2019年10月25日(金)16:30~18:00
早稲田キャンパス 8号館3階大会議室
参加者数/学生数 21人(うち大学院生・学部生 8人)
10月25日に、比較法研究所公開セミナー「アメリカのロースクール教育の社会性と臨床法学教育」が開催されました。
セミナーでは、まず、宮川成雄 法務研究科教授が、カリフォルニア大学バークレー校での在外研究の成果を踏まえて、米国における臨床法学教育の特徴や日本の法科大学院教育への示唆について講演しました。
講演では、カリフォルニア大学バークレー校ロースクールの学生が法曹資格取得前の段階で、地域課題に携わり法専門職の実務経験を積んでいることが報告されるとともに、地域団体と連携して立法改革に取り組むポリシー・アドボカシー・クリニックの授業内容が紹介されました。宮川教授は、米国のロースクール教育を考察したうえで、日本の法科大学院教育において、町医者が地域の人たちを助けるように、知識偏重にならず経験を通じて法的観点から助力する「社会生活上の医師」の養成が重要である旨を指摘しました。
講演後の質疑応答では、日本の司法試験が米国に比べて難易度が高く、なかには資格取得目的で受験する学生もおり、そのために試験科目以外の社会活動を授業内容に取り入れた科目への履修意欲が、日本の法科大学院教育では喚起されにくいのではないかとの意見が示されました。
この問いに対しては、リーガル・クリニックが司法試験の結果を向上させる側面をもつことを示すデータがある点や、社会貢献活動が実社会との関わりへの意識を強くし、主体的学習行動や教育効果向上を促す点が指摘されました。
質疑では、また、リーマンショック以降、米国のロースクール教育に対する社会の目が厳しくなり、日本の司法修習制度に相当する仕組みのない米国では即戦力(practice ready)となる人材育成をはかる目的から、理論のみにとどまらない実践教育に対する要請が強くなったとの考察が示されました。
このほかに、臨床法学教育が日本の法科大学院に一層求められる一方で、理論と実践を分けて考える日本の法学教育では両者の統合は容易ではない点が課題として指摘されるなど、諸種の観点から踏み込んだ議論が展開されました。
参考
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