6月11日(土)、12日(日)の2日間でどらま館企画『ちょっとだけ “めんどくさい” 俳優になるためのワークショップ』を開催しました。年齢も経歴もばらばらな7名に参加して頂き、竹中香子さんの温かい人柄のもとで密度の濃い時間を過ごすことができました。
今回は、ワークショップの体験レポートを紹介します。
第2弾は劇団森2年代の松澤佳奈さんのレポートです。
どらま館企画体験レポート『ちょっとだけ “めんどくさい” 俳優になるためのワークショップ』
松澤佳奈(劇団森2年代)
無理に何かしなくてもいいんだ……
1番の学びは、芝居をする時
“空気に身を任せていい”ということでした。
WSの後半に始まったエクササイズ。
それは、
『家で寝ている人、家に疲れて入ってくる人、家に住み着く幽霊という役を与えられ、3人は全員が部屋を出るまで言葉を発さず演じ続ける』というエチュードでした。
何をしても自由だし、時間をたっぷり使っても良い、ただ大事な条件が1つ。それは、
“状況を演じるのではなく状態を演じる”
こと。これが大きな鍵となります。
1度目は幽霊役にチャレンジ。私は幽霊として何か気づいてもらおう、驚かして場を動かそうというような意識を持っていました。
今まで即興芝居をやる際は、見ている人の為にも何かアクションを起こさなきゃという意識が根付いていたからです。
2度目は家で寝ている人の担当でした。起きたら帰ってきたはずの人がいつの間にか寝ている、幽霊も佇んでいるだけ、なかなか場が動かない。今までならこの状況で自分が何とかしなきゃという焦りの意識が働いていたと思うんです。
しかし、いつのまにか私に根付いていた当たり前の意識が消えていました。
エチュードをする側でなく、見る側を体験した時、演じ手が何かアクションを起こさずとも、見る側の想像力で充分楽しめることに気づきました。場を動かすストーリーがなく役者のアクションがない時間は、見る側の想像をより生み出す時間になるということです。
例えば、
・斜め上を眺めていたらこの家は2階建てなのかな
・壁を見ている人の目線の先には絵があるのかな
・距離感が近い2人の関係は恋人なのかな?
・佇むだけの幽霊はこの家にずっといる座敷童みたいな存在なのかな
など、与えられる状況がなくともその場に在る状態だけで色々想像ができます。
見る側の視点に立ったことで、演じる時も見ている人に委ねても良いという意識を持つことができていたのです。
そして時間の尺を考えないでたっぷり30分、
・何をしても良い
・逆に何もしなくても良い
・見る側の想像力に委ねて良い
そんな全てが許される寛容な稽古場の雰囲気に押されてか、
「無理に何かしなくても良いや」「その場で感じたままに動きたくなったら動こう」という余裕が生まれたのです。
その余裕により、場に流される感覚を持つことができ、この状況を引き受けて自然に動くことができました。
例えるなら、プールで水の流れを自分で起こそうとするのではなく、この場が流れるプールだと思ってその流れに流されるがままに動くということでしょうか。
これが冒頭で述べた大きな鍵、”状況を演じるのではなく状態を演じる”ということなのだとようやく理解できました。
実際に、「1度目と2度目で身体の動きが全然違う」と伝えられ、この内側の意識の変化が外側の演技面にも影響を及ぼすのだなと改めて実感できました。
今回のWS講師は、唯一の日本人としてフランスの国立演劇学校で演技を学んだ、とてつもない行動力をお持ちの竹中香子さん。フランスで活動した香子さんの貴重な体験を聞くことができ、演劇に対して新鮮な気持ちになれました。
WSはゆるふわギャルのような竹中香子さんが作る独特な心地よい雰囲気で、WS初参加の私でも緊張せずに楽しみながら参加することができ、”空気に身を任せても良い”という新しい芝居の感覚を得ることができました。
Twitterで偶然見かけた今回のWS……勇気を出して参加して本当によかったです!
このような素敵なWSを開いてくださった、どらま館の宮崎さん、講師の竹中香子さん本当にありがとうございました!