現職:早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程学生
16時30分、黒板を消しながら空を眺める。学生が変わっても、ビルの7階の教室からの景色は変わらない。今の私の職場だ。副担任という立場では、いつ告げられるとも知れない異動で学生の背景を知りつくすことはできない。慣れ親しんだクラスと次の日に離れることになってもうろたえない、それが私の心がまえだ。
もうすぐクリスマスという日だった。別れのあいさつをする私を、学生たちがいろいろな方法で引きとめようとしていた。中国語に明け暮れた四年間、専攻を変えたことの意味を問い続けた日研での二年間。学生たちの歌を聴きながら、私は長い間、早稲田の街を学生になったり教師になったりしながら歩いてきたのだと気づいた。学生たちとは、3カ月間を過ごした。出会いの価値は、その長さで決まるものではない。私はもう一生、自分の仕事を「なんだこんな仕事」と言わずに済むのだ。ありがとう、届きましたよ。