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比研主催講演会:「イスラエルにおける同性カップルの家族形成と法」2025年5月22日(木)が開催されました
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- 2025年11月17日(月)
比研主催講演会 「イスラエルにおける同性カップルの家族形成と法」
【主 催】 早稲田大学比較法研究所
【共 催】 早稲田大学法学部、早稲田大学法学研究科
【日 時】 2025年5月22日(木)17:00-19:00
【場 所】 早稲田キャンパス 8号館4階 413ラーニング・コモンズ
【講演者】 ナッション・フィッシャー(テルアビブ家庭裁判所 上級裁判所長)
【使用言語】 英語および日本語
【通 訳】 あり 早稲田大学法学学術院 橋本有生
【世話人】 橋本有生(早稲田大学法学学術院教授)
【対 象】 学生、教職員、一般
【参加者数】31名(学生30名)

ナッション・フィッシャー(テルアビブ家庭裁判所 上級裁判所長)
2025年5月22日(木)、早稲田大学にて講演会「イスラエルにおける同性カップルの家族形成と法」が開催されました。イスラエルの家庭裁判所の裁判官を長年務めているナッション・フィッシャー裁判官(テルアビブ家庭裁判所 上級裁判所長)は、イスラエルにおける同性カップルの家族形成と法の現状についてご講演されました。
まず、フィッシャー裁判官からイスラエルの裁判制度の解説がありました。イスラエルには、民事裁判所に加えて、宗教的及び家族に関する事案を扱うラビ法廷(ユダヤ教の裁判所)があり、婚姻及び離婚についてはラビ法廷が専属管轄権を有します。ユダヤ教に基づき、ラビ法廷では異性婚のみが認められています。そして、ラビ法廷と家庭裁判所の関係について、フィッシャー裁判官は次の2点を挙げました。1点目は、30年前に家庭裁判所がラビ法廷とは別に設立されたことです。2点目は、家庭裁判所の管轄権が、ラビ法廷の専属管轄に属する婚姻及び離婚以外の家族に関する事案に及ぶことです。
次に、同性カップルが活用できる法制度について説明がありました。同性カップルは、家庭裁判所への訴えを通じて、結婚と同然の関係にあることに対して法的承認を得られます。これは正式な婚姻とは異なるものの、このように公的・社会的に認められている関係には結婚に準ずる法的効果が認められ、広く活用されています(異性カップルも活用可能)。イスラエルでは、同性カップルは異性カップルと同じ権利を有し、すでに社会では当たり前の存在になっているとフィッシャー裁判官は述べました。イスラエルでは、伝統的な宗教法と新しい民法の両方が家族について規律しているため、複雑な状況にあるとフィッシャー裁判官は指摘されました。
続けて、フィッシャー裁判官は、イスラエルにおける同性カップルの家族形成について、ここ30年で状況が大きく変化したとします。生殖補助医療によって、同性カップルはどちらか一方と血のつながりのある子を設けることが可能になりました。血のつながりの無い親と子との親子関係が裁判で問題となった事案で、フィッシャー裁判官は、当該親と子との間の心理的愛着を重視し、親同士が別れた後も子どもが当該親と交流を続けることが子の最善の利益になると判断したと説明されました。
質疑応答では、婚姻類似(内縁)関係が認められる当事者の範囲、ラビ法廷と民事裁判所が併存している理由、性的指向と宗教の関係、イスラエルにおける平等と信教の自由の保障、宗教の多様性等について多くの質問が寄せられ、盛況のうちに幕を閉じました。
(文:ドイル 彩佳 比較法研究所助手)