=比較法セミナー「インド法の英米法的諸相」=
【主 催】イギリス最高裁判所研究会(比研グループ共同研究)
【共 催】早稲田大学比較法研究所、早稲田大学法学部、早稲田大学法学研究科
【日 時】2025年5月31日(土)15:00-17:05
【場 所】早稲田キャンパス 8号館3階 303大会議室
【言 語】英語 通訳なし
【講演者】Siddarth Rao(弁護士)、 比嘉義秀(同志社大学)
【世話人】中村 民雄(早稲田大学法学学術院教授、比較法研究所員)
【対 象】学生、教職員、一般
参加者:21名(うち学生1名)
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このセミナーでは、まずSiddarth Rao弁護士により“Legal Profession in India”という報告がなされ、現在のインドにおける裁判と法曹の制度、法曹養成制度、法曹人口、弁護士事務所の競争状態、外国人弁護士の活動承認などが概説された。報告および会場・オンライン参加者との質疑応答の両方から最も浮き彫りになった点は、少額裁判を除く民事の裁判の第一審となるDistrict Courtsの係属件数が群を抜いて多く、訴訟の遅延が懸念されること、それゆえに現在、訴訟の類型や争点の類型化が進められ、訴訟手続の類型ごとの迅速化がIT技術の利用も含め試みられ始めている点であった。
次に比嘉義秀・同志社大学准教授から「インド人法律家とイギリス枢密院司法委員会―特に1929年上訴管轄権法について―」の報告がなされた。かつて植民地インドからの最終上訴を扱っていた本国イギリスの枢密院司法委員会においては、当初からインドの経験を有する人材(インド人法律家を含む)を登用する工夫がなされており、1929年法は、現実に優秀なインド人判事が無給あるいは有給の判事として枢密院司法委員会に登用する実務を確立するものとなったことが報告された。
この報告に対しては、佐藤創・南山大学教授から、19世紀から20世紀初頭にかけてのイギリスのインド統治の大きな流れとして、立法・行政にもインド人の統治参加が工夫されていたが、司法についても同様の考慮があったと捉えうるのではないかとのコメントがなされ、比嘉氏も賛成しつつ、19世紀半ばからの民族運動の隆盛に対する応答として位置づけうると付言した。
ほかにも会場・オンラインの参加者からも多数のコメントや質問が寄せられ、盛会のまま時間となり閉会した。
(文:中村 民雄・比較法研究所研究所員)