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【開催報告】公開講演会「アメリカにおける同性婚の実現・LGBTの人権擁護―2015年Obergefell v. Hodges連邦最高裁判決の意義―」(メアリー・ボノート氏 弁護士)が開催されました

公開講演会概要

【日時】 2017年8月1日(火)14時30分~16時00分
【場所】 8号館地下1階107教室
【講師】 メアリー・ボノート氏(弁護士)
【司会】 中村 民雄
【演題】 「アメリカにおける同性婚の実現・LGBTの人権擁護―2015年Obergefell v. Hodges連邦最高裁判決の意義―」
【参加者】 約90名(うち院生/学生30名強)

 

1.開会挨拶及びボノート先生の紹介

講演に先立ち、開会挨拶及び講演者の紹介が行われた。

まず、司会を務める中村民雄教授から、LGBTの権利実現に重要な意義を有するObergefell判決の代理人を務めたメアリー・ボノート先生をお迎え出来ることは極めて貴重な機会である旨が述べられた。

次に、今回のボノート先生の招聘を実現した「LGBTとアライのための法律共同ネットワーク」共同代表である藤田直介氏(ゴールドマンサックス証券法務部)の挨拶が行われた。

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2.ボノート先生の講演概要

(1)Obergefell(オバーゲフェル)判決の背景

婚姻とは、愛する人との家族の形成を意味し、人の幸せにとって極めて大きな価値を有するものである。しかし、我々が法を変えるまでは、同性との結婚を望む人には、その機会が与えられてこなかった。州法についていえば、Obergefell判決で提訴した州(ミシガン、ケンタッキー、オハイオ及びテネシー州)以外にも、テキサス州、ルイジアナ州、ジョージア州を含む9つの州において、州法によって同性間の婚姻が禁止されていた。

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さらに、連邦法では、1996年にDOMA(連邦婚姻防衛法)が制定されていた。この法律は、連邦法において言及される「婚姻」を男女間に限ると規定していた。この法制定の8年後にマサチューセッツ州において、同性婚を認めない州法を州憲法に反するとしたGoodrige判決(2003年)が出され、マサチューセッツ州以外の州でも徐々に同性婚が可能になっていった。ところが、連邦にはDOMAがあったため、婚姻に言及する1,000以上存在する連邦法上は同性婚は認められず、州法と連邦法では同性婚の扱いが異なるという状況が続いた。

しかし、ウィンザー判決(2013年)で我々は勝利を収め、DOMAは連邦憲法に違反すると判断された。連邦最高裁判所は同判決で同性の間で婚姻を認めないのは、修正5条のデュープロセス条項に反するとした。この判決は、婚姻が人々にとって極めて重要であることを認めたものであり、大きな喜びをもって迎えられ、同性カップルの婚姻を巡っての社会的な議論は大いに高まった。実際に、Obergefell訴訟で原告のために提出されたアミカス・キュリー書面(専門鑑定証人による意見書)は、米国議会の下院議員167人及び下院議員44名のほか、ビジネス界や様々な民間団体からも提出された。

(2)判決の内容

Obergefell判決は、ミシガン、ケンタッキー、オハイオ及びテネシー州での婚姻を異性間に限るという州法が連邦憲法修正第14条に反するかが争われたものである。

本判決の争点は、婚姻が修正第14条のデュープロセス条項及び平等条項によって保障される基本的権利であるかどうかという点にあった。連邦最高裁判所は、この点について、①婚姻に関する個人の選択の権利は個人の自律性の一部で個人の尊厳に内在するものであること、②婚姻は、婚姻にしか認められない形でふたりの人間の間の結合を支えるという理由で基本的であること、③婚姻は、子どもや家族を保護し、その結果、子育て、出産及び教育といった関連する権利の観点からも意味を持つこと及び④婚姻は我々の社会秩序の要(keystone)であるという諸点から、実体的デュープロセス理論に基づき、婚姻が基本的権利であると判示し、その基本的権利はあらゆる人に平等に保障されるべきものと判示した。ゆえに同性のカップルも婚姻する基本権を異性カップルと同等に行使することができるとされた。

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この結論から論理的に導かれることとして、同性婚を認める他州での婚姻の効力を、異性婚でないという理由で認めない州法は、基本的権利を保障しないので違憲であるといえる。これが本判決の骨子である。

本件訴訟を巡っては、誰がどのような条件のもとで婚姻するかは、民主主義の過程によって州が定めるべきであるという反論があり、それに対して原告たちは、問題は民主主義によっても基本的権利は奪えないのであり、その点は連邦裁判所が判断できると主張してきた。連邦最高裁判所は、原告の主張を認め、民主主義過程が適切なのは、憲法及び基本権が侵害されていない場合に限られ、基本的な権利が侵害されている場合には、多数が合意せず、立法府が行動しない場合でも、連邦最高裁判所は行動しなければいけないという判断を下した。

3.コメント・質疑応答

学習院大学法学部の紙谷雅子教授が、1960年代から1970年代にかけての同性愛者に対する差別と権利擁護と権利実現に貢献した人々の紹介をしながら、ボノート先生の講演の社会的意義を補足した。

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また、会場からは、研究者のみならず、学生・院生からも次々に質問がなされた。たとえば、LGBTが社会的少数でその人々の生活がごく通常のものであることが認知されて同性婚の禁止が違憲とされるようになったというのなら、今後、複婚(polygamy 一夫多妻や一妻多夫)の禁止も違憲とされる時代が来るのだろうか。また日本などにおいても同性婚の禁止をめぐり違憲論がでるだろうが、立法政策としてたとえば婚姻とまったく同等ではないがそれに近い「同性パートナーシップ」という地位を認めるといった立法をまず導入し、その後、社会の認知度が高まってから同性婚の許容へと法改正するといった方法もありうるだろうが、それはどう考えるか。こうした質問がだされ、ボノート弁護士からアメリカでの経験にもとづく回答がなされた。前者の質問については、法は社会とともに変化するものであり、将来もそうならないとはいえない。後者については、そういう中間的解決はLGBTを二流市民として扱うことに変わりはなく、いわれなき差別を温存・助長し問題を解決したことにならないので賛成できないという趣旨の返答がなされた。このほかにもさまざまの角度から質問が寄せられ、講演会は予定時間を大幅に超えて、盛会のうちに幕を閉じた。

 

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