Institute of Comparative Law早稲田大学 比較法研究所

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【開催報告】講演会「刑法と憲法の基本原則」が開催されました

講演会「刑法と憲法の基本原則」

講演者:ヨハネス・カスパー(アウクスブルク大学教授)
主催:早稲田大学先端社会科学研究所
共催:早稲田大学比較法研究所、早稲田大学法学部
日時:2023年10月6日(金)17:00~19:00
場所:オンライン(Zoom)
司会・通訳:仲道 祐樹(早稲田大学教授、先端社会科学研究所・比較法研究所員)
言語:ドイツ語(通訳あり)
参加者:39名(うち学生6名)

 

2023年10月6日、早稲田大学先端社会科学研究所と比較法研究所、法学部は、アウクスブルク大学教授、ヨハネス・カスパー氏をお招きし、憲法と刑法の基本原則の関係に関する、ご講演いただいた。

カスパー教授がご講演の中で取り上げたテーマは、大きく述べるなら、刑法と憲法の関係です。単に規範の階層構造を見るなら、基本法に反するあらゆる法律や国家行為は違憲となるという意味で、憲法は刑法に優越しています。ということは、基本権の制約を伴うものとしての刑罰・刑法の憲法適合性を審査する基準として、比例原則が使用されなければならないはずです。比例原則とは、国家が基本権への介入を伴う措置を行うとき、それが正当な目的に基づいていることだけでなく、なぜ当該具体的措置が当該目的を達成するのに適合的かつ必要、相当なのかを、理由を示して説明するよう国家に義務付けるものです。ところが、これまでは、刑法はそれ自体に内在している固有の基準によって十分に刑罰権を統制しているという考えが支配的であったことから、憲法審査の実践的有効性には疑義が唱えられてきただけでなく、寧ろ憲法上の基本権とその審査基準が刑法に対して強い影響力を発揮することには、批判や警戒が向けられてきました。

カスパー教授は、そのような疑義や批判、警戒を根拠付ける様々な理屈を批判的に検討し、退けた上で、基本権と憲法審査が刑法にどのような規律をもたらすことになるのかを正面から検討しなければならないと主張されました。またこのような観点から、「刑事憲法(Strafverfassungsrecht)」という語には――刑法が他の法と異なる例外的な地位にあるという誤解を招くおそれがある点には注意が必要であるとしても――十分な意義があると議論されました。

刑法の基本的な諸原則の中でも、カスパー教授がご講演の中で特に取り上げたのは、法益論と責任主義です。教授は、法益論と責任主義は、憲法上の基本権審査における比例原則を代替するものではなく、あくまでもその一部をカバーするに過ぎないということを指摘されました。その上で、比例原則はそれら刑法上の原則を補完する役割を果たすことができるということを明らかにした上で、比例原則のような憲法による限界付けが今後ますます刑法に妥当しなければならないと論じられました。

(文:松田和樹・比較法研究所助手)

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