Institute of Comparative Law早稲田大学 比較法研究所

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【開催報告】公開ワークショップ「大学で英米法をどう教えるか(お悩み相談会)」が開催されました。

【公開ワークショップ】「大学で英米法をどう教えるか(お悩み相談会)」
日 時 : 2018年10月27日(土) 15:00~18:00
場 所 : 早稲田大学早稲田キャンパス8号館3階会議室
参加人数: 13名(うち学生2名)
主催:イギリス最高裁研究会(比較法研究所共同研究)
共催:早稲田大学比較法研究所

【概要】
2018年10月27日(土)に、公開ワークショップ「大学で英米法をどう教えるか」が開催されました。本ワークショップでは、若手研究者による大学での講義の現状報告を中心に活発な議論が展開されました。

【趣旨説明】

中村民雄(早稲田大学 比較法研究所 所長)

  • 中村民雄(早稲田大学比較法研究所所長)

中村民雄所長より、このワークショップは、若手教員の「大学で英米法をどのように教えればよいのか」との悩みを受けて開催されるものであり、英米法を専門とした教員が少なくなるなかで、教育者としての立場から大学教育における英米法の在り方や教え方を率直に語りたいと、開催の趣旨を述べました。

【報告(前半)】

  • 髙橋脩一氏(宮城教育大学教育学部)『だけど涙が出ちゃう、英米法専攻だもん』
  • 中田裕子氏(南山大学法学部)『大学で英米法をどう教えるか』
  • 山口哲史氏(早稲田大学博士後期課程)『英米法教育史』

髙橋脩一氏は、英米法を教える際の悩みにとして、法学部ではなく、教育学部の学生に英米法を教えることの難しさについて述べるとともに、日本社会を理解するための素材として英米法を学ぶことの重要性を指摘しました。
また、中田裕子氏は、自身の講義について紹介しながら、英米法を教える際の悩みについて報告しました。講義の際には、国際性(英語)の重視といった南山大学の特徴や、文化として法を学びたい、就職後に必要な知識として英米法を学びたい等の学生の要望を考慮するなどの工夫点についても説明しました。
なお、髙橋氏と中田氏に対して、履修者数や対象学年、英米法以外の外国法科目について質問がありました。
その後、山口哲史氏より、日本における英米法教育史についての報告がありました。

【報告(後半)】

  • 浅香吉幹氏(東京大学)、板持研吾氏(神戸大学)、佐々木英智氏(明治大学)

浅香吉幹氏(東京大学)、板持研吾氏(神戸大学)、佐々木英智氏(明治大学)より講義状況の報告がありました。
浅香氏は、日本で英米法を教える意義として、英米法との比較から日本法を理解することの重要さを指摘するとともに、米国の現状を説明する際には関連する話題を盛り込む等により講義内容に刺激を与える工夫をしていると述べました。
次に、板持氏は、法科大学院と学部での講義について紹介し、受講者に応じた講義内容が求められると述べました。さらに、法科大学院の講義は実務家を目指す学生を対象としているが、学部の学生は様々な動機で受講しているので講義の論点を絞りにくい等、両者の違いを述べました。
続いて、佐々木英智氏が、他の法学科目との関連から具体例を交えて、教材選定や成績評価の難しさ、研究者を志望する学生の減少傾向等に言及しました。
最後に、中村所長が、シラバスや配布資料を用いて早稲田大学での講義方法を紹介しました。英米法には日本語では伝えにくい部分があるため、講義では積極的に英語を使うようにしていることや、学生の授業参加を促すための取り組みについても触れました。

【討論】

 

討論では、学生の講義への参加を促すうえでの課題をはじめとして、各報告者に共通の関心事について下記のような意見が交わされました。

  • 英米法のコア項目は、司法制度と判例法主義。この点は共通していると思う。たとえ学生の要望に応えるものではなくても、英米法を教えるうえで重要な項目はある。
  • 映像資料は効果的だが、10分が集中力の限界であろう。講義をより深く理解し視野を広げるには、ときには雑談も必要になる。
  • 日本で英米法を教える際の教材を独自に作成するのは一案である。ただし、教材を作っても、内容がすぐに古くなってしまう懸念は残る。
  • 現在、法科大学院(ロースクール)が担っている役割を、近い将来、学部が担うことになるかもしれない。その時には、今以上に、ロースクールに期待されていることに学部が取り組まなければならない部分が出てくると思う。
  • 大学では、国際化(海外留学)を積極的に促す動きがある。こうしたところで、英米法の知識が必要になる場合がある。
  • 法律文献の活用法を講義でどのように教えるかは、課題の一つになっている。日本の大学図書館員は米国とは異なり、図書の専門家というよりはジェネラリストとしての役割が期待されているように思える。
  • 例えば、東京大学法学部が国家公務員を数多く輩出してきたように、日本の大学では法学部は必ずしも法曹養成に特化した学部ではなかった。かつては、法学部で培われるリーダーシップ(議論を整理し論点を提示する)能力が社会で高く評価されたが、法科大学院制度ができて法曹養成に重点を置くようになって以降、法学部がやせ細ってきた印象を受ける。今後の法学部には、政策立案(evidence-based policy-making)能力が求められるようになるのではないか。

黒沼悦郎(早稲田大学 比較法研究所 幹事)

 

 

 

 

 

 

【総括】
中村所長より、ワークショップを通して、お互いにどのような意識をもって講義を行っているかを共有できたことは良かったとの評価があり、今後も試行錯誤を繰り返しながら、英米法の教え方を工夫していきたい旨の総括がありました。

参考
開催案内
Link to English page.

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