ニ国際シンポジウム「保険代理店の現代的課題―日独比較―」
【主 催】早稲田大学先端技術の法・倫理研究所
【共 催】早稲田大学比較法研究所、早稲田大学法学部
【日 時】2024年10月3日(木)10:00~11:45
【場 所】早稲田キャンパス 14号館201教室 およびZoom聴講のハイフレックス
【報告者】クリスティアン・アルムブリュスター(ベルリン自由大学法学部教授)、大塚英明 早稲田大学法学学術院教授
参加者:47名(うち学生0名)
日本において保険代理店でもある中古車販売会社による保険金不正請求が明るみになった。
ドイツにおける規制についての、アルムブリュスター教授の講演の主な内容は次のとおり。EU保険販売指令(IDD)により保険販売における保険契約者利益優先が義務づけられている。ドイツ法においては、公正さ確保のため一定の保険のタイプに報酬の上限を設け保険仲介者の報酬の定期的見直し義務が定められている。保険代理店には保険契約締結前に手数料の出所と金額の開示義務がある。保険ブローカーが保険会社に代わって示談することは、保険ブローカーが保険契約者のためではなく保険会社のための行為であるから、法律サービス法に反する。先端科学技術による組込型保険は、保険組込商品販売会社には免許が必要であり、組込保険の保険会社はソルベンシーⅡ指令を遵守しなければならない。保険代理店がロボアドバイスの活用の際、その用途に関する情報を開示し、人間の関与が求められる。プラットフォーマーは、保険商品比較をする場合は保険ブローカーであり、保険商品を組み込み提供する場合は代理店である。
これに対し、日本では、大塚教授から次の報告があった。自動車修理業を営む保険代理店による過剰な保険金請求があったが、損保会社は損害を被っていない。むしろ損保会社が過剰請求を上回る利益を得ていた。2024年6月の金融庁の報告書によれば、損保会社が大手代理店の教育管理指導がなされていなかった。平成28年保険業法改正では、代理店の保険募集業務の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じることを義務づけているが、保険会社はとりわけ大手保険代理店に対する指導が不徹底であった。むしろ、代理店の第三者評価の仕組みを構築して導入することが考えられる。すなわち、保険規制ではなく、コーポレート・ガバナンスの観点から保険代理店の健全性を評価するのが妥当である。
質疑応答時には、次々と質問がなされ、活発な議論が交わされた。
(文:肥塚肇雄 先端技術の法・倫理研究所員・早稲田大学法学学術院教授)