Said Gulyamov・ タシケント国立法科大学・教授(ウズベキスタン)
②Naeem AllahRakha・タシケント国立法科大学・准教授(ウズベキスタン)
③Gayrat Eshbaev・同上・講師(ウズベキスタン)
④Mardonov Amirjon/ Temurbek Pulatov・同上・講師(ウズベキスタン)
⑤Botir Dosov・UC Davis・客員研究員(ウズベキスタン)
⑥山寺智・埼玉大学・特任教授(日本)
⑦山本和志・タシケント国立法科大学・教授(日本)
⑧久保田隆・早稲田大学・教授(日本)

【使用言語】英語
【通 訳】なし

【企画責任者】久保田 隆(比較法研究所研究所員、早稲田大学法学学術院教授)
【対 象】学生、教職員、一般
【参加者数】17名(うち大学院生・学部生7名)

 

冒頭、司会の挨拶があり、その後、早速講演が行われた。ウズベキスタンから4名、日本から3名が登壇し、サイバーセキュリティの課題、デジタル民主主義、金融規制など、人工知能(AI)の様々な側面について掘り下げ、AIが社会に与える影響、AIガバナンスの法的枠組み、AIと人間のアイデンティティに関する哲学的考察などを網羅した。質疑応答では、日本の大学院生(M1・デン氏)と専門家(山寺・埼玉大教授)からウズベキスタンの専門家方に質問があり、AI開発におけるバランスの取れたアプローチの必要性が強調され、効果的な規制と基本的権利の保護を確保しつつ、利益とリスクの両方に対処することが示された。

AllahRakha助教授は、AI時代のサイバーセキュリティとプライバシー課題について発表し、AIを用いたサイバー犯罪(ディープフェイク、適応型フィッシング、AI搭載ランサムウェアなど)が規制環境の再構築を迫っている点を強調し、国境を越えた規制の不整合、責任の所在不明確、法律専門家のAIリテラシーの欠如を指摘。AI自律性の明確な定義などの法改正や国際協力などの必要性を唱えた。

Eshbaev講師は、デジタル民主主義を取り上げ、フェイクニュース、フィルターバブル、エコーチェンバー、ヘイトスピーチといった脅威に加え、スノーデン事件やケンブリッジ・アナリティカ事件に代表されるデジタル監視問題を指摘。透明性のある政治コミュニケーション、強化されたプライバシー保護、メディアリテラシー、表現の自由と有害なデジタル慣行への対策のバランスを図る規制措置の整備を唱えた。

Pulatov講師(Amirjon講師は病欠)は、金融規制におけるAIの課題を発表し、AI技術の進化が規制枠組みの適応速度を上回っている点を強調した。欧州の厳格なリスクベース規制、米国のセクター別規制、ウズベキスタンのイノベーション重視モデルなど国際比較を行って各国の相違を明らかにすると共に、責任あるAI開発と規制を確保するため、倫理教育・国際協力・独立監査システムの必要性を強調した。

Dosov研究員は、AIと人間倫理のパラドックスを扱い、人間の行動向けに人間が構築した枠組みが、人間のアイデンティティを持たないAIにどう適用されるのかを問うた。また、幾何学を例に科学的探究を定義する哲学の役割と前提を問い直す重要性を探求した。古代神話から現代AIに至る知性の理解と再現という人類の探求を振り返り、知性の本質を問い直す必要性を強調した。

Gulyamov教授(ビデオ参加)はウズベキスタンのAIガバナンス枠組みを包括的に分析し、憲法上の理念と現行規制の実態との間に大きな隔たりがあることを明らかにした。AIに特化した立法の欠如、不十分な説明責任メカニズムなどの主要な欠陥を特定し、立法改革、個人情報保護の強化などを提言した。
これに対し、山寺教授、山本教授、久保田教授から、報告の要点整理と今後の研究課題、日本の状況についてコメントがあった。なお、今回の報告に関する英語論文・日本語論文がチャットを通じて参加者に配布された。

(文:久保田 隆 比較法研究所研究員)