日 時:2018年10月31日(木) 16:00~17:30
会 場:早稲田大学早稲田キャンパス8号館6階604教室
講 師:石田 智恵 早稲田大学法学学術院講師
司 会:中村 民雄 早稲田大学比較法研究所所長
参加者:13名(うち学生5名)
2018年10月31日(木)に、「「日系人」の法的地位からみるナショナリティと出自の考察」というテーマで公開講演・討論会を開催した。
まず、講師の石田智恵氏(早稲田大学法学学術院講師)より、ご自身の博士学位論文「<日系人>の生成と動態――集団カテゴリーと移民コミュニティの歴史人類学」に基づき、法学との接点から、ネイション(nation:国家)・エトニ―(ethnie:民族)、「日本人」の同一性、移民政策などについての講演があった。
「二重国籍問題」について
戦前の米国における「日系市民」問題を取り上げた。石田氏は、1924年の日本国籍法の改正において、日本国政府が二重国籍を「問題」とした理由は、国民の正当性・法的整合性に問題があったからではなく、国際情勢下におけるアメリカとの外交関係にあったこと、そのための解決策として、「二世」を法に定められない「ethnie:民族」として「日本」の名を負う「日系市民」にするという理論が立てられたことを指摘した。
「日系二世」の帰還、日本国籍の再取得について
石田氏は、「国籍法」の規定を踏まえ、「日本国籍の喪失」とは出生による日本国籍保有の事実を消すものではなく、日本国籍を保有した事実の上に国籍を喪失した事実が重ねられる、追加されるものであることを指摘した。
また、「日系人」には、母国から来日し合法的労働者として日本に在住する日本人移民の子孫も含まれる。日本国内では「日系人」という語は「定住者」という在留資格と明確に区別されず用いられることがあるが、1990年の改正入管法では「日系人」は定義されていない。その理由について、石田氏は、日本の外国人政策は「国籍」をもとにしたものであり「人種主義」に基づいているわけではないと示すとともに、「日系人」を「外国人」の法カテゴリーに含めることを避ける意味もあったのではないか、と述べた。
最後に、石田氏は、戦後の「海外日系人」が日本国籍を持つ海外同胞という新しい「民族的日本人」に位置づけられ、戦後日本のネイションを裏付ける存在として再定義されたこと、その一方でナショナリティとは自然の領域(出自)と法の領域(国籍/市民権)だけでなく、社会という領域(歴史)によっても構成されることを指摘した。
講演に続いて、中村所長からのコメント、参加者との質疑応答があった。質疑応答では、参加した教員、大学院生からの熱心な質問に石田氏が丁寧に答えるなど大いに盛り上がりを見せ、大変有意義な講演・討論会となった。
以上
参考
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